受刑者と対話「リフレクティング」繰り返す 熊本刑務所の取り組みが日本一に

この記事をシェア

  • LINE
熊本 2025.09.30 20:11

「拘禁刑」が導入され変革期を迎えている刑務所や少年院などの刑事施設。

2023年に新たに受刑者として全国の刑事施設に入所した人の数は1万4085人です。このうち、過去にも刑事施設に入所したことがある受刑者の割合は55%と決して低くない数字です。

課題である「再犯の防止」に向けて、全国の刑事施設が独自の取り組みを発表する大会が開かれました。九州で唯一本選に出場した熊本刑務所に密着しました。

9月、熊本刑務所。この日行われていたのはある大会のリハーサルです。大会名は「ミッションビジョン2025」。全国各地の刑事施設が独自の取り組みをコンテスト形式で発表するもので、初めての開催となります。背景にあるのが「再犯率の高さ」。日本の刑事施設はいま変革期を迎えています。



ことし6月に導入された拘禁刑。刑務所や少年院などの刑事施設は受刑者にあわせた指導やプログラムを行うことが可能になりました。その目的は「更生」です。熊本刑務所が力を入れているのが「リフレクティング」という取り組みです。

「リフレクティング」とは話すことと聞くことを切り分け「対話」を繰り返すプロセスです。対話を通して受刑者が必要な言葉や考えを選び取ることで、自らが変わるきっかけ、つまり更生につなげようという狙いがあります。



大会で熊本刑務所が発表するのが「リフレクティング」です。取り組みの新規性や今後の広がり、他の施設でも取り入れることができるかなどが審査のポイントとなります。10分間という短い時間の中でいかに審査員や会場の人たちに取り組みを伝えるのか。目指すのは最優秀にあたる「大賞」です。

■熊本刑務所職員
「あとはもう練習してきたことしか出せないので裏方でやってくれた先輩方や上司の方たちもいるのでその人たちの想いも乗せて一生懸命熊本刑務所の取り組みを発表したいと思います」



東京での本戦に出場するのは全国84の施設の中から予選を勝ち抜いた11施設。熊本刑務所はこの日のためにおそろいのTシャツを用意。本番を前に緊張感が高まります。大会では地域の特色を活かした発表もあれば、担い手不足の伝統工芸や起業家育成の講習といった受刑者の出所後を見据えた就業支援など、各施設が独自性を持った取り組みを紹介しました。熊本刑務所の発表は最終の11番目。いよいよ本番です。


「熊本刑務所ミッションチャレンジ。対話が生み出すイノベーションというテーマで発表させていただきます」
「対話を通じて受刑者がよりよい方向に変わっていると実感できること。対話は人を変え、組織を変え社会を変える大きな力を持っています」

実際に受刑者とリフレクティングを行っている職員が想いをぶつけました。結果は…。

「グッドチャレンジ大賞は、熊本刑務所です」



日本一である「大賞」に見事選ばれました。

■熊本刑務所職員
「ほかの刑務所の取り組みも私たちも当然やらないといけないことがいっぱいあったので、今回のうちのチャレンジだけではなく拾えるところは拾って熊本刑務所でも活かしていけたらなとは思う」

少しでも再犯を減らすため試行錯誤する全国の刑事施設。「対話」に焦点を当てた熊本刑務所の取り組みが今後、全国へ広がっていくかもしれません。