日替わりコラム

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前に書いた「嘘」という日記を読んで下さった方から、長いお手紙やメールをいただいたり、電話でお話をする機会が、今週続けて何度かあった。
子どもたちの嘘に心を痛めているお母さんたちは多いんだなぁ・・・と、今、改めて感じている。

そこで、今日はもう少しだけ、「嘘」について書いてみようと思う。

<MCMS_KKT_NOBUKO>の1冊目の本「子育てってたのしいよ!」の中にも書いているエピソードなのだけれど、
<MCMS_KKT_REIKA2>と<MCMS_KKT_MANAMI2>の嘘のことで、私には、鮮明に残っている 忘れられない思い出がある。


まだ娘たちが小学生だった頃のことだ。

その日、たまたま娘たちの部屋に入った私は、畳の1枚が水浸しになっていることに気づいた。
「なに、これ、どうしたの?」
私の声に、小学4年生の長女と、1年生の次女は、パっと、顔を見合せた。
「ねぇ、これ、どうしたの!」とまた聞いてみると、
娘たちは顔を見合わせたまま、バツが悪そうに黙っている。
「もうっ! どうしたの、って言ってるでしょ!こんなに畳がビチョビチョなんだよ!麗花ちゃん、何か こぼしたの?」
きつい口調で尋ねると、長女は一言、「知らない」と言った。
「知らない? まあちゃんは?」
次女の愛実は、助けを求めるように長女を見て、それから、同じように答えた。
「しらない・・・」

はぁ?
知らない、ですって?!

「知らない、ってことはないでしょ?ここはあなたたち二人の部屋なんだから!
ねぇ、麗花ちゃん、この畳、どうしてこんなに濡れてるの?」
「・・・知らない」
「じゃ、まあちゃんは?」
「・・・しらない」

頭に来る!
コップの水をこぼしたくらいだったら、こんなにも畳が濡れることはないはずだ。いったい何をしでかしたというのだろう?

何度聞いても、「しらない」という二人にすっかり腹を立てた私は、「もうっ!こんなに濡らして、 知らないわけないじゃないの!」と言いながら、濡れた畳のすぐ横のカー
テンを、勢いよく開いてみた。

すると――

そこにあったのは、転がった青いポリバケツ。
ピンクと赤のカーネーション。

あっ。

・・・そうか。

・・・・・・そういうことか。


その日は、「母の日」の前日だった。
娘たちは、ワクワクしながら、母の日のサプライズを考えてくれたに違いない。
二人は、お小遣いを持って、近くの店へ行き、カーネーションの花束を買ってきた。

バケツにたっぷり水を汲んで、その中に花を入れ、カーテンの後ろにこっそりと隠しておいたら、そのバケツが、何かの理由で倒れてしまって、中の水が畳にこぼれた――ということなのだろう。

散らばったカーネーションと、泣きそうな二人を前にして、私は何も言えなかった。



夜、<MCMS_KKT_EIJI2>にその出来事を話すと、夫は、「信じてやればよかったのに」と言った。
「知らないって麗花が言うのなら、あぁ、そうなの、って信じてやればいいんだよ」


私は言った。「でも、はっきり嘘だとわかってるのに、嘘を信じるの?」

その時の夫の言葉を、私は今でも時々思い出す。
夫は笑顔でこう言ったのだ。
「知らないっていう『言葉』を信じるんじゃなくて、『麗花ちゃん』を信じてやるんだよ。だって、麗花ちゃんは、いい子でしょ?」

・・・
嘘はいけないことだけど、
嘘をつくしかない状況、というものもあるんだ・・・。

麗花が「知らない」、と言った時、「あぁ、そう」と私が言ってやっていたなら、
カーネーションは、娘たちの愛情溢れた“内緒の贈り物”のままでいられたのにな・・・。


それからも、何度も失敗を重ねながら子どもと接しているうちに、私はだんだん思うようになった。
“愛”も、“信じる心”も、自分の“意思”なのかな・・・と。
子どもが愛を受けるに足るいい子でいる時、子どもを愛するのは簡単だ。
でも、子どもが困った状態の時でも、親は子どもを愛するように努力する。
そのことを考えると、“愛”は、“心のうちに自然に発生する感情”というよりは、“愛そう!”という自分の強い意志、のような気がしてならない。
信じる心も、同じ、じゃないのかな。
子どもが信頼を受けるに足るいい子でいる時、子どもを信じるのは簡単だ。
でも、子どもがそうでない状態の時でも、親が“信じよう!”という強い意志をもって、子どもに接することは大切なんじゃないかと思う。


ずっと思ってきた。
不安や、懐疑心に負けないで、その子を、その子自身を、その子の本質を、愛し、信じることのできる心の強さが欲しい。
そんな強い心を持ったお母さんになりたい、と。

今でも心から願っている。
たとえ、もし、信頼を裏切られることがあったとしても、へこたれないで、くじけないで、あきらめないで、何度も、何度でも、信じる強さ。笑顔で信じ抜く強さを持ちたい、と。

子どもに対しても、もちろん夫に対しても。

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