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 「ねぇ、どうだった?」と尋ねる娘たちに向かって私は答えた。
 「叶姉妹がいーっぱい!って感じだった!」

 生まれて初めてのディナーショーだった。
 そもそもホテル自体滅多に行ったことがないのに、ましてや、そこであるディナーショーに参加するなんて、自分でもびっくりだ。
 会場に入るなり私の目を引いたのは、まわりにいる人、人、人が、それはそれはゴージャスだったということ。
 きらびやかな着物、まばゆいドレス、おおっ!耳たぶが伸び切るようなデカいイヤリング!うわっ!指からはみ出たダイヤの指輪!うわーっ!ほーっ!おーっ!と何度声を上げそうになったかわからない。
 熊本の田舎にもこんな世界があったんだぁ・・・!・・・場違いな所に来てしまったようで、一人そわそわしてしまう。ふと見ると、隣の席の母は落ち着いてこの場にすっかり溶けこんでいる。
 今回のディナーショーは、私から母へのプレゼントだった。母が前から行きたがっていたのを知っていたので、チケットを予約しておいたのだが、その際、ためらいつつ2枚申し込んだ。母一人では寂しいだろうし、"娘と二人水入らず"というのもたまにはいいかも・・・と思ったからだ。
 ちょっと高い買物だったけれど、母の喜びは私の予想以上だった。
 勤めが長く社交的な母は、もともとこういう場に出る機会が多かったのだが、退職し、父も亡くなり、年も重ね、華やかな場から自然に遠ざかっていた。
 そんな母にとって、久しぶりのディナーショー。気合を入れておしゃれした母は、洗練されて上品で・・・本当に美しかった。
 ショーの最中、ステージから時々目を離して、私は母に見とれていた。

 「楽しかったねぇ!」
 帰りの車で母が言った。
 「じゃ、また来ようよ。また思いっ切りおしゃれして!」
 「信ちゃんもちょっとはおしゃれしなさいよ」
 「いえいえ、私はお母さんの運転手兼付き人ってことで!」
 「付き人?」
 明るく笑う母の横顔はとても満足そうで、見ている私は本当にうれしくなった。

 また来よう!
 お金を貯めてまた来よう!
 オー!ゴージャス!!と目を見張るほどおしゃれな母と、水入らずの二人でね!