【解説】なぜ熊本に?"長射程ミサイル"健軍駐屯地に初の配備へ
ニュースのそもそもをひも解く「県民のギモン」です。今回のテーマは「長射程ミサイルはなぜ熊本に?」。
(藤木紫苑記者)
7月末、防衛省が国産の長射程ミサイルの最初の配備先を熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地とすることで最終調整に入っていることがわかりました。このニュースをどう考えたのか、熊本市に暮らす人たちに話を聞きました。
【VTR】
Q長射程ミサイルの配備を知っていますか?
■60代女性
「知らない、怖い。できれば近くにあってほしくない」
「なんで熊本が選ばれたのかな」
■50代男性
「健軍駐屯地は西部地区の拠点なので普通のことではないか」
■80代男性
「抑止力にはなるかもしれないけどキリがない。エスカレートしていけば戦争になるしそれなら要らないと思う」
■20代女性
「持たない方がいいという意見もあると思うけど、もし何かあったときに戦えないと自分たちが危ないから必要だと思う」
【スタジオ】
(永島由菜キャスター)
なぜ熊本なのか、そしてそもそもミサイルを持つべきなのか、様々意見がありました。
(藤木紫苑記者)
長射程ミサイルは、どんなものなのか。元陸上自衛隊中部方面総監で、現在は日本文理大学客員教授の山下裕貴さんに聞きました。
今回話題となっているのは、「12式(ひとにしき)地対艦誘導弾(ちたいかんゆうどうだん)能力向上型」と呼ばれるもの。「スタンド・オフ・ミサイル」と呼ばれるものです。
山下さんによりますと「相手から攻撃されない距離から撃つことができるもの」です。例えば他の国の戦闘機や護衛艦が日本の離島などに上陸しようとした際には遠方から攻撃することができ「日本の領土に近づけない」ということが可能になるという理論です。政府は、2020年にこうしたスタンドオフの防衛能力強化のために装備の開発を行うことを閣議決定しました。これが今につながっています。
(飯田嘉太アナ)
ではなぜ熊本なのでしょうか。
(藤木紫苑記者)
健軍駐屯地には陸上自衛隊の西部方面隊があり、「地対艦ミサイル連隊」があるのが理由のひとつとみられます。12式地対艦誘導弾というものはすでに存在しています。今回は射程距離を伸ばした「能力向上型」です。どれくらい射程距離が伸びるのか防衛省から公式な発表はありませんが、これまでのものより射程距離が長くなったものを国内で開発して持つことが初めてになるというわけです。
(永島由菜キャスター)
なぜ、いまこうした動きがあるのでしょうか。
(藤木紫苑記者)
緊迫した世界情勢との関わりがあります。
【VTR】
■元陸自中部方面総監・陸将 日本文理大学客員教授 山下裕貴さん
「国際情勢の問題になりますが何を日本が心配しているか、それは台湾有事です。非常に切迫した状況が目の前にあるということです。外交と軍事は両方です。だから防衛力を強化して抑止力を高めて長射程ミサイルを持って巧みな外交で平和を維持しようとしているのが今の日本政府です」
健軍駐屯地に長射程ミサイルを置くことで、相手からの攻撃を受ける可能性はないのか。山下さんは、次のように話しています。
■山下裕貴さん
「陸上自衛隊は『駐屯地』という。海、空は基地ですよね。駐屯地は一時的にそこにいるだけ。駐屯地が攻撃されることはありません。ウクライナ戦争でも地上部隊の基地が攻撃されている例はないです」
【スタジオ】
(藤木紫苑記者)
山下さんは、自衛隊が実際に防衛のため出動する際には駐屯地から出て、山地や離島に出向くため熊本が戦場になったり直接的な攻撃を受ける可能性は限りなくないはずだと話し、過度に恐れる必要はないとしています。
(永島由菜キャスター)
ミサイルを持つことが戦争に発展すること、傷つけあうことはあってはならない。でも、それだけ緊迫しているということですね・。
(藤木紫苑記者)
防衛省は、いずれも今回のミサイルについて年度末の配備を予定しています。いま、日本が置かれている立場やミサイルを持つことの意味や能力など正しくとらえられるだけの情報が開示されるべきだと思いますし、わたしたちは、それを受けて平和を前提にしながらも国土の安全をどう守るべきかについて武器の賛否のみならず、しっかり考えていく必要があります。