化血研 不正と迷走

「常軌逸した隠ぺい体質」 厚労相は"解体"迫る 

kaketsu2_R.jpg化血研(化学及血清療法研究所)は、旧熊本医科大学(現在の熊本大学医学部)の研究所を母体に、1945年に設立された一般財団法人です。インフルエンザや日本脳炎、肝炎などを防ぐワクチンや、人の血液を原料にした血液製剤などを製造しており、約1900人の従業員を抱え、売上高475億円(2015年3月期)にのぼる熊本有数の大会社です(写真は製造風景、化血研提供)。

医薬品は法律で、医薬品を監督する厚生労働省が、効き目があり、安全と認めた方法でつくることになっています。しかし、化血研は血液製剤を作る際に、勝手に血を固まりにくくするヘパリンという物質を加えたり、殺菌する時間を変えたりしていました。

 厚労省は医薬品メーカーが製造方法をきちん守っているか定期的に調べていますが、化血研は国が査察に来たときには、うその製造記録を見せてごまかし続けてきました。

こうした不正は1974年(昭和49年)ごろから始まり、40年以上続けられていました。その間に内部からは「これ以上不正を続けてはいけない」という声が出た時もありましたが、結局うやむやになってしまったそうです。

kaketsu3_R.jpg15.jpg薬害エイズの教訓生きず

化血研は1980年代に、熱を加えずに作った血液製剤を使用した患者さんがエイズウイルスに感染した薬害エイズ事件をめぐり、被告企業の1つとして訴えられていました(写真は当時の抗議の模様)。この裁判は1996年に和解が成立しましたが、化血研は和解にあわせて「安全な医薬品を供給する義務を深く自覚し、同じことを二度と繰り返さない」と誓っていました。しかし、その誓いの裏で、当時も不正は続けられていました。

化血研で不正が大がかりに行われた時期は、薬害エイズ事件を受けて、製薬メーカー各社が血液製剤を非加熱から加熱に切り替えていた時期と重なります。国の要請にしたがって加熱製剤を増産するためなら、製造方法を少しくらい変えてもいいだろうと考えたのかもしれません。しかし、最初に始めた不正をごまかすために次々にごまかしやでっちあげを重ねた結果、不正はやめることができなくなってしまいました。結局、不正の連鎖は昨年5月に厚労省に内部からの告発が寄せられて発覚するまで続き、薬害エイズ問題の教訓が生かされることはありませんでした。

kaketsu4_R.jpg15.jpg明らかになった隠ぺいの手口とは

不正を調べた第三者で作る委員会は不正の経緯などについて報告書(写真左)をまとめ、化血研は2015年12月に公表しました。そこには化血研が組織ぐるみで不正を隠ぺいしていた驚くべき手口を詳しく記しています。

国の承認内容に沿ったうその記録部分にはゴシック体を、査察の際に隠す部分は明朝体で記載し、国の査察に対して見せる内容を変えていました(下写真左)。公にはできない本当の製造記録については、「2.5ページ」などとして記録にはさんでおき、査察の際はこの部分を引き抜いていました。(同中)過去の製造記録を書き直す際には紙を古く見せるために紫外線をあて、承認欄には筆跡が似ている人にサインさせたりしていました(同右)。国の承認に沿った想定問答集を作成し、査察に対する予行演習まで行っていたそうです。

隠ぺい工作が本格的に行われた時期は、薬害エイズ事件の反省から、薬害の原因となった非加熱製剤を加熱製剤に切り替える時期と重なります。歴代の理事長ら幹部は隠ぺいを認識しながら放置していました。第三者委員会は報告書のなかで、「化血研には常軌を逸した隠ぺい体質が根付いていたと言わざるを得ない。問題の根幹は研究者のおごり」と断罪しています。

化血研の宮本誠二理事長は、「そういうことがあるというのは十分認識しておりました。化血研の風土と言いますか、そういう事に対して積極的に対応してこなかった」と、組織ぐるみの隠ぺいがあったことを認めました。

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15.jpg見えぬ再生の道筋

このほかに、化血研は動物用のワクチンを国の承認とは異なる方法で製造し、猛毒のボツリヌス毒素を必要な届けを出さずに車で運んでいたことも明らかになりました。

kaketsu5_R.jpg製造したワクチンや血液製剤などの安全性には問題はないとされていますが、子どもにワクチンを接種するお母さんなどからは不安の声が出ています。一方で化血研でしか作れない医薬品も多く、厚労省の処分で製造が止まることを心配する医療関係者もいます。

塩崎厚生労働相は「医薬品の製造販売の許可取り消しに相当する悪質な行為だ」と化血研を厳しく批判し、解体も含む抜本的な組織の見直しを求めました。しかし、厚労省が主導する形で進めてきた大手製薬メーカー、アステラス製薬との事業譲渡交渉は破談に終わり、化血研再生の道筋はまだ見えません。

2016年6月には組織の体制見直しを図るために、近畿大薬学総合研究所長だった早川堯夫氏を理事長に迎えるなど体制を一新しましたが、あくまで他の機関への事業譲渡を求める厚労省と、単独での生き残りを図る化血研の対立が激化し、2017年5月には早川理事長が就任後1年足らずで退任するなど、経営の迷走が続いています。

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