熊本地震の記録

地震から1年 県の犠牲者追悼式 安倍首相が追悼の辞     2017年4月14日

170414kentuitouA.jpg熊本地震の前震から1年となる4月14日、県庁では犠牲者追悼式が開かれ、安倍首相も参列しました。首相は「被災者の方々お一人おひとりのお気持ちに寄り沿い、一日も早い生活の再建と、生業(なりわい)の再生、被災地の復興を実現するため、引き続き、政府一丸となって全力で取り組んでまいります」と追悼の言葉を述べました。

遺族を代表して、避難中に母親が亡くなり、関連死と認定された熊本市の冨永眞由美さんが「悲しみを乗り越え、この辛さを心の糧として立ち上がる人が増えて、熊本が笑顔と活気にあふれるふるさとに再建されていくことを願います」と話しました。

式典では午前10時に犠牲者に対する黙とうが捧げられました。同時刻には熊本市内でもサイレンが鳴らされ、あちこちで黙とうを捧げる人の姿が見られました。

170414mokutouC.jpg追悼式での安倍首相、蒲島知事、遺族代表の式辞、挨拶全文は以下の通りです。

【安倍首相 追悼の辞】

170414sikiabe.jpg「熊本地震犠牲者追悼式」が執り行われるにあたり、政府を代表して謹んで追悼の言葉を申し上げます。

震度7の地震が連続して発生し、ここ熊本県を中心に甚大な被害をもたらした熊本地震の発生から1年の歳月が経ちました。

この地震により亡くなられた方々の無念さと、最愛の方を失われた御遺族の皆様の深い悲しみに思いを致しますと、誠に痛恨の極みであり、哀惜の念に堪えません。ここに改めて、衷心より哀悼の意を捧げます。また、被災された全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。

発災後、被災地を訪問した際、凄まじい地震の爪跡を目の当たりにし、被害の甚大さに言葉を失いました。避難所生活を送られている被災者の方々の大変な御苦労に接し、必ずや、全ての被災者の方々が震災前の笑顔を取り戻し、安心して暮らせる街をつくりあげる、そうした復興を成し遂げることを決意いたしました。これまでに、地元の方々の大変な御努力、関係機関の御尽力、そして全国の方々からの温かい御支援によ り、復旧・復興は一歩一歩、前に進んでまいりました。しかし、未だに4万7000人を超える方々が仮設住宅などで不自由な暮らしを余儀なくされています。地域産業の再生や、道路などのインフラの復旧、そして熊本のシンポルである熊本城の復旧など、取り組むべき課題は数多く残っています。

復旧・復興をできるだけ早く成し遂げることこそが、犠牲となられた方々の御霊に報いる道です。被災者の方々お一人おひとりのお気持ちに寄り添い、1日も早い生活の再建と、生業(なりわい)の再生、被災地の復興を実現するため、引き続き、政府ー丸となって全力で取り組んでまいります。また、熊本地震から得られた多くの貴重な教訓を踏まえて災害対策の一層の充実を図り、災害に強い、強靭な国づくりを進めていくことを、ここに固くお誓いいたします。

御霊の永遠に安らかならんことを改めてお祈り申し上げるとともに、御遺族の皆様の御平安を心から祈念し、私の追悼の言葉といたします。

内閣総理大臣 安倍晋三

【蒲島県知事 式辞】

170414tiji.jpg熊本地震犠牲者の追悼式に当たり、犠牲となられた方々の御霊に対して、熊本県民を代表し、謹んで哀悼の意を表します。

平成28年4月14日と16日の、2度にわたる震度7の激震は、私たちのふるさと、熊本の姿を一変させました。倒壊した建物、崩れ落ちた阿蘇大橋、傷ついた熊本城など、次々と映し出される光景に、私たちは言葉を失いました。

強い余震が続く中、自衛隊や消防、警察による懸命の救助活動が続けられ、1700名を超える命が救われました。しかし、私たちの願いもむなしく、犠牲となられた方々は、災害関連死を含め、225名に及びます。お一人お一人に愛する家族があり、夢があり、幸せな暮らしがありました。どんなに月日が流れても、最愛の家族を突然失われたご遺族の深い悲しみは、癒えることはありません。改めて、心からお悔やみを申し上げます。

先日、益城町の仮設住宅で、被災された方の孤独死が発生いたしました。本当に残念でなりません。今後は被災された方々が孤立しないよう、行政、自治会、民生委員、ボランティアなど地域全体で対応していきたいと思います。

「熊本県には決して大きな地震は来ない」そんな過信が、私の中にあったのではないか。地震の起こったあの日から今に至るまで、自らに問いかけない日はありません。県民の生命、財産を守る知事として、亡くなられた方々の遺志を受け継ぎ、遺されたご家族をこれからも守り続けていくため、災害に対する万全の備えを築いて参ります。

このたびの地震においては、発生直後から、国や全国の自治体、関係者の皆様による力強い御支援をいただきました。御支援いただいた皆様に、この場をお借りして、厚く御礼を申し上げます。

今、熊本は、全国から寄せられた支援の輪に支えられ、復興に向けて、着実に歩みを進めています。

私は、訪れた仮設住宅で、被災された方々がお互いに励ましあい、一歩一歩、生活再建を進めておられる姿に、胸を打たれました。また、代々引き継いできた田畑が被災し、それでもなお、自然と向き合い、黙々と耕し続ける農家の皆様の姿に、復興する熊本の姿を重ねました。復旧・復興の先頭に立ち、県民の皆様を励ますつもりでいた私自身が、被災された方々から励まされ、勇気をいただいています。

今回の地震では、県民の約1割、18万人を超える方々が避難先で肩を寄せ合い、過ごされました。そのような中、子ども達が周りの人々を思い、行動する姿が、私の心に残っています。トイレを使われた高齢者の手を洗ってあげるため、水が入ったヤカンを持って待っている子ども達、食事の配膳や物奇の仕分けを率先して行う子ども達、多くの避難所で大人に負けない子ども達の活躍がありました。「みんなのために、自分に出来ることは何か」、子ども達は自らに問いかけ、行動したのです。

未来を担う、この子ども達のためにも、安心して暮らすことができ、夢と誇りにあふれる熊本を必ずや創り上げて参ります。そして、創造的復興を成し遂げた「ふるさと熊本」を、次の世代に引き継いでいくことを、あらためてお誓い申し上げます。

最後に、皆様の御支援に対する感謝を深く胸に刻み、犠牲となられた方々のご冥福と、一日も早い熊本の復興を願い、追悼の言葉といたします。

熊本県知事 蒲島郁夫

【遺族代表の言葉】

170414izoku.jpgのサムネイル画像芽吹きとともに巡りくる春、一年で一番美しく穏やかな季節です。しかし、今日ここに集う私たちは、これからずっとこの季節を心の痛みと共に生きる事になりました。今日4月14日、そしてあさって4月16日が訪れるたびに、あの日の惨状が目に浮かび、何よりも愛する家族を失ったあの時を思い出し、深い悲しみの記憶にさいなまれずにはいられません。地震から1年の節目となる今日、このように追悼の場を整えていただきましたことに心から感謝申し上げ、遺族を代表いたしましてご挨拶を申し述べさせていただきます。

私は1年前、突然の大地震に、着の身着のまま愛犬を連れ、家族3人近くの駐車場に車で避難しました。先に来ていた顔見知りの方に「お婆ちゃんは大丈夫?」、「困ったら言うてよ」と、口々に温かい声をかけてもらいました。心優しい隣人に囲まれた暮らしに感謝したことを思い出します。しかし、16日の2度目の揺れで同じ場所に避難して夜を過ごすうちに、元々寝たきりで弱っていた母の呼吸は浅くなり、夜明けを待って病院へ駆けつけた時には、もう医学の力で母を蘇らせることはできませんでした。火葬場も被災しており、すぐには使えず、1週間の間、母と我が家で心行くまで一緒に過ごせたことは、せめてもの救いでした。

私は母を見送り、次第に日々の暮らしが戻って参りますと、悲しみの中ではありますが、少しずつ地震が起きて得たものにも気づき始めました。商品が散乱した店をいち早く片付け、店に来る人に必要な品物を配っていらした方。家の前に「うちは水が出ますのでトイレは自由にお使いください」と立札を立てられた方。「お隣が高齢の方だから水汲みに行ったら、必ず分けてあげるの」とおっしゃる方。皆大変な中で気遺いや手助けを始められ、それを続けていらっしゃる姿が目に止まるようになってきました。

普段はあまり顔も見たことのないご近所の、そんな心温まる言葉やさりげない援助を知るうちに、感謝の気持ちが芽生え、交流が始まるなど、いくつもの変化が少しずつ私の中に生まれました。悲しく辛い地震でしたが、まわりの人の優しさは、私の生活に希望の花を咲かせてくれました。

私は、「花は咲く」という歌が大好きです。大きな災害を体験してあの歌の「花は、花は、花は咲く」というフレーズが胸に迫り、地震の後も変わりなく庭に咲く花を見ると、いのちの営みの退しさと尊さに、生きる力が湧いてきます。私の母は本当に無口で、人生の生き方や教訓めいたことを聞かされた記憶はありません。でも愚痴ひとつこぽさず、黙々と家事をこなす小さな背中が、当たり前の日常のありがたさを、教えてくれていたような気がします。庭の花はまるで母のようで、毎日、私を温かく励ましてくれます。

これ迄も、またこれからも、遺族として悲しみが癒えることはありません。それでも多くの人に支えられてここまで来ました。本日の追悼式をきっかけに、私たち遺族が少しでも前を向いて、元気に歩きだすことは、亡くなった方々の望みではないでしょうか。私自身も顔を上げて生きていきたいという思いで、本日、この場に立たせていただきました。悲しみを乗り越え、この辛さを心の糧として立ち上がる人が増えて、熊本が笑顔と活気に溢れるふるさとに再建されていくことを願い、私の挨拶といたします。

遺族代表 冨永眞由美

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