空港アクセス鉄道 事業費試算1.5倍に膨らむも「採算性見込める」背景は?
JR豊肥線と熊本空港を結ぶ「空港アクセス鉄道」の概算事業費は、4年前の試算から1.5倍に膨らんでいます。その背景とは?
熊本空港へ向かう道路。特に、朝と夕方は深刻な渋滞が問題です。長年求められているのは、熊本空港に直接つながる「鉄道」の整備。そこで県が進めているのは、JR肥後大津駅と熊本空港を結ぶ全長6.8キロの空港アクセス鉄道計画です。この空港アクセス鉄道をめぐり、先週の県議会の代表質問で木村知事は…。
■熊本県・木村敬知事
「新線区間6.8キロの事業費が約610億円となります」
鉄道整備に必要な概算事業費は約610億円と、2022年度に試算した約410億円から1.5倍に膨らむと明らかにしました。約200億円の増額となったワケは…。30日の特別委員会で県はこう説明しました。
■空港アクセス鉄道整備推進課長
「前回調査の令和3年4月価格から4年分の物価高騰が大きく影響し約160億円の増加となり、増加の約8割を占めています」
主な要因は物価や人件費の高騰。ほかにも信号やトンネルなどの構造の精査を理由にあげました。一方、県は利用者の数がこれまで試算した1日約4900人から6500人に増える見込みだと説明しました。TSMCをはじめとした半導体企業の進出や、周辺の人口が増えていることなどが要因です。
こうした状況から県は、事業費の増額を踏まえても十分な採算性が見込めると強調しました。事業費については国からの最大限の補助を求めたいとしていて2027年度からの着工、2034年度末の開業を目指しています。
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
「空港アクセス鉄道」現在の計画が実現すれば、こうなります。
熊本駅から空港駅までについて、
■想定運賃 950円
■所要時間 普通列車で約48分、快速で約39分
現在のバス移動では渋滞時に約80分かかりますので、鉄道が整備されれば最大で40分ほど短縮すると見込んでいます。
生活が便利になる一方で、気になるのは概算事業費が約610億円と1.5倍に膨らんだことです。大きな要因となったのが物価や人件費の高騰です。鉄道工学が専門で日本大学の綱島均特任教授は「人件費、資材の高騰は全国的に問題となっている。安くなる要因がないのでやむを得ない」としています。
その上で空港アクセス鉄道によって渋滞解消につなげるには「最寄りの駅に自動車をとめて空港まで電車でいく仕組みをつくることが大切。いかに戦略的に利用してもらうかを考える必要がある」とコメントしています。
2027年度の着工予定まであと2年。今後の行方に注目です。