熊本地震の記録

手話で語る地震の体験 熊本ろう学校の挑戦      2016年9月25日

160925syuwaA.jpg手話の表現力などを競う「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」が鳥取県倉吉市で開かれ、熊本地震の体験を発表した熊本ろう学校チームが見事、初優勝しました。

この大会は聴覚に障害がある人たちへの理解を深めてもらおうと、鳥取県が毎年開いています。今年は全国の予選を勝ち抜いた20チームが参加し、開会式では秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまが手話を交えて「大会を通して聴覚に障害がある方々と、大切な言語である手話に対する理解が一層深まることを願います」などとあいさつしました(写真上)。

160925syuwa6.jpg各チームは、手話を使って8分以内で表現します。熊本ろう学校高等部のチームは(上写真、左から順に)2年の山口翔さん、徳永強さん、1年の中村美南海(みなみ)さん、2年の坪井誠さんの4人で熊本地震の体験発表に挑みます。4人は「練習の成果も熊本の人たちの気持ちも全部込めて、一生懸命表現できたら」(坪井さん)と練習を繰り返し、表現を磨いてきました。

発表の順番は最後。否応なく緊張感が高まります。そして迎えた本番。発表は「4月14日午後9時26分、震度7の大地震が熊本を襲った」という徳永さんの手話から始まりました。

160925syuwaD.jpg160925syuwaB.jpgのサムネイル画像徳永さんは、坪井さんとともに運動場に避難しました。生徒たちを度重なる余震が襲い、緊張、恐怖と不安で泣き出す生徒もいたといいます。真っ暗な運動場では誰がいて、誰がいないのかも確認できません。暗くて手話が使えず、意思の疎通もままなりませんでした。そんな時、運動場に先生たちが車で駆け付けてくれました。「ライト、ライト、ライト。暗かった運動場が明るく照らされてほっとした」。救いの光が差した時の気持ちを全身で伝えます。

坪井さんは学校の寄宿舎で勉強中、突然、大きな揺れを感じました。とっさに机の下に潜り、次々に物が倒れる中、揺れが収まるのをじっと待ちました。「今まで経験したことがなかったので、とても怖かった」。その経験を全身を使って表現します。

山口さんも真っ暗な道路に出たときの「情報を閉ざされた状況」を精一杯伝えます。「暗い道路で最初は何も見えなかったが、そのうちいくつかの携帯電話の画面が暗闇に浮かび上がった。周りに人がいて、情報を得ようと携帯電話を見ている。一人ではないんだとわかって、安心しました」。

中村さんが伝えたのは、地震の様子だけではありませんでした。中村さんは天草市御所浦町の家族と離れ、熊本市で生活していました。家族の中で1人だけ耳が不自由で、情報がない孤独にさいなまれ、父親に反抗しがちだったといいます。しかし、父親は4月16日の本震の4時間半後に、御所浦町から船と車を乗り継いで駆けつけてくれました。「お父さんは『地震怖かったね。大丈夫だから一緒に家に帰ろう』と言ってくれた。助けに来てくれて、はっと思った。お父さんありがとう。今までごめんなさい。感謝の気持ちがいっぱいになった」。中村さんは、手話でその時の思いのたけをぶつけました。

160928SYUWA10.jpg審査の結果、正確な手話や豊かな表情で被災当時の体験がよく表現されていることなどが評価され、グランプリに。賞状を受け取る中村さんの目には感謝の涙がありました。

4人は10月3日県庁を訪れ、宮尾千加子県教育長に優勝を報告しました。宮尾教育長は「涙が出るほど感動した。全ての県民に大きな勇気を与えてくれた」と手話を交えて4人の健闘を称えました。

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