衆院選

衆院選小選挙区「0増6減」 熊本は5議席から4議席へ 

小選挙区新旧.jpg「1票の格差」を是正するため、衆議院小選挙区の区割りを見直す改正公職選挙法が成立し、熊本県では現在5つある小選挙区が4つに減ることが決まりました。前回の衆院選の小選挙区と、選出された衆議院議員は下図のようになっています(所属政党の表記は2014年の当選時)。現在は園田博之議員が自民党に復党したため、小選挙区は自民党が議席を独占する形になっており、今後、候補者調整が行われます。

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衆議院は4年の任期満了を待たずに解散するので、次の選挙がいつ行われるかわかりませんが、衆院解散の時期は選挙制度改革と深く関係があります。2016年5月には、まず選挙区の「0増6減」を先行し、そのあとで人口比をより反映する議席配分方式「アダムズ方式」を2020年の国勢調査結果に基づいて導入することを定めた衆院選挙制度改革法が成立し、2017年6月9日には、「0増6減」に基づいて衆議院の小選挙区の区割りを見直すことなどを盛り込んだ改正公職選挙法が成立しました。「0増6減」は、2017年夏以降の衆院選から適用される見通しです。では、そもそもアダムズ方式とは何か?熊本の選挙区を中心に、順を追って説明します。

15.jpg一票の格差とは2-1KAKUSAHYOU_R.jpg

選挙制度改革の最大の狙いは「一票の格差」の是正にあります。「一票の格差」とは、選挙区から選ばれる議員1人あたりの有権者、または人口の差のことをいいます。選挙区の有権者数や人口は転出入や出生、死亡などで変わり、ほうっておくと選挙区ごとの議員の定数とつりあわなくなります。少ない票でも当選する議員や、たくさん票を集めたのに落選する議員が出て、選挙の結果に公平な民意が反映されなくなってしまうのです。

最高裁は、有権者の一票の格差が2倍以上だった衆院選について、法の下の平等を定めた憲法に違反する状態だった(違憲状態)と判断しています。衆議院の小選挙区から当選する議員はどこも1人(比例復活当選は除く)なので、是正するには選挙区の区割りを見直して、選挙区ごとの有権者数や人口をそろえる必要があります。

2016年2月26日に公表された国勢調査速報値(2015年10月1日時点の人口)によると、小選挙区ごとの人口は最も多いのが東京1区の635,097人、最もが少ないのは宮城5区の272,077人でした。宮城5区の1票は東京1区の2.334倍も価値が大きい(=1票が重い)ことになります。全国295の小選挙区のうち、最高裁が違憲状態とする「格差2倍」を超えている選挙区は37もあります。

15.jpg熊本の格差はどうなっていた?

表は全国の小選挙区の1票の価値を、小さい(=1票が軽い)順に並べたものです。熊本では1区(熊本市の東部)の1票の価値は大阪や愛知の選挙区並みですが、5区は全国で8番目に1票の価値が大きい選挙区になっていて、熊本5区と東京1区の格差は2倍を超えています。

ただし、国勢調査をもとにした格差は人口から算出するため、選挙権がない子供や外国人も含まれています。最高裁が違憲状態とするのは有権者数から算出した格差ですから、両者を単純に比較することはできません。ただ、国の法律では選挙区の区割りは有権者数ではなく人口をもとに決められることになっているので、人口をもとにした一票の格差も重要な意味を持ちます。

熊本では2015年の国勢調査とは別に、知事選に向けて3月に選挙人名簿登録者名簿の登録も行われたため、人口でも有権者数でも新しい数字で県内格差が算出できます。有権者数でも人口でも、最も1票の価値が大きい5区の2票が、最も価値が小さい1区の3票以上になっていることがわかります(人口による格差は下図のカッコ内に併記)。

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15.jpg議員定数の削減も

選挙制度改革には一票の格差の是正のほかに、議員定数の削減という目的があります。国会議員1人には給与や活動費、政党交付金などをあわせると、年間4000万円前後の公費が使われているそうです。国民の税金で賄われるこうした費用を節約するためにも、今の475の定数は多すぎるとの声が強く、多くの政党が選挙公約にも定数削減を掲げています。そこで衆議院は、有識者が加わった調査会に、定数の削減と格差是正のための議席配分の見直しを両方行う改革案をつくってほしいと依頼し、2016年1月、その案が答申されました。

有識者調査会の案では、衆議院議員の定数を現在の475から10議席減らします。調査会には「外国と比べても日本の国会議員の数は多くない」と削減に消極的な声もあり、かといって数議席減らしただけでは改革とはいえず、結局、2ケタの一番下の10と決まったようです。今の小選挙区(295議席)と比例代表(180議席)の選挙制度がスタートした当初、両者の比率が3:2だったことから、削減する10議席の内訳は小選挙区6、比例代表4となりました。

6議席を減らした上で小選挙区289議席の格差を是正する議席配分方法として、有識者調査会は「アダムズ方式」を提言しました。この方式はアメリカ第6代大統領ジョン・クインシー・アダムズ(1767~1848)が提唱した方式です。アダムズは大統領を務めた後にマサチューセッツ州から下院議員に選出され、人口が少なかったマサチューセッツ州の下院議席削減に反対するため、1830年にこの方法を主張しました。

15.jpgアダムズ方式って何?

有識者調査会の案では、議席を都道府県ごとに配分する際にアダムズ方式を使います。今の配分をなるべく変えずに配分できる「ある数X」を決めて配分するのですが、その際に小数点以下を必ず切り上げるのがアダムズ方式のミソです。「1.2議席」なら2議席、「0.4議席」でも1議席が配分されるので、どんなに人口が少ない県も最低1議席を確保できます。

具体的にアダムズ方式で議席を割り振ってみましょう。2015年の国勢調査速報値では日本の人口は1億2711万47人でした。衆議院小選挙区の総定数は6減って289となるので、議員1人当たりの人口は、

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となります。各都道府県の人口をこの数で割っていけば定数が配分できますが、アダムズ方式では小数点以下を切り上げるので、総定数が289より増えてしまいます。総定数は今より6減らした289、しかも各都道府県ごとの定数をなるべく変えずにすむ数Xを探していくと、478,402~478,771の間の数なら結果は同じで、5都県にあわせて9議席増やし、15県をそれぞれ1議席減らす「9増15減」となります。

この案に対して自民党は、まったく違う独自の案を出しました。すべての都道府県の定数から1を引いた上で、1議席あたりの人口を比べ、その数字が小さい順、つまり1票の価値が大きい順に6県の議員定数を1ずつ減らす案です。最初に1議席を引いて削減の対象から除外しているので、各都道府県に必ず1議席が配分される「1人別枠方式」を基本としています。議席増になる都県はないため、配分は「0増6減」となります。

「0増6減」は定数見直しの規模が小さい分、アダムズ方式による9増15減案より格差是正の効果は小さくなります。都道府県単位の一票の格差をみてみると、すぐにアダムズ方式で配分を見直し「9増15減」した場合は格差は1.668倍に縮小しますが、「0増6減」だとなお1.885倍の格差が残ってしまいます。このため0増6減に対しては「自民党は自らが強い地方の議席を極力減らさないようにしている」という批判があります。ただ、アダムズ方式を採用して都道府県の定数を大規模に変えると、区割りの調整や有権者への周知が大変で、迅速な格差の是正が行いにくいことも確かです。

15.jpgどちらでも熊本は1議席減

kennjinnkou01_R.jpg2つの案で熊本県の議席はどうなるのでしょう。定数は有権者数ではなく人口を算出根拠とすることが法律で決まっているので、もとにするのは2015年国勢調査速報による人口です。熊本県の人口は178万6969人でした。

まず、「9増15減」のアダムズ方式で、熊本県の人口をXで割ると、

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となって、切り上げても4議席にしかなりません。熊本県は小選挙区の定数は5から4に減らされる「15減」の県のひとつになるわけです。

「0増6減」の自民党案ではどうでしょう。熊本県の定数5を1減らして1人当たりの人口を計算すると、

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となり、鹿児島、岩手、青森に次いで小さくなります。熊本は下位6県に含まれ、やはり1議席減らされてしまうのです。以上の結果をまとめたのが右の表です(表をクリックすると別ウインドウで拡大します)。

15.jpg定数是正の動きと解散の関係

都道府県ごとに再配分された定数を受けて区割りをどう変えるのかの議論はこれからで、「0増6減」で新たな区割りのもとで衆院選が行えるようになるのは2017年夏以降とみられています。しかし、自民党内などには「将来の改革について道筋をつけたのだから、0増6減をやる前に衆院選を行っても、最高裁は選挙結果までは無効にしないのでは」という見方があります。

自民党はアダムズ方式の導入には消極的でしたが、安倍首相(自民党総裁)は「定数是正は先送りしない」と明言し、2020年の国勢調査結果をもとにしたアダムズ方式の採用を容認することにしました。最高裁が判決で自民党案の「1人別枠方式」を「一票の格差是正を遅らせる」と批判していることも踏まえ、すぐにではないがアダムズ方式を採用してもいい、という姿勢を示したわけです。

しかし、最高裁が実際に改革案をどう判断するかは、裁判が起こされて判決が出ないとわかりません。アダムズ方式についても「端数を切り上げて各都道府県に必ず1議席を配分するのだから、1人別枠方式が形を変えただけ」という見方もあります。

15.jpg比例九州ブロックも1減へ

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改正公職選挙法が成立したことで、小選挙区と同様に「0増4減」で比例代表を4議席減らされ、東北、北陸信越、近畿、九州の各ブロックの定数がそれぞれ1減ることになります。アダムズ方式と違って定数を増やすブロックはありません。

一方、有識者調査会は、衆議院の比例代表でもアダムズ方式の採用を提言しており、計算すると「2増6減」となって、やはり九州ブロックの議席も1減ることになります。

(左の表。表をクリックすると別ウインドウで拡大します)


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