【迫真の演技】劇団「ゼーロンの会」がギリシア悲劇「メーデイア」に挑戦
3年前から、菊池市の歴史ある能舞台で西洋古典劇の公演を続ける劇団があります。劇団の名は「ゼーロンの会」。今年はギリシア悲劇『メーデイア』に挑みます。
(イアーソーン)
「この私は昔のよしみを忘れずに、お前の身を案じて ほらこうしてやって来てやったのだ」
(メーデイア)
「この極悪人。私を捨てて他の女と一緒になるなんて、子どもまで成した間柄なのに」
王女メーディアが自分を裏切った夫に復讐するギリシア悲劇『メーデイア』。現代にも通じる深いテーマは、今でも多くの演出家や作家に影響を与えています。
(主演・日吉夏美さん)
「ただの復讐劇にはしたくない。やっぱりメーデイアにもちゃんといろんな葛藤や考えが、思いがあってにじみ出てくる言葉を本当に大切に話したいと思っています」
上演するのは、熊本を拠点に活動し、今年結成30周年を迎えた劇団「ゼーロンの会」です。
上村清彦代表は、長い時間をかけて役者の体に台詞をしみ込ませて、そこから演劇空間を立ち上げる演出手法を貫いてきました。
(上村清彦代表)
「やはり役者の身体を通過しないと言葉が立ち上がってこないので、一回役者さんの体を通過した言葉が跳ね返って、僕にイメージを与えてくれる」
1年をかけて準備をしてきた舞台。本番は1回きり。
尾鷹敬司さんは、結成当初からのメンバーです。高校の頃から演劇の世界で演出や照明などの裏方を務めていましたが、上村代表から声を掛けられ、舞台に立ちました。
(尾鷹敬司さん)
「役者として出ることで、この劇団なら本当に何か大きく自分も変わっていくんだろうなというかですね、人として変わっていけるんだろうなという思いがありました」
『魂を磨く』。ゼーロンの会での活動をこう表現する尾鷹さん。今では親子ほど年の離れた団員から頼られます。
(中村朋世さん)
「すごく安い言い方をするとカッコよさでかなわないのが悔しいですね。尾鷹さんよりかっこよくなりたいというのが男役としてはあります」
尾鷹さんは小学校の教諭で、仕事をしながら、舞台に立ち続けています。
(インタビュー)
Q:演劇をすることで、何か先生の仕事に役立ったことはありますか?
(尾鷹敬司さん)
「緊張しないことです、授業に関してはいつもフラットにリラックスして子どもの前に立てるので、それはとても芝居しててよかったと思っているところですね」
(尾鷹さんが受け持つ児童)
Q:尾鷹先生の授業はどうですか?
「分かりやすくて楽しいです」
「怖くても少し面白い先生です」
「怒らないときは面白くて、優しい先生です」
(尾鷹さんが受け持つ児童たち)
「尾鷹先生、演劇がんばってね」
メーディアの上演場所は「菊池松囃子能場」。南北朝時代から600年以上、菊池に伝わる歴史ある能舞台で、ゼーロンの会」は3年前からここで西洋の古典劇を上演してきました。
本番まで1か月を切ったこの日は「通し稽古」です。愛と裏切り、復讐、そして母性と狂気の葛藤が描かれたメーディア。メーディアは自分の子どもさえも復讐の手段にしてしまいます。
(メーデイア)
「…私にだって自分がどれほどひどいことしようとしているかぐらいわかっている」
尾鷹さんが演じるのはメーデイアがすがる近隣の国王アイゲウスです。
(アイゲウス*尾鷹敬司さん)
「ただこちらの都合を言わせてもらえば私の所へ来るまでのことはあなたの方でやっていただきたい。そのあとはきちんと責任を持って匿って進ぜるということだ」
(尾鷹敬司さん)
「なんか腹黒さも少し持っているだろうし、わざと誠実さも見せるような人間であったりとか、そういう策略的な部分はしっかりと考えて演じているところですね」
30年という一つの節目を迎えたゼーロンの会。団員たちは過去は振り返らず、未来へ向かって歩みを進めます。
(上村清彦代表)
「30年変わらなかったことがあります。それは『媚びない』『ぶれない』『止まらない』これは変わっていません」
(尾鷹敬司さん)
「上村さんが振り返らないから一緒にやれているというか、あの時こうだったねみたいなことを全く話されない人なんで、だから先に進んでいかないと自分自身も成長しないので」
メーディアは、10月19日に開演します。
■ゼーロンの会 演劇公演「メーデイア」
10月19日(日)午後5時半~ 菊池松囃子能場(菊池市隈府)
前売り券 3000円(当日券は3500円)
お問い合わせ・電話予約 090-9583-8061 ゼーロンの会 上村清彦代表