介護人材「15年後に全国で57万人不足」改善へ!現場に進むテクノロジー導入

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熊本 2025.06.25 21:38

「2040年度に9500人」。熊本県内で必要な介護人材がどれくらい不足するかを厚生労働省が試算した数字です。こうした深刻な人材不足の中で働く職員をサポートしようと、介護現場にテクノロジーの導入が進んでいます。

熊本市役所前のビルの一室。ことし4月末に熊本県が開設した介護テクノロジーや業務改善のサポートセンターです。ここには介護現場の業務効率化を目指した、ロボットやデジタル機器などが展示されています。例えば、介護する人が着用することで腰への負担を軽減するアイテム。


■藤木紫苑記者
「装着してやってみます。後ろにグイーンと引っ張られる感じがあって、自分の姿勢を戻すときにすごく楽に感じました」

他にも、これまで介護が必要な人がベッドから車いすや別のベッドに移る際、2人以上のサポートが必要だったのが、支援ロボットの活用で1人でも移動させることが可能になりました。センターではこうした「介護テクノロジー」の導入について、無料で相談を受け付け、機器の体験・貸し出しなども行います。


■介護労働安定センター熊本支部・田口隆俊支部長
「2040年が1つのターゲットになっていますが、全国で約57万人不足するだろうと言われています。どうやって介護人材を増やすか、そこが一番大きな課題になっているわけです」


背景にあるのが、「介護現場の人材不足」です。厚生労働省の試算では、全国で必要とされる介護職員数は2022年度は約215万人。これが高齢化などにより2040年度には272万人に増える見込みで、57万人が不足するとみられています。高齢者の比率は地域によって異なりますが熊本県内では約9500人不足する見通しです。


人材不足に対応しようと、介護テクノロジーの導入に取り組んでいる現場を取材しました。菊陽町の特別養護老人ホーム「ケアタウン光の森」です。こちらの施設では、介護福祉士や看護師など30人が働いています。昨年度、介護テクノロジーの導入を支援する県の補助事業を活用し、業務効率化に取り組んできました。見せてもらったのは…。



■職員
「このベッドのマットレスの下に機械が入っていて、呼吸数や脈拍、眠り状態の数値を出して、向こうのパソコンまでWi-Fiで飛ばしています」


デジタル機器を使った睡眠の見守り。入居者の体調や睡眠状況を記録し、リアルタイムで呼吸数や脈拍などのの変化を知らせてくれるシステムです。ベッドからの起き上がりなどに職員が気づいて対応することで、転倒の防止にもつながるといいます。モニターも見ることができ、夜間の巡視も効率化できました。こうした情報はスマートフォンからも見ることができ、職員一人ひとりが持つ機器で随時情報交換もできます。

■開設当初から働く50代職員
「今まで内線で内線電話で看護師さんを呼んだりとか『看護師さんそちらにいらっしゃいますか』などいちいち聞いてたのが一声で全員にどこにいるかインカムで話せて、みんなでつながってすぐ来てくれます」

ほかにも施設内では座った姿勢のまま湯舟につかれるものや、寝たきりでも入れるお風呂も完備しています。入居者の安全な生活を確保しながら、同時に職員の介護負担も軽減する。‟働きやすい環境”を整えることが職員の新規採用や離職率の低下につながってきているといいます。


■ケアタウン光の森・竹園辰巳施設長
「介護の現場で働きたいという人は利用者一人ひとりに心のこもったサービスを提供したいという人がほとんどのはずなんです。その下支えになっているのが、介護テクノロジーなどの部分がとても大きいと思っています。結果、離職も少ないとか、みんなが定着してくれていいサービスを継続的に高め合っていくところに行き着いていければ」


【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
国の調査では、県内の介護ロボットなどの導入率は去年8月末時点で34.9%だということです。県は、これを来年度には50%に引き上げることを目標に支援を取り組みたい方針です。コミュニケーションは人で。負担がある部分を機械で。うまく融合する社会が実現するといいですね。