豪雨で5年運休続く鉄道 全線再開へ願い込め被災レールが「ナイフ」に

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熊本 2025.07.03 21:03

熊本豪雨「復興の現在地」続いての復興への願いが込められたナイフ。豪雨で被災し廃棄される「あるもの」が生まれ変わったものです。800℃~900℃まで熱した鉄。ハンマーで叩き、作られているのはナイフです。素材はくま川鉄道の廃棄となったレールです。


人吉市と湯前町を結ぶくま川鉄道。利用者の多くは地元の高校生で“地域の足”として大事な路線でした。5年前の熊本豪雨で、くま川鉄道は車両への浸水だけでなく線路や駅舎へ大量の土砂が流れ込みました。さらにシンボルの球磨川第四橋梁も流出し、甚大な被害となりました。


今も人吉温泉駅から肥後西村駅の約6キロで運休中のくま川鉄道。来年度上半期での全線開通に向けて復旧作業が続いています。この状況を…。


■くま川鉄道・永江友二社長
「人吉球磨の鉄道を守らなければいけない。鉄道というか、公共交通を守らなければいけない」

このような中、くま川鉄道の状況を見て以前から交流のあった山口県岩国市の錦川鉄道が立ち上がりました。互いの廃棄レールでナイフを作り、経費を除いた収益をくま川鉄道に寄付するというのです。ナイフ製作を担当するのがあさぎり町にある創業1904年の樺山鍛冶工場、3代目の樺山明さんです。ことし3月から製作を開始し、デザインから加工まですべてひとりで行っています。


■樺山鍛冶工場・樺山明さん
「これが今回使っているレールになりますけど、これがくま川鉄道さんのレール。こっちが錦川鉄道さん」

樺山さんはレールの形をいかしたデザインにこだわりました。

■樺山鍛冶工場・樺山明さん
「この塊部分が歯になって、ここがハンドルで、こっちがもう一本のハンドル。 レールの形が残りますよね。それで折り曲げて(持ちやすい)ハンドルにするという」

数十トンの車両に耐えるレールは非常に硬く、熱して叩く作業は機械も使いながら10回ほど繰り返します。通常の刃物製作に比べ、手間暇はかかりますが、丈夫で錆の侵食に強いナイフだといいます。


■樺山明さん
「期間もあることなので限られてはいるんですけれども なるべく一本一本丁寧に作りたい」

■くま川鉄道・永江友二社長
「僕もナイフかっこいいなと、キャンプとかアウトドアに使えるのでほしいことで支援にもなるんだという思いで 買っていただいて、地域公共交通というものを一緒に守ってもらっているという思いを持ってもらえたらありがたいなと思っています」

地域の大事な路線のレールは全線再開への願いが込められ、人々の身近な道具に生まれ変わります。