【記録的大雨】犠牲者の妻「ボロッボロです」あれから1か月…思い語る
(緒方太郎キャスター)
8月10日~11日の記録的な大雨では、これまでに計8443棟の住宅で全半壊から床上・床下浸水などの被害が確認されています。
これは5年前の熊本豪雨の7414棟を上回っています。特徴的だったのは、被害が広い範囲に及んだことです。水色が住宅の被害が報告された市町村なんですが、県の北部から天草地域まで21市町村に及んでいます。
この理由のひとつは、線状降水帯が県の北部から南部に移動しながら5回発生したことが挙げられます。そして熊本市と八代市、甲佐町では4人の方が亡くなりました。また熊本市では、井芹川に流されたとみられる森下尚治さんの安否がいまだにわかっていません。
(飯田嘉太アナ)
甲佐町で亡くなった増田佳明さん(57)が生前手掛けられたかんざしと羽子板です。1か月を迎えたご遺族の思いをお伝えするために、特別にお借りしてきました。今、妻の安理沙さんに今の思いをお聞きしました。
【VTR】
土砂崩れに巻き込まれて亡くなった増田佳明さん(57)。妻の安理沙さん(33)は、子ども2人と一緒に車に避難していて助かりました。
(安理沙さんのコメント)
「各地で次々と起こる災害の中で忘れてほしくないって気持ちがあります。子どもたちもいて相当気を張っていたけれど、それが最近になってちょっと崩れてきているなと。日常に戻ってきているけれど佳明さんは絶対に戻ってこないので寂しくて。私の精神面が危ないかな…ボロッボロです」
また、この1か月の甲佐町の変化についてもお聞きしました。
(安理沙さんのコメント)
「こっちは復旧が進んでいない。うちの車も1台まだ埋まったままなんです。この暑さの中での作業の大変さは分かっているから感謝しかない。ただ、熊本地震などに比べて町全体の変化がゆっくりな気がしていて、中途半端なままで何年もそのままになってほしくない」
【スタジオ】
(飯田嘉太アナ)
ひと月前の大雨の後も、全国で災害が相次いでいます。ニュースや行政、人の心はどうしても新たな災害に移ってしまうため、安理沙さんは今回の大雨の被害が風化してしまうことを心配していらっしゃいました。
塗装会社を営んでいた佳明さんの仕事道具などはまだ土砂に埋まっている車の中にあるそうで、今回、家族のためにつくられたかんざしと羽子板をお借りしました。実は木に特殊な塗装を施して仕上げられています。とにかく塗装が大好きでご家族に渡すこうしたアイテム・プレゼントでも手を抜かない職人気質だったと話します。
安理沙さんはもう1つメディアを通して伝えたい思いがあるといいます。誹謗中傷です。佳明さんが亡くなったことを報じたインターネット上の記事などに、心ないコメントや間違った情報の書き込みが後を絶たないというのです。安理沙さんの言葉を受けて、いま一度、遺族の方のお気持ちや言葉の重さについて向き合うべきだと感じました。