「ハンセン病差別解消へ最後の課題」菊池事件"再審"めぐる協議終結

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熊本 2025.07.07 20:25

ハンセン病とされた男性が殺人の罪に問われ、無罪を訴えながらも死刑が執行された「菊池事件」。男性の遺族が求めた「再審」(=裁判のやり直し)をめぐる協議が7日に終結し、熊本地裁が再審を認めるかどうか来年1月末までに決定すると弁護団と熊本地検に伝えました。日本で死刑が執行された後に再審が認められたケースはなく、熊本地裁の判断が注目されます。


「菊池事件」は1952年、現在の菊池市(県の北部)で役場職員が殺害され、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園に入所していた男性が殺人の罪に問われたものです。男性はハンセン病を理由に隔離された「特別法廷」で死刑判決を受け、無罪を訴えながらも1962年に執行されました。


ところが熊本地裁が2020年、特別法廷を「ハンセン病を理由とした差別」として憲法違反と判断。これを受けて遺族が再審を求め、おととし7月に裁判所と弁護団、検察による協議が始まりました。「開かずの扉」と言われる再審。これまで国内で死刑が執行された後に認められたケースはありません。

弁護団は法医学者の証人尋問を行い「凶器とされた短刀と遺体の傷に矛盾点がある」と主張。さらに「特別法廷が憲法違反である以上、再審の理由になる」と訴えました。再審によって男性の潔白を証明するとともに、ハンセン病差別が司法にも及んでいたことを問いただす意味があると話します。


■弁護団・徳田靖之共同代表
「この菊池事件の再審開始を勝ち取るということは、ハンセン病についての偏見、差別を解消していく上での最後の課題と言ってもいいのではないかと私たちは思っている」


そして、7日。弁護団が再審開始を求める2840人分の署名を新たに提出しました。集まった署名は5万8977人分となりました。最終協議で、改めて再審を開始すべきと求めた弁護団。刑事訴訟法では再審の理由について、「無罪とすべき明らかな証拠を新たに発見したとき」と定め、裁判での憲法違反が理由となるかは明記していません。


検察側は、弁護団が主張する「凶器の矛盾」は「無罪とすべき明らかな証拠」には当たらず、憲法違反があっても再審の理由にはならないと反論し、協議を終えました。熊本地裁は来年の1月末までに再審を開始するかどうか決定すると、弁護団と地検に伝えたということです。

■弁護団・徳田靖之共同代表
「再審を担当する裁判官が裁判官としての良心を発揮してほしいし、そうしてくれるものだと信じている」

再審を認めるのか、退けるのか。熊本地裁は大きな判断を迫られます。