熊本地震 連載・データ集

復興へ経済に活力を 金融新時代フォーラムin九州   2017年2月28日          

金融特面・会場全景.jpg熊本地震からの復興を金融機関の視点で考える「金融新時代フォーラム in 九州」(読売新聞西部本社主催、KKTなど後援)が、熊本市西区のホテルニューオータニ熊本で開かれました。テーマは「金融界は震災復興にどう向き合ったか~地域と金融機関の未来を探る」。金融庁監督局長の遠藤俊英氏、東日本大震災を経験した仙台市の七十七銀行頭取の氏家照彦氏がそれぞれ基調講演した後、肥後銀行頭取の甲斐隆博氏、地域経済活性化支援機構専務の林謙治氏を交えたパネル討論が行われました。2017年3月22日付読売新聞西部本社版に掲載されたフォーラムの特集記事を、読売新聞社の許諾を得て掲載します。

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 創業者融資 積極的に 金融庁監督局長 遠藤 俊英氏 

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 15.jpgガイドライン

地震では発生直後、復旧、本格的な復興の3段階に分けた行政対応がある。熊本でも発生直後は金融機関に対し、預金証書や通帳を紛失しても、預金者と確認すれば払い戻しに応じることなど様々な緊急的措置をお願いした。今は復旧の過程なので、事業再生支援ファンドの活用促進とか、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン活用といった段階と思う。

このガイドラインは非常に重要で、住宅などの二重ローン問題に対応している。東日本大震災での経験を踏まえて策定され、熊本地震が本格的に適用する最初の災害になった。

メリットは三つある。被災者の生活再建支援金に加え、財産の一部をローン返済にあてずに手元に残せる。破産などの手続きと異なり、債務整理をしたことが個人信用情報として登録されないため、新たな借り入れに影響しない。国の補助により、弁護士ら「登録支援専門家」による手続き支援を無料で受けられる。

ただ、多くの住宅が被災している中で、1月末現在で債務整理が成立したのは8件、手続き中は451件。利用によって状況を打開してもらえる方は多いと思っている。引き続き周知徹底を図りたい。

 15.jpg企業と対話を

金融庁はここ数年、地域金融機関に(融資などの)金融仲介機能をより発揮してもらうため、様々な施策を行っている。地域は今、人口減少や高齢化など構造的な問題に直面している。金融機関は地域経済を下支えし、生産性を上げるために大きな役割を担っている。顧客とともに成長する、持続可能で多様なビジネスモデルを確立してほしい。

そのため、①事業性評価②生産性向上への貢献③顧客の立場に立った資産運用手段の提供――を中心課題に据えた。前提として、当局による情報発信と、金融機関による情報公開が大切になる。金融機関は地域経済にどう貢献し、どんな付加価値をつけようとしているのか、自ら情報公開する。そのために展開する取り組みがうまくいっているかどうか、金融庁と金融機関が指標(ベンチマーク)に基づいて検証・対話し、議論を継続していく。

事業性評価とは、金融機関が担保・保証に過度に依存せず、企業の価値や将来性について、企業との対話を通じて理解し、融資することだ。これには、営業現場の第一線が頭取のコミットメント(公約)を実現するために動くかどうかが重要になる。

 15.jpg担保依存排除

昨年10月につくった金融行政方針では、(担保・保証に依存する)「日本型金融排除」の実態把握を挙げた。担保・保証はなくても事業に将来性がある融資先、信用力は高くないが、地域になくてはならない融資先に、融資がうまくなされていないのではないか。この仮説に基づき、今年はいろいろ検証しようと思う。

検証方法は考えているところだ。熊本の創造的復興にも関連するが、創業者融資がどのくらい行われているかが、一つの指標になるのではないか。高い技術を持つ新しいベンチャー企業だけでなく、父親と違うことに挑戦しようとする2代目の若い社長も立派な創業者。担保はあまりないと思うが、そうした方々に対し、金融機関が「リスクをとってチャレンジしてみよう」と考えるかどうかだ。

信用金庫や信用組合から話を聞くと、コミュニティーで信頼されている人は、融資にも真摯に対応してくれるという。コミュニティー内の創業者の位置づけは、担保に依存しない融資を展開する際に非常に大きな手段になると確信した。

 コンサル機能を発揮 七十七銀行頭取 氏家 照彦氏 

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 15.jpg公的資金活用

当行は仙台市に本店を置き、東北を営業基盤にしている。東日本大震災は宮城、岩手、福島各県の沿岸部を中心に惨禍をもたらした。宮城県の被害額は9・2兆円とされ、人的被害、建物被害は全体の約半分か、それ以上が集中した。

当行も津波で19店が浸水し、宮城県南三陸町の店舗は流失。行員や家族にも多数の死亡・行方不明者が出た。

未曽有の大災害を受け、経験のない対応を迫られた。震災直後は現金の払い出しの要望が多数発生した。通帳もキャッシュカードもない方でも、会話で本人と推定できれば、母印だけで10万円を限度に現金を支払った。件数は約3万9000件、31億円だったが、最終的に損失が確定したのは2件、19万5000円だった。

地震の被害規模や、当行の経営が継続できるかも正直分からない状況だった。ただちに公的資金の活用を考え、金融庁に相談した。金融機能強化法の震災特例が速やかにつくられ、劣後ローンで公的資金200億円を導入した。地域金融機関が国と一体となって復興を推進するという、メッセージ性のあるものになった。

昨年9月までの5年半で約2万3000件、6000億円の震災関連貸し出しを行った。事業性資金は震災直後に運転資金が急増し、復旧の進展とともに落ち着いた。個人は住宅ローンの占める割合が高く、ピークは震災発生の2~3年後だった。熊本でも住宅再建への対応が今後本格化するだろう。

企業の設備復旧にはグループ補助金が大きく貢献した。中小企業がグループをつくって復旧・復興の事業費を申請すれば、国と県が事業費の4分の3を補助する。宮城県では4000事業者に対し、補助金総額は約2500億円だった。事業者を束ねることで生産性が向上し、競争力も高まった。

復興支援ファンドにも54億円を出資した。

自宅が被災した個人は、既存の住宅ローンの返済と、新たな住宅取得資金の調達という二重ローンの問題を抱える。これには既存債務の軽減が可能な個人版私的整理のガイドラインを活用し、再建を支援した。

 15.jpg商談会50回超

コンサルティング機能の発揮についても申し上げたい。企業は震災で失った販路の開拓に直面する。当行は販路獲得に向けた商談会を国内外で50回以上開いた。

カキの養殖が主産業だった石巻市桃浦地区は、震災で養殖設備を失い、約150人の集落が消滅の危機にあった。高齢化と人口流出でカキの殻をむく「むき子」の確保が難しくなった。

復興庁の水産業の特区制度を使い、漁業者や支援企業を橋渡しして合同会社を設立。むき子に頼らない生産体制を確立し、生食用の高付加価値商品の販路拡大を目指す仕組みをつくった。地域産業の活性化、質の高い雇用創出に貢献した。

 15.jpg特色ある街を

震災前から人口減少や少子高齢化が進んでいたが、本来なら10年、20年かけて進む状況が震災で一気に現実となった。被災地は復興と合わせて人口減少と向き合いながら、自然との共存、地域資源の活用を通じ、特色ある街づくりを進めなければならない。

町の8割が被災した女川町はあえて防潮堤を造らず、防災に配慮しながら海と共存共栄する街づくりをしている。沿岸部では漁業、水産加工業が再開した。海産物市場のイベントで交流人口が拡大し、にぎわいを創出して注目されている。

金融機関は国や自治体と一体となり、地域経済の活性化を牽引しなければならない。創造的な復興を目指し、今後も地域とともに生きていきたい。

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パネル討論の前半では、肥後銀行頭取の甲斐隆博氏、地域経済活性化支援機構専務の林謙治氏が、それぞれ熊本地震後の取り組みを紹介。その後、東日本大震災の経験を踏まえながら、熊本で被災した中小企業や住民への支援策について、パネリストの4氏が議論しました。後半では、人口減少が進む中、単なる復旧ではなく、将来にわたって地域の発展を可能にする「創造的復興」を実現するため、金融機関がどのような役割を担うべきか、意見交換しました。(コーディネーター 牧野田亨・読売新聞西部本社経済部長)

 ローン 選択肢増やす 肥後銀行頭取 甲斐 隆博氏

 

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牧野田 熊本地震からの復旧、復興への取り組みは。

甲斐 熊本地震は、新しい本店ビルを建てて1年も経たない段階で経験した。免震装置のおかげで、地盤の揺れの大きさに対し、ビル内の揺れは9分の1程度に軽減された。ビルが正常だったことで、行員の安否確認や救援物資の支給対応が極めてスムーズにできた。

問題はコンピューターセンターだった。ビルが免震ではなく、耐震だったため、7階に設置された変圧器が使えなくなった。同型の変圧器を探したら、九州で唯一、鹿児島空港ビルディング(鹿児島県霧島市)にあった。すぐに取りに行って対応し、何とか(本震翌々日の)月曜日から全店でATM(現金自動預け払い機)を稼働できた。

復興支援では、地域経済活性化支援機構や日本政策投資銀行などの協力を得て、法人向けに4種類で総額317億円のファンドを用意した。個人向けは少し遅れているが、(親子などで支払う)親子リレー住宅ローンと、(持ち家を担保にする)リバースモーゲージを4月から販売する予定。二重ローンの救済支援の一助になれば、と考えている。

当行には、各事業者が持つ口座への入金額の増減を分析するシステムがある。それを見ると、地域別では阿蘇のダメージが大きく、業種別では宿泊業の落ち込みが激しい。(九州旅行の割引キャンペーンの)九州ふっこう割が昨年末で終了したことから今後の動向が心配だ。(資金繰りの)つなぎ融資が必要との問題意識を持っている。

今後の創造的復興では、街づくりが欠かせない。シンボルとなるのが、2019年の熊本城天守閣の再建と、2022年にコンセッション(民営化)方式で予定される熊本空港ターミナルビルの国内、国際両線の一体化だ。我々は、できることを着実に行っていくことが重要だ。

ファンド 再建に投資 地域経済活性化支援機構専務 林 謙治氏

金融林.jpg 牧野田 地域経済活性化支援機構の現状は。

  一般的に官民ファンドといわれる政府系金融機関で、約250人の専門家が各地で経済活性化のお手伝いをしている。具体的には、全国で35のファンドを運営し、創業期から成長期、成熟期などそれぞれのステージの企業に対して呼び水としての投融資による資金供給をしている。分野は観光やヘルスケア、ものづくりなどだ。

個別事業者の再生も支援し、全国で年間20件程度を手がけている。熊本県では昨年、阿蘇熊牧場(阿蘇市)の再生支援を決定した。熊本バス(熊本市)の再生も手伝った。

熊本地震を受けて肥後銀行と協力し、熊本の金融機関に出資してもらった事業再生ファンド(50億円)と、九州の全地銀の出資で復興支援ファンド(116億円)を創設した。

事業再生ファンドでは、被災した事業者の二重ローン対策として、債権を買い取って今後の成長を支援する。復興支援ファンドも、いかに復興に向けた投資ができるかを考えていく。

地震後、熊本市に事務所を開設し、ようやく半年が経過した。現在は14人程度だが、早急に30人程度にまで拡大したい。

事業継続へ3つの「助」

 15.jpgグループ補助金

 牧野田 グループ補助金をどうみるか。

 甲斐 とても使い勝手の良い制度だ。熊本地震の本震後から5月下旬頃まで、被災した事業者からは「事業を継続するのは難しい」という声が聞こえていた。ところが、グループ補助金が知れ渡った6月以降はそういう声を聞かなくなった。「共助」でグループ補助金を申請し、「自助」によって復興計画を立て、「公助」で資金的に援助をする仕組みは実に有効だ。

 牧野田 東日本大震災の被災地では先行して導入された。見えてきた課題は。

金融補助金.jpg 氏家 効果的な施策であり、感謝したい。ただ、実際に制度が機能するまで時間がかかったように感じた。被災した事業者は多かったが、津波で(事業所などが)流されて大変な状況だったこともある。 設備の復旧により生産水準を元に戻すことができても、販路を断たれたことで(復旧した設備を)生かし切れず、企業は売り上げが縮小した。加えて人件費が上がっており、水産加工業など業種によっては、人手を集められないという問題も起きている。

 牧野田 グループ補助金を申請できていない小規模事業者への対応は。

 氏家 私どもがお付き合いしているのは、中小企業といいながら事業規模があるところ。街のにぎわいを支える小さなお店、八百屋や理髪店などのクラスの実態がどうなっているのか、整理された話は聞いたことがない。何か手を打てないかと思う。

  熊本では、赤紙を貼ってある(危険)建物では事業をしていない。金融機関と一緒にヒアリングすると、「事業を続けたいがお金がない」という人もいる。これはファンドで債権を買い取るなどの対応ができる。信用金庫や信用組合にも小規模事業者に事業意欲を確認してもらい、一緒に対応を進めたい。

債権放棄 県民のため

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 牧野田 被災住宅の解体が本格化するにつれ、二重ローン問題が浮上してくる。金融機関としては債権放棄という痛みも伴うが。

 氏家 東日本大震災では、私的整理のガイドラインがつくられた後も、なかなか進まないという批判があった。相談を受ける弁護士の数が圧倒的に足りなかった。仙台市にはたくさんいるが、気仙沼市や女川町などはとても少ない。弁護士を増やす仕組みにしてほしい。弁護士に支払われる手数料も意外と少額だ。もっと十分に仕事ができるインセンティブ(動機付け)も必要だろう。金融機関は確かに債権放棄を行うことになるが、我々はガイドラインの説明会を何度も開いた。

 甲斐 昨年4月から自然災害の被災者向けガイドライン(の適用)が始まり、熊本地震で本格的に適用された。当行は柔軟に運用する考えで、地震後に取引先などを訪問する中でパンフレットを配ったり、ダイレクトメールを送ったりした。県弁護士会にも声をかけ、ガイドラインの勉強会を地震直後から開いている。ただ、実際に手続きをされる方はまだ少ない。制度が十分に周知されていない現状も踏まえ、支店には再度、被害を受けた住宅などを回って確認するよう指示している。当行の基本姿勢としては、今後の県民の生活の安定に資するのであれば、ガイドライン適用はやむを得ない。

労働力 九州各地から

 15.jpg人手不足

金融図求人.jpg 牧野田 熊本県は有効求人倍率が1・5倍まで上昇した。宮城県も高い。

 氏家 代表例として水産加工業を挙げると、人手が足りなくて生産性が上がらないというのはよくある。建設関連で賃金水準が上がっており、水産加工業が同じコストで人を集めるのは難しい。水産加工は(宮城の)主力産業だが、避難先から戻らない方もいる。ただ、外国人労働者を研修生として受け入れるという明るい動きも出てきた。

 甲斐 人手不足は東日本大震災以降、やや恒常的に続いている。熊本地震が拍車をかける状態になるだろう。復興需要で九州各地から雇用を呼び込む構図になっている。高齢者雇用など様々な知恵が出されているが、人手不足感は否めない。

生活の質にもかかわる

 15.jpg地域密着

 牧野田 地震を機に顧客との対話に力を入れている。気付かされたことは。

 甲斐 従来の銀行は所得と資産、仕事と報酬など物質的な生活状態に関心があった。地震で気付かされたのは、持続可能性という観点から、生活の質にまで関わっていく必要があるということだ。健康やワーク・ライフ・バランス、教育など、政府が進める働き方改革にもつながる。この話を全管理職にした。対話の内容が、被災者により寄り添ったものになると思う。

 氏家 震災後、お客さまに足を運ぶ回数が倍以上になった。取引先がどうなっているのか、何をしなければいけないのか、現場が真剣に考えざるを得なかったのだと思う。問題はこれから。企業発展のお手伝いができるのが一番の喜びであり、事業性評価でそれを確かなものにしたい。

 遠藤 両頭取の話を聞いて改めて思うのは、地域金融機関の原点は何か、ということ。株式会社として、いかに収益を上げるかに意識が働きがちだが、金融庁が構築してもらいたいのは、地域経済とともに金融機関が繁栄するモデルであり、顧客とのつながりの中でウィンウィンの好循環をつくり出すことだ。顧客の話を聞き、行政や企業をサポートする機関などと連携し、地域経済を支えることがこれまで以上に求められる。

観光・農業 成長の両輪

 15.jpg創造的復興

金融特面・カット熊本城.jpg 牧野田 創造的復興には、企業や産業の生産性を高め、新たな企業を育てることが不可欠。熊本県は観光や農業を重視している。

 甲斐 地元として描ける成長戦略が観光と農業という認識は、県と共通だ。県全体として観光促進に取り組む枠組みが必要との問題意識から、県と肥後銀で(観光推進組織の)「くまもとDMC」を株式会社として設立した。利益を生み出す仕組みをつくり、利益を分配することで、全体のコーディネーターとして有効に機能すると思う。観光のマーケティングを情報技術(IT)でビッグデータ化し、情報を各地の観光事業者にフィードバックしていく仕組みを作る。そのソフトを売って収益を上げる。若手のIT部隊が組織され、非常に楽しみな事業体として期待している。

  我々はリスクマネーの供給をお手伝いし、人を派遣する役割も持つ。専門家が多数いて、全国各地で実績もある。くまもとDMCもお手伝いできる。創造的復興は稼げる地域づくりが基本だ。熊本には観光資源が多数ある。伝統的建造物のリノベーションでも、十分に稼げると思う。千葉県のファンドでは、古民家を再生して宿泊施設、カフェ、レストラン、ショップをつくり、町全体をホテルとみなす動きをしている。熊本でもやれる。農業では、益城町や県北で活用されていない農地を借り、ホウレンソウをハウス栽培する事業者に投資している。現在は年4回の収穫で十分稼げる。熊本の気候だと、うまくいけば6回収穫できる。こうした投資を広げていきたい。

 牧野田 九州の地方創生モデルになれる可能性も。

 甲斐 創造的復興の地方創生モデルは、地方も経済成長に取り組んでいこうということ。成長がもたらす自由と選択の可能性がなければ、創造的復興も地方創生もない。しかし、目利き力をつけたり、事業性を強化したりするのを待っていられず、現実にどう的確に対応するかが求められる。そのため、経営としてこれだけのリスクを取るということを、明確に現場に示していきたい。具体的には、格付けの低い相手にもこれぐらい融資量を伸ばしていいよ、というメッセージを経営として発している。専門的にはリスクアペタイトステートメントと言うが、これが現場の営業店長の頭に入りつつある。その累積が事業性評価や目利き力の強化となり、創造的復興、地方創生につながる。

 遠藤 金融機関は地域において最高の組織だと思う。お金がある。情報が集まる。地域で最も優秀な人材を持っている。その組織が地域を支えなければ、誰がやるのか。リスクアペタイトステートメントは、地域を支えるのに非常に重要。人材の意欲を引き出し、金融機関が中心となって創造的復興を進めてもらいたい。

  リスクを取ってもいいという許容範囲内の資本を入れていくことには大賛成だ。熊本では空港の問題もある。2022年に民営化されるが、(その受け皿として)地域連合を具現化できる。DMCなら全国ブランドの企業にも対抗できる。資金供給の場面では地域金融機関のお出ましになると思う。その知見やノウハウは我々が持っている。スマートコミュニティーと呼ばれる街づくりも、地域金融機関が音頭をとってやれば実現の可能性が高い。熊本でも震災前以上の活気がでるのではないかと思う。交通インフラをもっと整備できる部分がたくさんあるし、アイデアは豊富に出てくる。

事業再生モデル示す

 15.jpgあすに向けて

 牧野田 最後にひと言ずつお願いしたい。

 遠藤 創造的復興という言葉は、これからの熊本を考える上で重要なコンセプトだ。金融機関が前向きに力を尽くしていくためには、ビジネスモデルを変えていかなければならない。誤解を恐れずに言うと、預金を原資とした機関というより、金融機能付きのコンサルティング会社、シンクタンクといった姿だ。その地域にとって、「一大羅針盤」という役割を担ってもらいたい。熊本、あるいは九州、日本全体の地方創生モデルをつくってほしい。

 氏家 東日本大震災が発生し、苦労しながらいろいろな制度や仕組みが出来た。金融機能強化法の震災特例やグループ補助金、個人版私的整理ガイドラインなどだ。災害が起きた時点で、すでにこれらが用意されているというのは、ずいぶん状況が変わったと思う。ぜひ有効に活用し、熊本を復興していただきたい。東北の沿岸部は今、復興が真っ盛りだ。もっぱらハードだが、問題はそれが終わった時、にぎわいや潤いといった中身のある都市になっているか。つまりソフトは今からが勝負になる。1万人いた都市に6、7割しか人が戻らないという前提で街づくりをしなければならない。それを乗り越えて創造的な都市をつくるのは本当に大変だ。どういう発展の方法があるか、地域の方、事業者と一緒に考える。苦労は続くが、創造的な仕事をしたい。

 甲斐 熊本で事業を行い、熊本で生活している方々すべてが被災者だ。被災者が社会的役割に応じて被災者を支援している。そういう共助の構図が今、熊本にある。この構図を出来る限り長く維持し、熊本の風土として構造化していく努力を皆さんとやっていきたい。私ども地方銀行が何とか努力し、そうしたコーディネートの役割をやっていけるようになればと思っている。

  地域経済の活性化や、事業再生モデルを今後もつくっていく。地域金融機関と知見を共有し、地域に還元していく。この基本的な考え方で、これからもやっていきたい。

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 創造的復興の一助に 中井 一平・読売新聞西部本社社長 

金融特面・中井社長.jpg観測史上、初めて震度7を2回記録した熊本地震から10か月余りが経過しました。犠牲者の方々のご冥福を改めてお祈りいたします。

甚大な影響を及ぼした熊本地震ですが、幸いにも企業倒産は少なくすみました。金融機関による手厚い支援が件数の減少につながりました。そこで、金融機関の視点から復興を考えるフォーラムを企画しました。

熊本県が設けた有識者会議は、熊本地震の復興について「創造的復興」という基本理念を打ち出しました。本日のフォーラムが創造的復興の一助につながり、九州の持続的な成長のヒントになればと考えています。

最後に、開催にご支援いただいた企業、団体の皆さまに御礼申し上げます。

(読売新聞西部本社版2017年3月22日付朝刊特別面の特集記事を再録しました)

主催:読売新聞西部本社 後援:金融庁、九州経済連合会、九州商工会議所連合会、九州経済同友会、熊本県民テレビ 協賛:九州フィナンシャルグループ

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