くまもと温故知新

災害による消滅を防ぐ文化財レスキュー 浮上した課題とは   2016年9月6日放送

160907RESUKYUA.jpg熊本地震で被災した寺や蔵には、多くの古文書や美術品が収められていました。こうした文化財を地震の被害から救い出す「文化財レスキュー」が進んでいます。

400年以上の歴史がある熊本市中央区の善教寺。今年7月、博物館の学芸員や歴史の研究者などがこの寺に集まりました。寺に残された古文書などを救い出す「文化財レスキュー」を行うためです。寺の本堂は雨漏りがひどく、あちこちにカビやキノコが生えています。本藤の棚は4月の地震の後、手つかずのまま。レスキュー隊員たちは、水に濡れた書籍を丁寧に取り出していきます。この日は古文書や経典、掛け軸など段ボールおよそ50箱分の文化財を救出しました。

国や県の指定文化財は保護の対象ですが、指定を受けていない文化財は災害の時、保護する予算がありません。放っておけば捨てられ、消滅する恐れがあります。

160907inaba_R.jpg地震の後、すぐにレスキュー活動を始めたのは、熊本大学の稲葉継陽教授(写真左)です。熊大には、昔の庄屋の蔵からレスキューした文化財が保管されていました。どれも熊本の庶民の思いを今に伝える貴重な史料です。

稲葉教授は「この庄屋さんが村の人たちから特別税を徴収して藩に収めた。着服や不正があると大きな問題になるので、その関係の書類をわざわざ箱を作って管理したのです」と説明し、「熊本の歴史文化は加藤清正だけが作ったわけではありません。地域の基礎の部分をちゃんと明らかにするのはこういう史料しかない。それが災害で失われてしまったら、もう永遠にわからなくなってしまう」とレスキューの意義を説明します。

宇城市にある県博物館ネットワークセンターには、これまで救い出された500件以上の文化財が保管されています。こうした施設に一定期間保管された後、所有者に返されますが、ある問題が浮上しています。引き取り手がいないのです。

「東日本大震災の時にも膨大な史料レスキューが行われましたが、現在でも100件以上の史料が返されないまま保管されているというふうに聞きます」と稲葉教授。文化財を個人で管理し続ける負担の大きさは震災の前から指摘されていました。「そういった古文書などを公的に保管して、管理して、活用する機関、組織、そういうものが熊本でも作られなきゃいけない。(文化財レスキューが)そのひとつのきっかけになればいいなと思っています」

地震の後には大雨や台風もありました。建物のなかから文化財を救出するのは時間との戦いでもあります。人々の暮らしの歴史を今に伝える文化財。地域の宝をいかに保管し残していくか。稲葉教授はその手始めとして、学生たちと目録を作り、古文書などを読み解く活動を始める予定です。

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