ハンセン病 差別と偏見との戦い

恵楓園の絵画 後世に残す      2016年3月22日放送  

菊池恵楓園には入所者たちが描いた400点を超える絵画があります。それらの絵画を後世に残そうと活動する女性の取り組みを取材しました。

160322KAIGA.png

「わー、これも初めて見た。きれいか、かわいか桜ですね」

菊池恵楓園の入所者たちが描いた400点を超える絵画のタイトルや寸法を調べているのは、藏座(ぞうざ)江美さん(45)=写真左=とボランティアのスタッフです。藏座さんたちは絵画を後世に残すため、全容を把握する活動を始めました。

2015年まで熊本市現代美術館の学芸員だった藏座さんは、現代美術館で菊池恵楓園の絵画クラブ「金陽会」の絵の展覧会を担当してきました。その当時から藏座さんは「全国に13か所ある療養所でこれだけの絵が残っているというのは本当に素晴らしいこと。絵のバックストーリーというかそういうものを同時に伝えていかないといけないなと、年々思いが強くなっている」と話していました。

藏座さんは2015年、金陽会のメンバーの中でただひとり活動を続けている吉山安彦さんの個展を企画しました。吉山さんは17歳の時に国の強制隔離政策によって菊池恵楓園に入所させられました。吉山さんが生きることに希望を持つために始めたのが、絵を描くことでした。吉山さんが絵に込めてきた故郷への思いや、誰もが見向きもしないものにも向けてきた眼差し。その絵は人々に力を与えてきました。

160322yosiyama.png

金陽会では多い時は10人以上の入所者たちが活動していましたが、ほとんどのメンバーは亡くなり、作品だけが恵楓園に残されています。故郷への思い、強制隔離という理不尽な仕打ちに対する怒りや悲しみ、様々な思いを入所者たちがぶつけてきた絵画は、引き取り手もおらず、故郷に帰ることもありません。

吉山さんは「(仲間たちの作品は)園内の宝物と思っている。毎日のように見学に来てくださる人に、ちょっと見てもらえたらいいなと思う」とずっと考えていました。

絵画は適切な保存をしなければ劣化してしまいます。入所者たちの生きた証を後世に残したい。その思いで絵を調べ直す活動を始めた藏座さんたちは、入所者たちの絵画をユネスコの世界記憶遺産に申請することや、絵画を展示する場所をつくることなどを検討しています。

藏座さんは「絵を見て感じていただくことで、教科書で勉強するような差別の問題とか、ハンセン病の今までの歴史だったりということよりも、1枚の絵が饒舌に語ってくれる、そこから感じてもらったことの方がより深く残る、というのが私自身が経験していること。それを本当に皆さんにお伝えしたい」と話しています。

エントリー