日替わりコラム

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 実は、<MCMS_KKT_EIJI2>には未完の本がある。
 ペンを手にするまでに半年。書き始めてから書き終わるまでに3年近くかかった超大作だ。(超大作というのは冗談で、ほんとは短い作品だけど、かかった日数は本当の話)

 もう4年ほど前になるだろうか、北海道のある出版社から「本を書いてみませんか?」と、夫に声がかかった時、夫は「えっ、私ですか?妻の間違いでは?」と 聞き返したらしい。
 夫は文章を書くのが得意ではない。いや、むしろ苦手な方だ。「だから、できませんって、断ったんだけどね。」 
夫は続けて言った。出版社の女性が、テレビでうちの家族を見て、いい家族だなぁと思って下さったこと。特に、父親である夫が、この家族の中で、どんな考えをもって子育てに関わり、妻を支えているんだろう?と、興味を持たれたこと。
・・・夫の話を聞きながら思った。「<MCMS_KKT_NOBUKO>も知りたい!」と。
夫はあまりしゃべる方ではない。
20年以上一緒に暮らしていてもわからないことだっていっぱいある。それを知ることができるチャンスだ!

「書いてみたら?」と勧めたら、夫は、「無理だよ」と即答した。
「やるだけやってみたら?」
「書けないよ」
「でも、すごいチャンスだよ!」
「・・・」
「自分のこれまでの生き方とか、大切な思い出とか、自分の考えてることとかを、書き残すことができるんだよ!こんな機会がなかったら、英治さん、一生書くことなんかないでしょう?」
「それはそうだけど・・」
「本を出したいって思ってても、簡単にできることじゃないのに、向こうから声をかけてもらえるなんて、滅多にないことだよ!」
「でも、本を出したいなんて、思ったこともないし・・」
「私は自分の本を出すことができて、ほんっとによかったって思ってるよ。売れるとか売れないとかじゃなくて、一冊の本が書けたこと自体が、ものすごく幸せなことなの。一生の宝物になるよ!」
「でもねぇ・・」
「頑張ってみたら?きっと出来るよ!」
「だけどねぇ・・書くのは苦手だし・・やっぱり無理だよ」
「手伝うから!」
「ほんと?」
「長い文章じゃなくてもいいから。箇条書きでも、なんでもいいから、とにかく思いつくままに書いてみて。私、手伝うから!」
「やれるかなぁ」
「きっと出来るよ!」
       
 そんな会話を何度か交わして、ついにスタートした夫の執筆活動!
 ところが、私の予想以上に、夫の筆は遅々として進まず、3ヶ月、半年、と時間だけが過ぎていく。
 「待ちますよ」
 電話の向こうで、出版社の女性は、明るく言って下さった。 「私もぜひ読んでみたいので、出来るまで待ちますよ」
 ああ、なんていい人!

 夫はノートを持ち歩き、思いつけばペンを取って、子ども時代の思い出から始めて、今に至るまでの人生を書き綴っていった。
 ひとつのエピソードを書き上げる度に、「できたよ」と、私に見せてくれる。
 私は、夫の誤字脱字をチェックしながら、原稿用紙に清書する。
 毎日書く時もあれば、何ヶ月も何も書かない時もある。 夫のペースで、少しずつ原稿用紙が増えていった。
 私は、夫の書いた文章を読むのが本当に好きだった。
 へぇ!そんなことがあったんだ!
 えっ、ほんとはそう思ってたの?
 ふぅん、そういうことだったのか・・
 読むたびに驚きがあり、発見があって、清書しながら、夫の飾らない文章に涙することもしばしばだった。私にとって、この経験は、私が結婚した岸英治という人はこういう人だったんだ、と改めて認識することのできた、特別な機会となった。

 二年が過ぎ、三年が過ぎ、本当に出来あがるのかしら・・と、不安になることも、正直あったけれど、今年、夫の文章は、ついに本になるらしい。

 ずっと、ずっと、待っていて下さった柏艪舎の可知さんに、ただただ感謝。
 素敵な本ができますように。

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