取り残された女性をヘリで吊り上げ…機動救難士が語る"死の淵"から救出の一部始終

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熊本 2025.07.04 20:22

2020年7月4日、死者・行方不明者69人を出した熊本豪雨から5年。氾濫した川に取り残された被災者をヘリコプターで救助した海上保安庁の職員に当時の状況を取材しました。職員が語った"死の淵"からの救出の一部始終とは。

■緒方太郎キャスター
「2020年7月4日、どういう仕事をしていたのか、 教えてもらえますか?」

■奄美海上保安部 中野大志さん
「球磨川が氾濫したという情報が入っておりまして、そちらの被害状況調査ということで、海上保安庁のヘリコプターに乗って現場に出動しました」

鹿児島県の海上保安庁に所属している中野大志さん。5年前はヘリコプターで災害救助に向かう「機動救難士」でした。

202020年7月4日、隊員の目線で捉えた映像が残っています。向かったのは、球磨川や支流が氾濫した人吉市。

■奄美海上保安部 警備救難課 中野大志さん
「私たちが着いたときには濁流が市街地に流れている状況を確認できたので、かなり衝撃を受けたのを覚えています」

到着してまもなく、でした。

■奄美海上保安部 警備救難課 中野大志さん
「複数の家から、あそこに人がいるというジェスチャー、手信号のようなもので指をさしている方向がありまして、しばらくその方向を見ておりましたら、木々が生い茂っている場所の中に人がいるのを確認しました」

水に入り中野さんら隊員が向かった先には、女性がひとり。

■奄美海上保安部 警備救難課 中野大志さん
「実際に着いたら足がつかない状況で、実際に水深が何メートルあるのかも把握できないような場所でした。これ以上浸水があると非常に危険があると判断しました」

女性をヘリコプターへ吊り上げるために、木々の外へ誘導します。女性は腕にペットのネコを抱いていました。救助の際に、予想もしない事態が…。

■奄美海上保安部 警備救難課 中野大志さん
「女性とネコをトタン屋根にあげる際に、ネコを先に受け取りまして、屋根の上にのせたんですけれども」

ネコを屋根にのせた瞬間…。遠くへ逃げてしまいました。屋根から落ちると濁流に飲まれてしまいます。中野さんたちは急いで救助へ。なんとかネコを抱き上げることができました。

その後、女性とネコをヘリコプターで吊り上げ、近くの公園へ。救助にかかった時間は20分。まさに“死の淵”から救いました。

■奄美海上保安部 警備救難課 中野大志さん
「実際に吊り上げて機内で様子を確認したら、若干衰弱していました。救助を待っている間に恐怖を感じていたのではないかと思います」

■緒方太郎キャスター
「機動救難士として助けられたことに関してはどう感じますか?」

■奄美海上保安部 警備救難課 中野大志さん
「早めに救助できたことは良かったと思っています」

海上保安庁の活動は4日間に及び、人吉市や球磨村などで22人を救助しました。それでも、67人もの尊い命を奪った熊本豪雨。隊員が捉えた映像は、早めの避難がいかに大切か、まざまざと突き付けています。

■奄美海上保安部 警備救難課 中野大志さん
「私自身、災害を経験して、自然の力というのは凄まじいものがあると思いましたので日頃、台風にしろ、豪雨災害にしろ、早めに自主的に避難をしていただく、情報を逐一とりながら自分の身を守っていただきたいと思っています」