【デスク解説】新潟水俣病訴訟 原因企業に賠償命じる判決 熊本訴訟判決との違いは

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熊本 2024.04.18 19:29

新潟水俣病をめぐって救済から漏れた人たちが原因企業の旧昭和電工と国に賠償を求めた裁判で、新潟地裁は18日、原告の一部を水俣病と認め、旧昭和電工に総額1億円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

新潟水俣病は、旧昭和電工、現在のレゾナック・ホールディングスが、メチル水銀を含んだ排水を阿賀野川にたれ流したために起きた公害病です。水俣病の最終解決をうたった特別措置法が2009年に成立しましたが、この法律で救済の対象から外れた人たちが旧昭和電工と国を相手取り裁判を起こしました。

18日の判決で新潟地裁の島村典男裁判長は、原告47人のうち裁判の間に水俣病に認定された2人を除いた26人を水俣病と認め、ひとり400万円、合わせて1億400万円の支払いを旧昭和電工に命じました。国への請求は棄却しました。

水俣病特措法をめぐる一連の裁判では3月、熊本地裁で、原告の一部を水俣病と認めながら、裁判を起こすのが遅かったとして法律の規定を適用し、訴えを棄却しています。これについて新潟地裁の判決は、「裁判を起こす時期は遅かったものの、正義・公平の理念を踏まえ」たとして規定を適用しませんでした。

水俣病特措法をめぐる裁判の判決は18日の新潟水俣病を含めると3例目で、いずれも法律で救済の対象とならなかった人たちが水俣病と認められています。

【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
ここからは、水俣病問題を取材している東島大デスクとお伝えします。特措法をめぐる裁判は、去年の大阪地裁、3月の熊本地裁、そして18日の新潟水俣病と判決が続いたわけですが、全体としてどういうことが言えますか。

(東島大デスク)
大阪地裁は原告全員を水俣病と認めました。熊本地裁と新潟地裁は一部を水俣病と認めました。全員か一部かの違いはありますが、国によって切り捨てられた人たちが水俣病と認められたという点では共通しています。

一方、賠償については、大阪地裁と新潟地裁は認めましたが、熊本地裁は認めませんでした。これはなぜかといいますと、被害を受けてから裁判を起こすまでの期間が決められていて、熊本地裁は「もう期限を過ぎているから手遅れ」としたわけです。しかし18日の判決は、「期限は過ぎているけれども、それは差別など事情があって、やみくもに適用するのは正義にもとる」として賠償を認めました。

(緒方キャスター)
賠償を認める認めない、原告の全員か一部かで差はあるけれども、救済から漏れた人たちを水俣病と認めた点では同じなんですね。

(東島デスク)
新潟地裁の判決を受けて熊本訴訟の森正直原告団長は、「裁判をするのが遅かったという熊本地裁の判決の不当性が浮き彫りになった。この判決を追い風に、控訴審を闘いたい」と話しています。
少なくとも、「あたう限りすべての水俣病の被害者を救う」とした特措法の運用に問題があったと言えるでしょう。国は運用の見直しや申請受け付けの再開など、真剣に検討すべき時期に来ていると思います。