日替わりコラム

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施設ではマスクの着用が義務付けられている。
インフルエンザも流行っているし、当然のことだ。
でも、職員全員が顔の半分以上も覆うような大きなマスクをしている姿は利用者の方々にとってどんなふうに映るのだろう?と、時々思う。
コミュニケーションは大切だというけれど、コミュニケーションは言葉だけではなく、表情も、声のトーンも、全部含めてのもの。
マスクをすることで声が籠って聞き取りにくくなるし、マスクの上の目だけしか見えない状態ではコミュニケーションをとることが難しく思えてならない。
とはいっても、ちょっとの風邪でも命にかかわるような高齢者の方々を守るためにはマスクは必需品だ。健康・命を守ることが最優先で、そのためにマスクが欠かせないことはよくよく理解できる。
だから、せめて、マスクの下で、笑顔全開!を心がけ、明るい元気な声で、利用者さんに声をかけている。

そうやって過ごしていたある日、利用者のお一人から声をかけられた。
「あたは綺麗かなぁ!(あなたは綺麗だねぇ!)」
思わず笑ってしまった。
綺麗、って、顔の半分以上はマスクなのに、ですか?(笑)
でも、その方は、<MCMS_KKT_NOBUKO2>を見ながら繰り返して言われる。「あたは、ほんなこつ、綺麗かなぁ(あなたは本当に綺麗だねぇ)」
そこでわたしは、「わたしの顔、こんな顔なんですよ!」と言って、一瞬マスクを外して見せた。
すると、その方は驚いたような顔で声をあげられた。「まぁ!美しか!」。
その瞬間、泣きそうになってしまった。
こんなわたしに、こんなシミとシワだらけの56歳のおばさんに、「まぁ!美しい!」と感嘆の声をあげてくれる人が他にいるだろうか?


訓練校で、繰り返し、繰り返し、繰り返し、耳にタコができるほど強調されたこと。
「尊厳を守る」。
実習しながら、その大切さを日々実感している。
80年、90年、100年の長きに渡って、夫に従い、子どもを育て、舅・姑に仕え、身を粉にして働き、一生懸命生きてこられた方々の、その人生を思う時、尊敬せずにはいられなくなるのだ。

認知症になったら何もわからなくなるのかと、勉強する前のわたしは思っていた。
物忘れがひどくなって、家族のこともわからなくなって、自分がやっていることもわからなくなって、感情も無くなってしまうのか、と。
でも、それは違っていた。
“心は生きている”。
認知症がかなり進んでも、嬉しい、悲しい、怖い、恥ずかしい、嫌だ、…といった感情は残っているのだそうだ。
だから、その方たちが、少しでも心安らかにすごせるように、わたしに何ができるだろう?と、毎日、毎日、考えている。



一日の実習が終わり、「また来ます!」と挨拶すると、利用者の方々が、「また来てはいよ!(また来てちょうだい!)」と笑顔で手を振ってくださった。


あぁ、この喜びはなんだろう!
利用者さんたちの笑顔と、「ありがとう」の言葉は、わたしにとって、最高のご褒美だ。

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