日替わりコラム

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高校生の頃だった。
<MCMS_KKT_NOBUKO>は、生まれつき足の不自由な女子高生と、丸一日一緒に過ごすことになった。

障がいのある人と一緒に過ごすのはその時が初めてだった私は、
初対面の彼女にどう接していいか分からなかったけれど、ただ、親切にしたい、と願っていた。

彼女が何かしようとする度に、私は、「大丈夫ですか?」と、声をかけた。
彼女が、立ち上がろうとするとき、ドアを開ける時、荷物を持つ時、歩くとき、
「大丈夫ですか?」「大丈夫ですか?」と、声をかけた。

そうやって半日ほど過ごしていたとき、彼女が、突然大声を出した。
「うるさいっ!」と。

私は、驚いて、声も出なかった。
彼女は言った。「大丈夫ですか、大丈夫ですか、って、何度も何度も言わないで!大丈夫なんだから!」

私は、もう、何も言えなくなって、気まずく重い空気がその場を支配した。

その時の経験が私の心から離れず、障がいのある人が怖くさえ思えるようになった。

数年後、今度はこんなことがあった。
その日私は友人と会う約束を作っていたのだが、
約束の場所に、友人は、車椅子に乗った自分の友達を連れて現れた。
苦手意識のあった私は、少し戸惑ってしまった。
が、その日、友人と、車いすの女の子との会話を聞いていて、驚いた。

車椅子の女の子は、車椅子を押している私の友人に向かって、いろんな注文をつける。
私の友人はそれに応えていたものの、途中で怒りだして言ったのだ。
「もうっ、わがままねっ」と。

車いすの女の子は、「あんたに車椅子の私の気持ちはわからんでしょ!」と言った。
すると、友人も言い返した。「あんたに、車椅子を押す私の気持ちはわからんでしょ!お互い様たい!」

本当に驚いた。

でも、そのすぐあとで、二人は何事もなかったかのように笑い合っている。
この二人がとてもいい関係だということは容易に理解できた。

なんか、すごいなぁ・・・。

後日、その友人と話す機会があった時、障がいを持った人のことがわからなくて少し恐れがある、ということを打ち明けると、友人は笑って言った。

「人のことなんて、誰にもわからんよ。もし同じ立場になったとしても、その人と同じ気持ちになるかどうか、わからんもん。人はみんな違うけんね。私は人のこと、わからんけど、人も私のことはわからん、て思う。人の気持ちなんて誰にもわからんとよ。でも、それでいいんじゃない?」

“人の気持ちなんて、誰にもわからない”

書いてみれば、投げやりな言葉のようにも思えるけれど、友人を見ていると、その言葉には続きがあることがよくわかる。

人の気持ちなんて、誰にもわからない。だから、思いやるのだ、と。

違いを知る。
違いを受け入れる。
わからない、と認める。
想像する。
イメージする。
・・・そうやって、
その人の立場に、出来る限りの思いを向けることはできる。
わかってあげよう、なんて、傲慢な気持ちを持ってはいけないんだ。
そうじゃなくて、その人から謙虚に学ぶんだ。
・・・そんな気持ちを強く持つことができた。


もう30年以上も前のことだけれど、その時友人が教えてくれたことは、今でもずっと私の心に残っている。

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