【記者解説】理解不足の原因は?「水俣病は遺伝する」配信教材で10年以上誤った表記
中学生向けの配信教材で、「水俣病は遺伝する」という誤った表記が10年以上されていた問題。その根本的な問題を考えます。
問題となったのは、家庭教師のトライを運営するトライグループの配信教材です。中学生向けの社会科の配信教材で、水俣病について「遺伝する病気で生まれてきた赤ちゃんも発症することがある」と表記していました。
水俣病は、チッソ水俣工場の排水に含まれていたメチル水銀に汚染された魚を人間が摂取することで発症する中毒症です。遺伝することはなく、母親の胎内にいた赤ちゃんが胎盤を通し発症したものが胎児性水俣病とされています。
環境省は、患者団体などからの指摘を受けてトライグループに訂正を要請し、トライグループは23日、配信教材のページで「不正確な表現となったことをお詫びの上訂正いたします」と掲載しました。
公式確認から69年もの歳月が経つのに、なぜこのような問題が起きてしまうのか。水俣病を長く取材する記者が解説します。
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
水俣病を長く取材する東島大記者とお伝えします。
(東島大記者)
宇城市でも、市が配るカレンダーに、水俣病は感染症という記述があり、市が謝罪する一件がありました。行政や教育機関でこういう間違い続くのは、ずさんのひと言と言わざるを得ません。しかし、背景に子どもたちや一般の人たちにも水俣病への理解不足が広がっているとすると問題は深刻です。
(緒方太郎)
理解不足の原因は何だと思いますか?
(東島大記者)
水俣病は、意外とわかりやすく書かれた本やネットの資料とかが少ないんです。小学生が「水俣病は遺伝するの?」という疑問を持っても、なかなか調べられないし、先生もすぐに答えられないのではないでしょうか。
今回、「胎児性患者」が問題になっていますが、そもそも「胎児性患者」と行政が認定したのは初期の16人だけで、それ以降は大人の患者と区別していません。それでは全体ではどれくらい水俣病の患者被害者がいるかというと、それもわからないんです。
熊本県・木村敬知事は、「遺憾です、啓発活動を強化して国にも求めていく」というコメントを出しました。それはいいことかもしれませんがが、問題の根本は、70年議論が続く水俣病って何?ということです。それを抜きに、こうしたトラブルはなくならないと思います。