熊本地震 連載・データ集

熊本から流出加速 市区町村別人口データ          2017年1月31日

総務省は、全国市町村の転出者と転入者をもとにした2016年の「人口移動報告」を公表しました。昨年1年間に熊本県外に住所を移した転出者と、県内に住所を移した転入者の差は6791人の「転出超」となり、2015年の3933人を大きく上回りました。熊本地震で多くの被災者が出た熊本市は1540人の「転出超過」となり、転出超過人数は2015年の3倍以上に達しました。5区で最も転出超過となったのは地震の被害が大きかったとされる東区(2454人)で、2度の震度7に見舞われた益城町が、2015年の346人の「転入超過」から、一転して1319人の「転出超過」となるなど、熊本地震が影を落としていることが分かります。

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一方、熊本市のベッドタウンとして住宅開発が進む合志市は、熊本地震で大きな被害がなかったこともあり、808人の転入超過でした。南阿蘇村の被災地などから仮設団地に移り住んている人がいる大津町や菊陽町なども転入超過となっています。

人口移動報告は自治体間の人の移動を住民基本台帳法に基づいてまとめた統計ですが、これとは別に、県は国勢調査の結果をもとに、2016年12月20日に2016年の推計人口調査をまとめています。それによると、2016年10月1日現在の熊本県の人口は177万4538人で、2015年10月1日からの1年間で1万1632人(0.65%)減少しました。

こちらの統計には出生や死亡による人口の変化が含まれますが、やはり熊本地震の影響が出ており、人口移動報告と傾向は同じです。市町村別では東海大阿蘇キャンパスの被災で多くの学生が熊本市に転居した南阿蘇村の減少率が3.7%と最も大きくなっていますし、熊本市の人口が73万9606人と1000人以上減っていて、益城町の人口は前年の0.9%増から一転して3.3%の減となっています。最も人口が増えたのはこちらの統計でも合志市です。

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人口移動調査で熊本県の転出入を月別にみた右のグラフは、上が転入超過、下が転出増加を示しています。5,6月が前年にはなかった大幅な転出超過になっているのは、熊本地震の影響によるものです。多くの人が住み家を失ったり、勤め先が休業に追い込まれたりしたのですから、地震直後に県外への転出が増えたのは仕方がない面もあります。

見逃してはならないのは、グラフから見えてくるもうひとつのポイントです。グラフの灰色は2015年、赤色は2016年の熊本県への転出入数ですが、月別にみると昨年の転出超過が最も多かったのは、5月でも6月でもなく、熊本地震が起きる前の3月なのです。3月の転出超過には地震の影響はないはずで、実際に3月と4月の転出超過数は2015年とほぼ同じです。

新年度に県外の大学や企業に進学や就職をする人(多くは若い人でしょう)が、震災の影響に匹敵する規模で毎年流出していることに、改めて気付かされます。福岡県以外の九州各県は、熊本県と同じか、より深刻な傾向にあります。例えば長崎市は地震の被害がなかったにもかかわらず、2016年の転出超過は1547人と、熊本市の1540人より多いのです。

熊本県の転出超過は昨年10月以降は収まり、わずかながら転入超過となっています。県外に避難していた人が戻ってきたり、復旧・復興工事のために県外から熊本県に転入する人が増えたりしているからでしょう。しかし、復旧・復興工事による転入超過は長くて数年しか続きませんし、震災で県外に転出した人がすべて熊本に戻ってくるわけではありません。蒲島知事は「創造的復興によって人口減に歯止めをかける」と話しましたが、確かに熊本を地震前の姿に戻すだけでは、人口減に歯止めはかけられないでしょう。熊本に新たな価値を加える復興ができるかどうかが、熊本が人口減時代を生き残るかどうかを決めるカギになるのです。

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