熊本地震 連載・データ集

初動対応、初の「プッシュ型支援」評価 政府が検証リポート    2016年7月20日

政府が熊本地震の初動対応を検証したリポートをまとめました。熊本支援にあたった公務員らによかった点や反省点をあげてもらい、細かい項目まで◯X△で採点しています。

熊本地震で政府は、官邸とともに熊本県庁に現地対策本部を設けて初動対応にあたり、「K(くまもとのK)9」と呼ばれた各府省の幹部級会合が中心となって、支援物資を自治体の要請を待たずに送る「プッシュ型支援」を初めて本格的に行いました。リポートでは、プッシュ型をとったことで、水や食料の不足感の早期解消につながったと評価しています。一方で、物流拠点に支援物資が滞り、避難所まで行き渡らないという課題があったことなども指摘しています。

政府はこの検証を通じて自治体や物流会社との役割を記したマニュアルを整備する方針です。リポートは地震の初動対応について細かく記していますが、霞が関特有のわかりにくい言葉が多いので、可能な限りわかりやすく言い換えた上で、全文を紹介します。

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1、今回の検証作業について

熊本地震にかかわる初動対応について、時をおかずに派遣された職員の生々しい実務経験を聞き、検証した。評価できることにはmaru_R.jpg、反省、改善すべきことにはbatu_R.jpgsannkaku_R.jpgをつけた。速やかに対応すべきものは見直しの方向性を示した。幹部職員からの報告に加え、現地で実務に当たった職員等149名から提出されたレポートなどをもとに議論し、評価すべきこと、改善すべきことをまとめた。

2 初動対応の体制

4月14日の前震発生直後に政府に非常災害対策本部が設けられ、6月16日時点で31回開かれた。安倍首相も20回出席し、被災状況の把握、応急対策の総合調整などを直接指揮した。本部で決められた対策をすばやくスムーズに行う司令塔として、4月17日に内閣官房副長官をトップとする被災者生活支援チームができた。この下に連絡調整グループが置かれ、ほぼ毎朝開かれた。

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発災翌日に熊本県庁に非常災害現地対策本部(現地対策本部)を設けた。副大臣を本部長とし、①現地での対策の企画立案・調整②物資調達と配送③自治体と避難所④健康と衛生環境⑤学校再開⑥経済産業と中小企業⑦がれき廃棄物処理――の7チームを置き、最も多いときは110名が仕事にあたった。

被災者生活支援チームとして12省庁から68人のリエゾン(連絡役)が市町村に派遣された。このほか6月20日現在で7省ののべ8388人が応援職員として市町村に派遣された。

3.自治体支援

(1)現地対策本部

【幹部級会合(K9)】

jmaru_R.jpg現地対策本部は各府省の局長・審議官級の幹部職員を現地に派遣し、9人で現地本部のいわゆる幕僚で組織した。この組織はK9(Kは「熊本」の頭文maru_R.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像字)と呼ばれ、K9のもとで毎日、定例会議を開き、すばやい意思決定、省庁の垣根をまたいだ支援、県幹部と直接の協議などを実際に行った。この点は熊本県、市町村からも評価されており、今後の災害対応のモデルとなり得る。

jbatu_R.jpg現地対策本部の幕僚は課題が出てくるたびに拡充されて最終的に9人となったが、最初から災害廃棄物処理や学校再開にも見通した体制を整備すべきだった。

災害の状況に応じた現地対策本部へのすばやい幹部職員の派遣など、より実践的な現地対策本部のあり方について、速やかに見直す。

【市町村の状況把握】

jbatu_R.jpg現地対策本部は当初、主に県を通じて状況をつかもうとしたこともあり、一部の被災市町村の状況が正確につかめない状況だった。国や県の職員を新たに投入したが、一向に事態が改善しない状態が続いた自治体もあった。


jmaru_R.jpg「K9」にいた県・市町村の事情をよく知る幹部職員が、このままでは被災した自治体が指揮をとるのは難しいと判断し、新たに国が課長級職員を約1週間派遣して指揮をとれるように組み直した。これによってようやく被災した市町村が災害に対応できるようになった。


jsannkaku_R.jpg被災した自治体の状況をよく知る幹部職員がいつも現地にいるとは限らない。市町村と日ごろから交流のある都道府県がきちんとすばやく市町村の状況をつかみ、人を送り込む必要があるかどうかを判断できるようにしておくべき。


【国と都道府県の情報共有】

jmaru_R.jpg国と都道府県が状況を共有し、効果的に支援するには、顔の見える関係をすみやかにつくることが重要。「K9」と県幹部が毎日、会合を持ち、各府省庁から県庁に出向した経験がある職員が現地対策本部に投入され、国・県双方の情報共有や意思疎通がスムーズに進んだ。

【道府県・政令市との役割分担】

jbatu_R.jpg160704hukkoui.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像発災からしばらくの間は、熊本市の状況をつかむことが難しかった。平時には県と政令市はお互いに並び立つ並列型の関係での業務をすることが多く、急に直列型の上下関係に移れなかったのが理由と思われる。

jmaru_R.jpg国の9人の幕僚「K9」と熊本県の幹部との協議の場に熊本市の幹部が入ったことで、ようやく熊本市の状況がよくつかめるようになった。

災害時の道府県と政令市について、情報収集や支援策が混乱なく行えるよう役割分担をはっきりさせる方向で見直す。

【広報対応】

jbatu_R.jpg誤った情報が流れて混乱し、その確認のために職員の負担が増えたケースがあった。

情報を集約、整理している現地対策本部がマスコミ対応を行っている都道府県と協調して対応する体制を強化するために、広報対応のあり方もすぐに見直す。

【地元調整の促進】

jmaru_R.jpg物資を輸送し、災害廃棄物を処理し、道路などのインフラを復旧させるためには、地域外から支援を受け入れたり、物資を運ぶため港を順序よく利用したりする必要があるが、その調整を被災した自治体がすばやく進めることは難しかった。こうした局面で国が業界団体に働きかけたことは、一定の役割を果たした。

(2)リエゾン(連絡役)

【リエゾンの評価】

jmaru_R.jpg初動対応で、自治体の状況や要望を国が直接つかむため、被災した市町村に国の職員をリエゾンとしてすぐに派遣したのはよかった。被災した市町村の要望が国に直接伝わり、被災地の状況も現地対策本部に報告できた。

【リエゾン業務の課題】

jbatu_R.jpg派遣された国の職員に対するサポートが十分でなく、業務内容に関する十分な説明もないままに現地に派遣されたケースもあった。


jbatu_R.jpg派遣を受ける被災市町村もリエゾンに関する認識がはっきりしておらず、到着したリエゾン職員への対応がスムーズにいかなかったところもあった。

リエゾンとして派遣される職員向けのマニュアルをすぐに作り、必要な研修を行う。受け入れ市町村に向けたガイドラインやリエゾンの活動状況を国、都道府県、市町村が共有する仕組みを作り、リエゾンに対する指揮系統をはっきりさせる。

(3)応援職員

jsannkaku_R.jpg初動対応では被災市町村からの要請を待たず、国の職員をプッシュ型で被災した市町村に直接送り込み、支援に当たらせた。応援職員として派遣された熊本県所在の地方支分部局職員をはじめとする国の職員が本来業務とは異なる業務に献身的に取り組んだこともあって、停滞していた市町村の災害対策本部の機能を回復することができた。このプッシュ型人員派遣の果たした役割の意義等については、今後、受入市町村等からの評価もまたなければならない。

【応援受入体制の整備】risaicyousa_R.jpg

jbatu_R.jpg当初は市町村側の環境整備ができていなかったため、国から応援に入った職員が、ボランティアやNPOとともに十分に機能を発揮して働けなかった場合もあった。

jbatu_R.jpg他の自治体からの応援に入った職員などが活動していたことも、現地対策本部と被災した自治体の間で情報が共有されていなかった。

jsannkaku_R.jpg被災した市町村を応援する職員は、まず地元の状況をよく知る都道府県職員が派遣されるのがよい。その上で、被災した市町村の運営の立て直しが進まなかった場合は、国の職員や被災した地域に接する都道府県の職員を追加で派遣して支援に当たらせることができる体制をとるのがよい。

市町村におけるボランティア、NPOを含めた応援職員や物資の受け入れなどをはっきりさせる計画を作り、訓練して計画を実のあるものとし、職員が出勤できないことも想定したBCP(事業継続計画)を作ることなどについて、市町村に対して必要な支援をする。
避難所の夜間警備や避難所の運営支援などで民間企業やNPOなどと活用・連携できるよう、すぐに避難所運営ガイドラインを見直す。

【防災拠点の耐震化】

jbatu_R.jpg市町村の業務が停滞した大きな要因として、庁舎が被災し、自治体としての一体的な執務継続ができなくなったことがあげられている。

庁舎に限らず体育館等の防災拠点については、いざというときに機能できるよう、耐震化や天井落下を防ぐ措置などを進める。

(4)職員派遣の環境整備

【派遣に向けた職員登録等】

jsannkaku_R.jpg初動対応ではプッシュ型として、被災した自治体からの要請を待たず、幹部を含めた国の職員を被災地に派遣した。


jmaru_R.jpg派遣職員に被災地の勤務経験があったり、出身地だったり、何らかの土地勘をもっていたりしたことが現地での調整などによい結果をもたらした。

いつも被災地に土地勘がある職員がいるとは限らない。災害対応の経験があることに重きを置き、経験者を中心とする派遣職員リストをすぐ作り、派遣に向けた研修や訓練を行う。派遣する職員は、現地に最も近い国の機関の職員の中から選ぶ。

【り災証明の交付支援】

jsannkaku_R.jpg最も多いときには50人の国の職員、632人の他の自治体の職員が、り災証明の交付を支援するため被災した市町村に派遣された。これらの職員の多くは、り災証明のための調査に関する知識や経験を豊富に持っていたわけではなく、急きょ現地で研修を受けて実務に当たった。

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jbatu_R.jpgり災証明を交付するための一次調査は、雨天の時にどのように行うか準備をしておらず、雨対策を考えておくべきだった。

jsannkaku_R.jpgり災証明書については、証明書がなくてもいろいろな手続きが行えるよう手続きの弾力化を進めたが、手続きを弾力化したことを広く知らせ、徹底することが重要。

り災証明の交付に必要となる調査について、雨天時の対策をとり、調査を担当する調査員を各都道府県で日ごろから養成・登録する仕組みを作っておく。

【執務環境、生活環境、勤務条件】

jbatu_R.jpg被災地に派遣されたなかには、業務に必要な支援が足りず、私物の携帯電話を使ったり、宿泊先や食料を全て自分で用意したりした国の職員がいた。


jsannkaku_R.jpg民間団体の職員も含め、派遣職員のために公務員宿舎や公営住宅を活用することも認めるべき。宿舎の安全性確保などの対応も必要に応じて行うべき。

自衛隊の駐屯地を活用するなど派遣職員の活動拠点を設け、しばらくは自給自足できるよう、日ごろから自衛隊や各種機関と連携する体制を作っておく。派遣された職員の宿舎の確保、勤務管理などのルール、手当てなどについてもすみやかに検討する。

4.避難所運営

(1)避難所の状況把握

jbatu_R.jpg避難所の状況は被災自治体も十分に把握できている状態ではなかった。

避難所や車中泊の状況をつかむためにも、避難者の名簿を簡単に作れるよう、住民のデーターベースを活用できる制度を考えておく。

【SNSなどの活用】

jsannkaku_R.jpg自治体が避難所に指定していない場所に避難する人や、自宅近くに車中泊する被災者も多く、そのような人たちがどれくらいいて、どういう状況なのか、つかむのが難しかった。情報不足を補うものとして、SNSなどの情報が期待された。

jbatu_R.jpgSNSの情報を活用することは、状況を十分につかめていない初期段階では有効だが、情報量が膨大となり、事実かどうかを細かく確認することは現実的に難しかった。


jbatu_R.jpg当初はSNSの情報を東京で集めて取りまとめ、現地対策本部に伝えたが、タイムラグが生じて情報が古くなってしまった。


jsannkaku_R.jpgSNSを活用したきめ細かい情報への対応は、NPOなどボランティアの協力も必要。

SNSなどが本来持つ性質を考えた上で、現地対策本部でのSNSなどの情報の活用のあり方を整理する。

(2)保健衛生確保

jsannkaku_R.jpg避難所では多くの被災者が共同で寝起きを共にし、衛生確保が大きな課題となる。避難所運営ガイドラインでは想定していない事態にもすばやい対処や判断が求められる。

各地で進められている避難所運営のノウハウを集めた事例集を年度内に作成する。

【トイレ】toilet.png

jsannkaku_R.jpg仮設トイレの設置は男女それぞれ必要な個数を設け、和式・洋式を両方用意すべき。



jsannkaku_R.jpg仮設トイレのくみ取りについては、地元の清掃団体が連合会を作って県と密接に連携して進めたが、他の地域で常にバキュームカーの手配が円滑に進む保証はなく、民間企業も含めた事前の準備が必要。


jsannkaku_R.jpg避難所では日々の清掃で高校生が中心的な役割を担った例などが見られた。トイレの水を近くの川からくみ上げ、トイレ備え付けのタンクに入れる作業を避難者が行っていた例もあった。

避難所の自主運営を考える中で、衛生管理等の観点からトイレの維持管理についてあらかじめルールを設けておけるよう、事例集を作成する。

【感染症】

jsannkaku_R.jpgひとたびノロウィルスなどの感染症が発生した場合は、患者の隔離が必要となる場合もあるが、避難所の中で新たに隔離スペースを確保するのは難しい場合が多い。

施設利用計画の予備スペースの確保、感染症が発生した場合のトレーラーの活用、感染者の移転など、感染症対策について整理しておく。

【その他衛生管理のための改善】

jsannkaku_R.jpg衛生管理を徹底するためには、定期的に避難所全体を清掃することが効果的。そのためには避難している人に短期間、避難所から移転してもらうのが効率的で、この点、今回、自衛隊が行ったホテルシップ事業などが活用できる可能性がある。

jbatu_R.jpg東日本大震災で得た教訓の多くは、すでに現行の避難所運営ガイドラインなどに反映されている。にもかかわらず熊本地震の初動対応では実行されなかったとこがらもある。初期段階の避難所では、マニュアル等に定められているルールを広く知らせることができなかったところもあった。

運営に当たる市町村職員などが、あらかじめ避難所の運営ガイドラインをよく知り、避難所を設営する訓練が行われるように、避難所運営ガイドラインを、より分かりやすく実用的なものにすみやかに見直すとともに、市町村に対する講習会などを行う。

(3)生活環境の改善160530jiei-2_R.jpg

jsannkaku_R.jpg初期段階では、水や食料の確保が一番の関心事となるが、時間がたって避難所での生活が安定してくると、被災者の要望は避難所の環境改善に向かう。

【自衛隊への評価】

jmaru_R.jpg自衛隊がすばやく生活を支援する活動を始め、食事や風呂がすぐに提供された。さまざまな資格を持ち、地域に根付いた即応予備自衛官を招集し、活動を始めたことでさらに環境が良くなった。即応予備自衛官や予備自衛官をより早くから活用すべき。

【警察への評価】

jmaru_R.jpg女性警察官などが地震の発生当初から避難所を訪ねて対応にあたったことで、女性の被災者をはじめとする被災者の細かな要望をスムーズにつかめるようになった。

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【プライバシーの確保】

jsannkaku_R.jpgパーテーション(間仕切り)の導入が求められたが、一方で配慮が必要な人の体調がつかみにくくなるなど、問題点もある。また、女性のために更衣室や授乳室等の設置も求められたが、避難所の開設後にスペースを確保するのは難しい場合もある。

避難所の施設利用計画の策定に女性も参加するなど、市町村が策定段階で留意すべき事項、参考とすべき事例等を整理し、周知する。

【福祉避難所】

jbatu_R.jpg高齢者、障害者等に対し、適切なケアを提供できるように福祉避難所が設けられた。しかし、被災地での認知度が低く、配慮が必要な人以外の被災者も多数避難してきたことから、物資の不足や介護職員等の体制確保に支障が生じ、特性を十分に発揮できなかった。

市町村の職員をはじめ関係者に対して速やかに福祉避難所に関する周知徹底を図り、福祉施設などの被災情報や必要度がつかめるよう、情報伝達のルートを事前に整備しておく。

【ペット問題】

jbatu_R.jpgペットを避難所に同行することは許されたが、避難所内での取り扱いが課題となった。公衆衛生上の観点、近隣トラブルの観点などからは別居が必要となる一方、ペットは心の支えとなっており、ペットを切り離した避難を考えることも難しい。今回、避難所内でペットをどこまで受け入れるかなどの取り扱いが周知されておらず、対応に苦慮した例も見られた。

避難所内におけるペットの取り扱いについては、混乱を防ぐために一定の考え方や留意点、様々な事例等をまとめて周知する。

【情報提供】

jbatu_R.jpg被災者に対する情報提供は、避難所の実情に沿って壁に新聞を張り出す形で行われ、政府から被災者に情報を伝えるため活用された。ただ、情報量が多く、新しい情報に更新されたこともわかりにくかったため、きちんと被災者に伝わらなかったこともあった。

避難所での情報提供のあり方については、新着情報が優先され、常に目立つ位置に掲載されるようにすることなどを避難所運営ガイドラインに示す。

【生活環境の改善に向けた課題】160528gakuendai_R.jpg

jsannkaku_R.jpg避難所の開設から時間がたつにつれ、生活環境に対する問題点が意識されるようになった。施設の利用や、支援物資や人が動くためのルート(動線)の確保などについて事前に気配りしておけば、もう少し効率的に運営できた場合もあった。

jsannkaku_R.jpg真夏日など暑さ対策が課題となり、空調設備の必要性が改めてわかった。


jsannkaku_R.jpg避難者のさらなる環境改善のためには、避難所の再編・統合への備えが必要。再編・統合先の避難所などをなるべく早く修繕しておく。同時に、自宅での生活ができるように生活インフラの復旧などを進めることも重要。上下水道の復旧は、家屋や敷地までの管路復旧は順調だったが、敷地の中の管路の被災により水道やトイレの使用再開が遅れた例もあった。敷地内の管路の耐震化も重要。被災者に対し、管路の状態を確認する方法や、復旧にあたる事業者への連絡方法などを情報提供し、情報提供の方法も改善して効果があった。

jsannkaku_R.jpg熊本地震では、刑務所や研修所など国の施設も避難所として活用された。これらの施設は、備蓄があったことや施設の立地等の個別の事情もあり、結果的には被災者の受け入れができた。

事前に避難所の施設利用計画を作り、その中で支援物資の置き場所や予備スペースの確保をはっきりしておくよう、速やかに市町村に周知する。避難所となる国の施設を事前に登録しておく。

(4)避難所以外の避難形態

【車中泊】syacyuuhaku_R.jpg

jsannkaku_R.jpg避難所に身を寄せず、日中は自宅で生活しても夜間は近くの駐車場などに車中泊する被災者が多く見られた。


jsannkaku_R.jpg車中泊はエコノミークラス症候群の要因にもなるため、十分なケアが必要。車中泊は、地震への恐怖やプライバシーの確保、自宅の防犯等さまざまな観点から選ばれており、今後の災害でも生じると考えられる。車中泊で留意すべき事項を周知することが必要。車中泊を解消しやすくするため、より安全な避難所の確保、避難所の生活環境の改善、地区の治安確保等を図ることも効果がある。

【テント泊】mashikitento_R.jpg

jsannkaku_R.jpgテントについては、車中泊の課題を解消し、かつ、プライバシーが確保されるなど、避難初期においては効果があった。ただし、降雨や気温上昇には弱く、夏季の避難等では利用できないと思われる。冬季についても同様であろう。

jsannkaku_R.jpgまた、今回の初動対応では、自衛隊が保有するテントを被災自治体に貸与したケースがあり、生活環境の改善に一定の効果があったものの、テント居住がはじまるとプライバシーの観点から、テントの中は自治体職員等が確認することが困難となることから、その管理責任等について、自治体側の不安感が残った場合があった。

災害が発生する季節によって注意点が異なることも踏まえつつ、車中泊、テント泊等の避難形態に応じて必要となる対策を、速やかに避難所運営ガイドラインに示す。

(5)体制整備

【市町村の役割】

jsannkaku_R.jpg避難所運営を適切に行うことは、被災者の生活支援の第一に考えるべきことで、市町村職員の負担を減らしてマンパワーを確保し、復旧を全体として進める上でも重要。

避難所の運営は、被災地の地理や住民、地域の諸事情に最も詳しい市町村が主体的に担うべきであるが、一方で、その負担が大きいのも事実。被災市町村が、経験のある他の自治体やNPO、民間企業、団体等の支援を積極的に受け入れつつ、早期に避難者による自主的な運営ができるよう、速やかに避難所運営ガイドライン、様々な取り組みの事例集を作り、市町村に周知する。

【学校関係者との連携】

避難所の多くが学校に開設されたことから、初期段階では教職員に大きな役割を担ってもらった。

学校再開も見据え、初期段階から災害対応の担当職員が学校関係者とも連携を円滑に進めておく。

【NPOとの連携等】hinanjo_R.jpg

jsannkaku_R.jpg避難所の運営ではNPOとの連携が効果を上げた一方、職員がNPOとの付き合いに慣れておらず、混乱が生じた場合があった。


jsannkaku_R.jpgNPOとの情報共有は行われたが、多数の避難所の刻々と変化する情報が十分に共有されず、避難所の要望をNPO側がつかめず、支援が行き届かなかった場合があった。


jbatu_R.jpg被災者の衛生管理等を図るため、多くの医療チームや保健師チーム等が被災地に入り、被災者のケアを行ったが、それらの情報が共有されなかった場合があった。

職員とNPO等との連携を強化するため、速やかに担当者同士の交流のための場づくりを行う。被災地に派遣される医療チームや保健師チーム等を管理する機能をつくる。

【自主運営】

jsannkaku_R.jpg避難所の運営では自主運営をもっと取り入れるべき。発災当初は難しくても、できる限り速やかに自主運営を行ってもらえるよう、平時から地区の区長などに加わってもらい、現地レベルで避難所運営のあり方を検討しておくべき。避難者が積極的に避難所の運営に協力することがいかに重要か、国民に広く周知徹底する。

避難所運営を担う専門家の育成、登録等を行うために必要な仕組みを作る。

5.物資輸送

(1)支援物資の輸送システム

【プッシュ型物資輸送】160419oonishi-2_R.jpg

jmaru_R.jpg被災直後の支援物資の輸送では、被災地からの要請を待って行う「プル(引っ張る)型」ではなく、必要と見込まれる物資を国から被災地に送り込む「プッシュ(押し込む)型」を大規模に行った。これにより発災直後の自治体の負担を軽くしながら、水、食料といった主要物資の不足感がなくなり、被災者に安心感を与えることができた。

jmaru_R.jpgプッシュ型輸送は一度に大量の物資を調達する必要があり、関東地方や中部地方からも食料等を輸送した。被災地には自衛隊の高遊原分屯地(熊本飛行場)があり、物資の送り出し地としては埼玉県の入間航空基地や愛知県の小牧航空基地があったため、自衛隊の航空輸送も活用できた。今後、自衛隊の航空輸送のさらなる活用も視野に入れるべき。

プッシュ型の物資輸送は、東日本大震災の反省を受けて、熊本地震で初めて本格的に行われた。今回分かった課題に対処するため、関係マニュアルなどを全般的に見直す。

【ラストワンマイル】

jbatu_R.jpg国が事前に想定していたのは広域物流拠点への搬入までで、そこから先の避難所までの「ラストワンマイル(最後のごく短い距離の輸送)」については具体的な計画がなかった。個々の避難所までは市町村が届けてくれると期待するのは、特に被害の大きかった市町村には難しかった。被災市町村も避難所までの物資輸送のための計画がなかった。このため、被災市町村の物流拠点から先の物資輸送は、運送会社のほかに自衛隊やNPOが担当することになった。

川上から川下まで、自衛隊も含めた国、都道府県、市町村、物流事業者等がその特性を最大限に発揮して協働できるよう、WGで検討した上で、災害時の物資輸送における役割分担を関係マニュアル等の中で明確化する。

【物資拠点】

jbatu_R.jpg最初に広域物流拠点を設けた佐賀県鳥栖では、物流拠点の営業時間が限られていた日があり、時間外に到着したトラックが場外で待機せざるを得なかった。


jsannkaku_R.jpg物流拠点は、自衛隊との連携を考えて、ヘリコプターによる航空輸送もできるよう、大型ヘリが離・発着できる自衛隊基地と隣接する施設や、大型輸送ヘリが離発着できる施設を優先すべき。



jsannkaku_R.jpg物流拠点では、大量に運び込まれる物資の仕分けなどに多くの人員が必要となることに計画段階から頭に入れておくべき。

災害時に常時利用可能な拠点を速やかにリストアップする。耐震性の確保、非常電源の準備など、施設を持つ事業者の負担が必要となるため、事業者の協力が得られる仕組みを整備する。

【支援物資】

jsannkaku_R.jpg被災地で必要とされる物資は刻々と変化していく。被災直後は水・食料がまず必要とされた。特に食料は被災後数日はおにぎりやパンなど直ちに食べられるものが求められ、数日するとニーズが多様化した。避難者は不安が高じて支給された食料をため込む傾向があったため、衛生上の観点からも、日持ちする食料を準備する必要があった。

jsannkaku_R.jpgある程度状況が落ち着き、水・食料が足りてくると、避難者のニーズは生活関連物資に移る。生活関連物資のうち数が少なくてもいいものは、国が一括して受発注するより、きめ細かく現地で調達するのが適当だった。


jbatu_R.jpg要望が移り、時期を外してしまった支援物資は消費されずに無駄になるだけでなく、物資輸送拠点や避難所に積み上げられ、効率的な運営を阻害してしまった。


jsannkaku_R.jpg例えば簡易トイレは被災直後には必要だが、時間が経つにつれいらなくなる。被災初期に必要な物資や大量に必要な物資は各地域で備蓄しておくべき。


jsannkaku_R.jpg全国から善意の支援物資が被災地に届けられたが、必ずしも現地の要望にあわなかったり、目前の災害対応に追われて現地での受け入れが行き届かなかったりした場合も多く、事前に調整するシステムを検討すべき。

支援物資は季節なども考慮した上で、必要な物資のリストや必要な数量の算出方法、物資管理を適切・効率的に行う方法などを関係マニュアルなどに記す。

【備蓄の必要性】

jsannkaku_R.jpg発災後に発注した食料が工場から出荷されるまでには日時がかかり、被災直後に大量の支援物資をすばやく配送することは難しい。災害発生後、少なくとも3日程度は外部からの配送がなくても必要な物資が足らなくならないように、自治体による備蓄状況を常日ごろからチェックするほか、各家庭でも最低限の水・食料、携帯トイレ等を備蓄しておくべき。家庭における備蓄が進むよう、備蓄に適した食品開発の推進が必要。

水・食料等の備蓄の必要性については、防災推進国民会議のネットワークを活用する等、様々な機会を活用して啓発活動を速やかに徹底する。

(2)輸送状況等の把握

【初期の状況把握】

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jbatu_R.jpg被災後一定期間はプッシュ型の物資輸送を行ったが、どのような物資が発注されたか、発送されたのか、今どこまで来ているか、在庫状況はどうかといった発注・輸送状況をつかむ仕組みがなく、物流拠点で無駄な待機時間があるかと思えば、夜間に急に大量の物資が搬入されるといった混乱が生じた。災害が発生してからでは、輸送状況や在庫状況をリアルタイムで知るシステムを作るのは難しく、事前に運送会社と連携した取り組みが欠かせない。

jbatu_R.jpg災害発生当初、国は広域物流拠点に搬入すればいいと考え、発送したかどうかの情報しかつかんでいなかったため、物流が滞った場合に素早い対策がとれなかった面がある。支援物資については官民が連携して、到着時点の情報も管理すべき。

国や都道府県、市町村、メーカー、運送会社が、発注状況や製造、輸送の状況などを共有できるようにマニュアルなどを整備し、それを受けて物流情報管理システムを速やかに作り始め、災害発生時に関係機関がシステムを使いこなせるよう訓練を行う。

【タブレットの導入】

jmaru_R.jpg必要な物資が何かを知り、調達・配送したかどうかをチェックできるタブレットを使ったシステムを導入してからはリアルタイムに避難所ごとに必要なものをつかめるようになり、手間と時間を大幅に減らすことができた。避難所や福祉施設、病院等の電気・ガスなどのインフラ状況の把握にも有効と考える。

jsannkaku_R.jpg一方、新たにタブレットを導入したため、機器配布や利用方法の説明などに約2日かかった。最初からシステムが導入されていればよかった。

通信網が被災した場合の対応も含めて、被災後の迅速な導入・稼働が可能となるよう、今回導入したシステムをもとに、避難所等のニーズ把握のためのアプリやWebシステム等の開発・活用を図る。速やかに自治体が事業者と協定を結び、共同訓練を行うよう支援する。

(3)事業者などとの連携

【事前協定】

jsannkaku_R.jpg支援物資の輸送では、各場面で民間企業の協力が不可欠だった。例えば、避難所までの輸送は自衛隊の協力も得たものの、物流システム全体の運営は運送会社のノウハウ提供などがなければ難しかった。日ごろから運送会社と協定を結んで人や器具の確保について訓練などをしておくべき。

jsannkaku_R.jpg食料メーカーは自社トラックなど自前の輸送力を持っており、そのシステムをそのまま活用する方が食料を避難所に素早く輸送できる場合があった。


jsannkaku_R.jpg市町村がつかんでいない小規模の避難所向けの物資輸送には、NPOが活躍した。こうしたきめ細かい対応は、民間の自発的な活動に支えられるところが大きく、日ごろから連携を強化しておくべき。

日ごろから運送会社やメーカーと協定を結び、必要な人や器具の確保ができるのか確認する訓練を行う。災害時の物資輸送に従事した企業やNPOの協力に報いることができるよう、表彰のあり方について検討する。

【コンビニ等の小売事業者】

jmaru_R.jpg被災地で物資は十分に足りていると感じられたのは、コンビニが早期に営業を再開し、商品の量が十分に確保できたことが大きかった。運搬車両の緊急交通路の指定は行わなかったが、道路の管理者が一般車両の通行ができない区間について、コンビニの運搬車両の通行を認めたことが役立った。

コンビニの運搬車両を一般車両と別扱いにして、できるだけ早期に緊急の通行が認められるように必要な手続きをすみやかに整理する。

(4)物資輸送のための体制160708asohukkou1_R.jpg

【指揮系統】

jbatu_R.jpg非常災害対策本部では物資調達・輸送班(C4班)が物資の調達、輸送を指揮し、現地対策本部には自治体と現地調整を行うチームが設けられていた。しかし、実際の物資の調達では、担当省庁を含めた意思決定ルートが複雑かつ不明確で、たびたび情報が錯綜し、意思決定が遅くなった。

jbatu_R.jpg被災地からの必要物資に関する要請が、被災市町村から現地対策本部に伝えられたり、直接県に伝えられたりしたため、要請が漏れたり重複したりして、しばしば混乱した。


jsannkaku_R.jpg避難所への自衛隊の輸送活動は評価されているが、一方で、現地対策本部と自衛隊との連携が不十分な場合があった。

物資の調達や輸送について、すばやく意思決定ができるよう、自衛隊や関係機関による輸送全般を統括する機能も含め、役割分担をはっきりさせて指示や伝達ルートを簡素にするなどの見直しをすみやかに見直す。避難所、現地対策本部、都道府県が情報を共有できるよう、アプリやWebシステムを活用する。現地対策本部と自衛隊の現地指揮所との間にリエゾン(連絡役)を派遣するなど、密接な情報共有の方法をすみやかに作り上げる。

【費用負担】

jbatu_R.jpg被災地で物資の調達が必要かどうかを判断するのに、調達する物資の費用をだれが負担するかがはっきりせず、自治体が費用がかかることを心配して要請を取り下げたり、自治体が要望してきた物資を国が発注できなかったりするなど、国と自治体双方の判断が遅れた場合があった。

災害救助法の適用や予備費を使用した応急、緊急の支援ができる物資を事前にリスト化してすみやかにみんなが知っておく。災害救助法が適用できるかどうかがはっきりしない物資は、当初から高いレベルですばやく判断できるよう、あるいは緊急に現地で判断できる範囲をあらかじめ決めておくなど、具体的な方法を速やかに示す。

6.その他の気づきなど

(1)被災者生活支援チームについて

熊本地震の初動対応では、現地の対策本部に幹部職員を派遣してすばやい意思決定をすると同時に、東京でも被災者生活支援チームを設け、毎日関係する省庁の局長や課長が集まって対応を調整し、決めていった。

被災者生活支援チームは本震発生翌日の4月17日午後5時に設けられ、その下に連絡調整グループが設置された。18日午前10時に最初の連絡調整グループ会議が開かれたのを皮切りに、途中からは防災担当大臣なども参加し、約1か月にわたってほぼ毎日開かれた。

連絡調整グループ会議では課題と対応状況の確認、次の課題は何か、追加の対応をどうするかの検討・指示などがリアルタイムで行われ、政府としてのすばやい情報の共有と調整、判断に極めて大きな役割を果たした。

連絡調整グループ会議は、

・内閣府防災、現地対策本部の人を増やすなど体制整備にかかわるバックアップ

・内閣府防災の総合調整機能の補完(例えば、仮設トイレとトイレットペーパー、手洗い用水タンクなどの確保は経済産業省、バキュームの手配は環境省、現地までトイレを輸送・設置するのは自衛隊あるいは民間なら国土交通省、被災地のどこに、いくつ、いつ、設置するのがベストかの判断は現地対策本部、というそれぞれの役割の総合調整)

・現地対策本部とのホットラインの維持と内閣府防災、関係府省庁への指示連絡(例えば、避難されている方々や避難所となっている学校の混乱を防ぐ観点から、文部科学省から被災自治体・教育委員会あてに、避難所として使われている学校の扱いについて通知を出すようホットラインで要請され、文部科学省に伝え、文科省からすぐ通知が出された、など)

・ツイッター活用など部分的な内閣府防災の仕事の一時的な肩代わり

などを行った。

今後、大災害が発生した時も、災害の状況に応じて、すばやく効果的に初動対応を進めるため、政府全体として、支援策の企画・調整の司令塔を担う体制を東京ですみやかに稼働させる。

(2)災害対応体制の強化

内閣府防災は被災地で現地対策本部を運営しながら、東京でも政府全体の調整などを行った。しかし、指定職クラスの幹部が限られたり、派遣された職員への支援が十分でなかったりして、対応に支障をきたす場合があった。

内閣府防災は、さらに災害対応機能の強化を図る必要がある。

政府の災害対応の要となる内閣府防災の機能を強化し、海外の事例も参考に、防災対応を専門とする人材を養成・派遣する仕組み、国が持つさまざまなものを機動的・効果的に配分する仕組みの導入、民間企業やNPOとの連携について検討する。

(3)インフラの復旧

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電力や通信、ガス、水道などの生活インフラは比較的早く復旧した。被災者支援をスムーズに行う上で、これらのインフラ復旧が果たした役割は大きい。インフラの復旧は、被災者が自宅で暮らせるようになることを通じて、避難所の再編・集約や、支援物資の減少によるスムーズな輸送にも役立つ。橋が落ちたり、電柱が倒えたりすることで物資輸送や復旧工事が妨げられないよう、緊急輸送に使う道路は耐震化し、電柱をなくすなどの対応を順次進め、日ごろからインフラの耐震化を進める。

被災した時は、企業がインフラの復旧見通しを早く示すことが重要。政府・自治体は、インフラを管理する者が事前に公表した見通しを達成できないことも踏まえるなど、企業が復旧の見通しを示しやすいように努めることが重要。市町村は、優先的にインフラを復旧すべき避難所、病院、福祉施設などについて事前にリストを作っておくべき。

通信インフラは災害に対応するには不可欠。熊本地震では通信インフラが甚大な被害を受けなかったため、初動対応をすばやくスムーズに行うことができた。しかし、通信インフラがいつも被災を避けられるわけではなく、利用できなくなる場合も考えた対応を準備しておくべき。

道路には施設管理用のカメラが設置されている場合が多い。これらの画像は災害時には、被害状況をつかむための貴重な情報になる。熊本地震では一部の管理用カメラや通信インフラが被災して利用できなくなった。カメラ設備の一部が被災して使えなくなっても、情報を補うことができるよう、複数のカメラから情報を得られるようにしておくことが望ましい。

優先的にインフラを復旧すべき施設のリストを作り、すみやかに関係者の間で共有する。通信インフラが利用できない場合に備え、防災担当部局は衛星電話を持つようにする。管理カメラから得られる情報を災害対応にいかすため、防災担当部局は施設管理者との連携をすみやかに強化する。

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