中学校の「部活動」が迎える転換点 地域クラブや新たなカタチも

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熊本 2025.11.20 21:31

(緒方太郎キャスター)
午前の情報番組「DayDay.」MCで熊本出身の武田真一さんと結んでお伝えします。
今回のテーマは「中学校の部活動」です。武田さんは、中学生時代部活動はされていましたか?



(武田真一さん)
軟式テニスです。中学1年生の時は痩せていますよね…部活の顧問の先生はいたんですけどほとんど練習や試合の時も自主的に生徒だけでやっていましたね。みんなでわいわい楽しかったです。

Q部活動で学んだことが今に活きていることは?
スポーツですから勝ち負けがありますよね。部の中でも競争があります。負けるもんかと頑張る気持ちや、それでも叶わないときに相手を認める気持ち。社会人になると一定の競争がありますから、心構えのようなものは学ぶことができたと思っています。

(永島由菜キャスター)
その中学校の部活動が転換点を迎えています。

文部科学省は、公立中学校の休日の部活動について、2023年度から3年間かけて、地域や民間クラブなどへ移行することを目指しています。背景にあるのは、教員の時間外労働の負担です。部活動を外部の指導者にお願いすることで、負担を軽くする狙いがあります。


さらにこの35年間で全国の子どもの数は半減。学校単位で野球やサッカーなどの団体競技のチーム編成が難しいことも背景にあります。県内では今年度、21の市町村が部活動を学校から地域へ移行する実証事業をしています。子どもたちの成長に影響を与える部活動は、どう変わっているのでしょうか。



19日私たちが訪ねたのは、南関中学校です。国のモデル校として2021年から部活動の地域移行への取り組みを進めてきました。バドミントン部を指導するのは、元会社員の多田隈敏さん(64)。スポーツの指導経験が豊富な多田隈さんは会社を定年退職後に、ボランティアで外部コーチを引き受けました。

■南関中・バドミントン部員
「できないところをやって見せてくれのでわかりやすいです」
「一人ひとりに面と向かっての細かいところを教えてくれるコーチです」

スポーツクラブではなく学校の部活動を指導に当たっては大切にしていることがあるといいます。


■南関中バドミントン部 外部コーチ・多田隈敏さん
「当然バドミントンのことも教えますけれど、社会に出てやるべきことをやれる人間に育てたいというところを意識させて、そこを絶対的に守ってくれと伝えています」

子どもたちの成長に大きな影響を与える部活動。以前は部活の指導にあたっていたという先生たちは現在はスケジュール管理など運用のサポートにまわっています。

■南関中学校 2年主任・江崎愛教諭
「(部活の指導をしていたときより)心にゆとりができるので、保護者対応や子どもたちへの声かけなど前よりできてるんじゃないかと思います」

いち早く取り組みはじめた南関中学校では、地域の団体と協力して来年度からバスケットボールなどさらに地域移行を増やしていく方針です。

一方で今後の課題は「指導者の確保」です。継続的に指導をしてもらうには報酬の支払いが必要ですが、ゆくゆくは保護者が一定の金額を支払う必要が出てきます。



■南関町教育委員会・城野和則教育課長
「お金を負担していただく受益者。負担の部分で金額が高額にならないような取り組みができないか。指導者が将来にわたって継続できる仕組みができるかが今の課題となっています」

【スタジオ】
(武田真一さん)
先生の負担も減って、地域にはスポーツ経験者がたくさんいて、そういう人が指導を通じて競技に復帰するというのは素晴らしい事だと思いました。ただそういった方々のやる気に依存しているようだと持続可能性には問題があるのかなと思います。

(永島由菜キャスター)
武田さんのお子さんは、スポーツクラブに所属していたんですよね?

(武田真一さん)
次男が所属していたサッカーのジュニア(小学生)チームは、地域の人が作ったNPOに児童が集まる「街クラブ」でしたが、ライセンスを持った指導者が5~6人常勤しています。

そのコーチたちは小学生だけでなく、地域の中学校の部活も指導していて、幅広く収益を上げることで、経営を成り立たせていました。

(緒方太郎キャスター)
指導者を確保するためには、「お金」が課題になります。そうした中で興味深い仕掛けを図っているのが熊本市です。

(永島由菜キャスター)
熊本市は地域のスポーツクラブなどに移行せず新たな「部活動」のカタチを目指しています。
顧問を担当する教員や民間の指導者には時給1600円を支払うんですが、年間約6億5000万円もの財源が必要という試算があります。そのため熊本市では、幅広い企業から協賛金を集め、その資金をもとに部活動を運営するという画期的な挑戦をします。



(武田真一さん)
部活は所得が低い家庭の子どもでもスポーツに参加できるようなメリットがありますし、その部分を行政がある程度負担してくれる。あるいは企業の協力のもと、それが成り立つのはとてもいいアイデアだと思います。なかなかそういう人材を確保するのは難しいのでは?

(緒方太郎キャスター)
県に取材したところ、いまは指導者になれる明確な国のマニュアルがないそうです。ほとんどの方が、使命感をもっていると思いますが、実は一部の保護者からも、マニュアルがないことでの不安の声が聞こえてきます。



【VTR】
10月から11月にかけて、全国の約1000人にアンケートを行った、全国PTA連絡協議会の大森勢津さんです。

■全国PTA連絡協議会・大森勢津さん
「今問題になっている性犯罪とかトラブルを起こすかもしれない人がいらっしゃるので、保護者としてはどんな資格の人が地域クラブを担っていくのかというところも非常に懸念している状況がありました」

その上で、住んでいる地域での部活動の地域移行を「知らない」と答えた人が約7割にのぼったことから、私たちが「知る努力」をすることも大切と話していました。