熊本城と加藤清正

特措法救済、対象地域外から3761人     2015年8月25日

水俣病の特別措置法をめぐり、熊本県は救済対象者の居住地域や生まれた年ごとの判定結果を公表しました。救済対象者の16.5%にのぼる3761人が、県が定めた対象地域外に住んでいたことが分かりました。

特措法は水俣病のような症状はあるものの、患者と認定されていない、いわゆる「未認定患者」を救済するための法律で、水俣病問題の「最終的な解決策」として2009年に施行されました。 救済の申請は2012年7月末まで受け付けられ、対象者には一時金210万円が支払われ、医療費が無料となる手帳が交付されました。熊本県内では2万2816人が救済の対象となっています。

150825minamatatokusotizu_R.jpg救済対象とするかどうかの判定で設けられたのが対象地域です。 県は、水俣市などの不知火海沿岸部を「メチル水銀を相当量摂取した可能性がある」として救済対象地域に定めました。対象地域の外に住む人も救済申請はできましたが、対象地域内なら不要な水銀に汚染された魚を多く食べたことを証明する資料を提出しなければなりませんでした。

ところが県が公表したデータでは、対象地域の居住者で救済対象とされたのは1万8980人で、対象地域外に住んでいた人が、少なくとも救済対象者の16.5%にのぼる3761人もいました。一方、八代市については「対象者が少ないため、個人の特定につながる」として、対象を受けた人が対象地域の住民がどうかが明らかにされず、他の市町村でも詳しい地区が公表されていないため、具体的に被害がどの地域まで及んでいたのかは明らかになりませんでした。

生まれた年ごとの救済対象者数も公表され、1969年(昭和44年)以降に生まれた人が275人対象となり、40代にも被害が及んでいたことがわかりました。県では、救済対象の年代を1969年11月末までに生まれた人と定め、これ以降に生まれた人はメチル水銀の被害を示すへその緒などの提出を求めましたが、救済対象とならない1969年12月以降に生まれた4人も救済対象となっていました。

県が地域別、年代別を公表したことについて、熊本学園大の花田昌宣教授は「熊本県がここまでやりましたというのではなく、ここまで被害が広まっているのでさらに何をしていくのか考えていくという姿勢が大事と思う」と話しています。

対象地域外で暮らし、特措法で救済された天草市倉岳町の真珠養殖業、中村一成さん(61)は、祖父も父も漁師という家に生まれ、不知火海で獲れた魚を食べて育ちました。20年ほど前から足のしびれとこむら返り、手のしびれや耳鳴りに悩まされてきました。

minamatanakamura1_R.jpgしかし、天草市で対象地域とされたのは、不知火海に浮かぶ御所浦町だけ。対象地域外の申請者は水銀に汚染された魚を多く食べたことを証明する資料の提出が必要でした。中村さんは地元の漁協と魚の卸会社が出した取引証明書によって救済されましたが、同居する母親と妻は特措法では救済されず、法廷で争っています。中村さんは海を指さしながら、「あの山の先っぽで(対象地域が)分かれてます。こっちに入ったら倉岳、地域対象外。海に線引きすること自体がおかしい」と訴えます(写真左)。

県の担当者は、「本来はすべての申請者に水銀に汚染された魚介類を多く食べたことを証明してもらう必要があったが、それでは被害者の方に負担になるし、限られたマンパワーで処理するので時間もかかってしまう」と説明します。

特措法による救済申請はすでに終了しています。救済されなかった被害者は県の審査会で患者として認定されたり、裁判で争って勝訴したりしなければ救済されません。高齢化する被害者たちは、一刻も早い救済を求め続けています。

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