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目からウロコの経済学

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第7回 地震でいつもと違う熊本の歳末

161207sitencyou1.jpg熊本地震に揺れた今年の熊本経済。年の瀬もいつもの年とは少し違うようです。番組内で聞いた街の声では、

「最近は食料品、特に野菜が上がっていますね。おせち料理もどうしようかと考えています」

「 地震でマンションにひびが入りましたが、まだ直していません」

という声が多く聞かれました。物価面では、全体としてはさほど上昇していないのですが、主婦の皆さんにとって身近な商品が上がっている感じがあります。今年は全国的に災害が多く、台風がたくさん上陸しましたので、そうした天候不順で野菜の値段が上がっています。さらに、これからは、ガソリンや灯油価格が少しずつ上昇していくような感じがしています。

161207sitencyou2.jpg■今冬のボーナスはやや厳しい

こうした中で今年の県内企業のボーナスは、全体としてみればやや厳しめになると予想しています。冬のボーナスは、今年度上半期(4~9月)の業績を反映させるものですが、今年は熊本地震後に、店舗の休業や工場の一時閉鎖などもあり業績が厳しい企業が多く、そのため、冬のボーナスは昨年冬より少し減る可能性があります。ただ、建設業などの多忙な企業の経営者に聞きますと、「忙しくしている社員に報いたい」という企業もあるようですから、業種によっては、増える企業もあると思います。

161207sitencyou3.jpg今年はボーナスの使い道にも、変化が出ているようです。街の声も、

「いつもは小旅行に出かけるんですけど、今年は止めておこうかなと思って。(地震があって)やっぱり節約しなくちゃというのが頭の中にいつもあります」

「地震で家にひびが入ったり家具が移動してしまったりして、修繕はまだしていないので、今後そういったところにお金が必要と思う」

という声が聞かれました。地方経済総合研究所が、熊本にお住まいの方々の今年のボーナスの使い道を調べたところ、昨年冬と比べて、買い物や国内旅行、海外旅行に使うお金を減らし、逆に住宅の補修・改修費用や子どもの教育費などに使うお金は増やすという傾向が見てとれます。 まずは、地震後の生活再建を進めたいと思っている賢い消費者が多いようです。ただし、「地震後にさまざまな出費がかさんでいる中でも、子どもの教育費は削れない。じゃあ何を減らそうか」と考えたところ、毎年恒例の年末年始の旅行や、買い物を少し減らそうという節約志向が見てとれます。

161207sitencyou4kae.jpg■今後2~3年は好景気

では、来年の熊本の景気はどうなるでしょう。 地震で大きなダメージは受けましたが、地震からの復興に関係した特需(特別な需要)が広範囲に表れてきます。この復興特需のおかげで、足下の景気はすでにV字回復の方向に進んでいます(上図右の円内)。日銀短観の業況判断DI(全体)も地震の後、かなり落ち込んだのですが、予測も含めて急速に回復しています。今後も向こう2~3年程度は、よほどのことがない限り、県内の景気は好調に推移するとみています。

161207sitencyou5.jpgただ、復興の担い手の不足で景気回復のテンポが制約されてしまうことが気がかりです。すみやかに新たな家を建て、被災者の生活再建を進める必要がありますが、人手が足りなければ壊れた家の解体が進まず、したがって、新しい家も建てられないというわけです。

人手不足を顕著に表しているのが有効求人倍率*です。10月の熊本県内の有効求人倍率は1.46倍と過去最高になり、初めて全国平均の数字を上回りました。

*有効求人倍率 働き口、つまり求められている人の数(仕事の数)を仕事をしたがっている人の数で割った値。どれくらいの求人があって、それにどれくらい応募者があるかを表わす。ハローワークでの求人、求職者数を厚生労働省が集計する。有効期限内の求人・求職数をまとめて算出するため「有効」求人倍率という。20の働き口があるのに働きたい人が10人しかいなかった場合、有効求人倍率は2倍となり、働き手を募集しても半分しか確保できない「人手不足」の状態にあることを示す。

■来春は賃上げにも期待

人手不足は景気回復のテンポを遅らせてしまいますが、一方で労働需給が引き締まると基本的には賃金は上がります。この冬のボーナスは下がるかもしれませんが、常識的にいって人手不足を反映して、来年の春闘ではベア(ベースアップ)*が期待できます。加えて景気は良くなってきていますので、来年夏のボーナスは前年を上回る先が増えてくるのではないかと思います。

*ベア(ベースアップ) 一般的に会社で働く人の賃金は、長く勤めるほど上がっていく(定期昇給)が、ベースアップはこれとは別に勤める人全員の基本給を底上げすることを指す。定期昇給だけなら20歳の社員は21歳にならないと給料は増えませんが、ベアが実施されればすべての年代の基本給がアップし、同じ20歳社員でも給料が上がる。

よく「 景気は気から」と言われます。節約志向が過ぎると、せっかくの景気回復の流れが途切れてしまいます。今年は地震とその後の対応でろくに休みも取れず、お疲れの方も多いでしょう。年末年始はゆっくりしつつ、先々の所得上昇を前提に、過度な我慢をせずにお金を賢く使っていただくことが、景気を良くすることにもつながります。

161207sitenncyou.jpg(2016年12月7日に放送した内容を再構成しました)

第6回 観光業回復 カギ握る阿蘇の復旧

熊本地震から半年近くが経過し、熊本県の経済は復興需要にも支えられ、少なくとも経営者の景況感はアルファベットの「V」の字のような回復、いわゆるV字回復の様相を示しています。ただ、主要産業のひとつである観光業は、確かに最悪期は抜け出していますが、水準自体は落ち込んだ状態から抜け出せていません。熊本県の観光業については、前回の経済塾でも触れましたが、改めて現状と今後についてみていきましょう。

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■効果絶大の「ふっこう割」

まず、4~6月に熊本県内に宿泊した観光客の数はどうなっているのでしょう。国内からの客、海外からの客はともに熊本地震で大きく落ち込んだことが見て取れます。とりわけ、海外からの観光客は、地震に対する警戒感を主因に6割近くも減っています。熊本空港への定期便のうち台湾高雄便は運行を再開していますが、ソウル便、香港便はなお運休していることも影響しています。お客さんの数は観光施設にとっては売り上げに直結しますから、観光業界は苦しい状況だということが分かります。こうした状況を受けて7月から発売されたのが、宿泊料金が大幅な割引になる「九州ふっこう割」です。7月に発売された第1弾(最大7割引)は、予想を上回る人気になりました。9月からは、年末まで使える第2弾(最大5割引)も販売されています。

番組では、観光業界の方々のインタビューが紹介されました。

「地震直後はほほすべて(予約が)キャンセルとなって、2週間はお客さんがゼロという状態が続きました。最近はふっこう割のおかげもあって、7月、8月、9月は連日、満室状態が続いています」(天草市・夢ほたるの大久保剛広報マネージャー)

「 前年と比べると随分とプラスになりました。予約が鳴りやまない状態です」(人吉市・翠嵐楼の有働健志フロント支配人)

「ふっこう割のおかげで(昨年の)7割くらいまで戻ってきたのかなと思います。ふっこう割がなかったら、たぶん今年はどうにもならなかったと思います」(阿蘇市・阿蘇プラザホテルの稲吉淳一社長)

「(年明け以降)ふっこう割がなくなってしまうことに関しては、非常に危機感を感じています」(阿蘇市の蘇山郷の永田祐介社長)

161005nitigin.jpg 確かに、ふっこう割の効果は大きかったと思います。ただ、状況自体はなお厳しいという点に変わりはありません。この点を、日本銀行の短観(短期経済観測調査)の業況判断DIの推移から、確認してみましょう。

*業況判断DI 企業に「業績はいかがですか」と尋ね、「良い」と答えた会社の割合から「悪い」と答えた会社の割合を引いた数字のこと。例えば50社を 調査して、15社が「良い」、20社が「悪い」、15社が「どちらでもない」と答えた場合、「良い」と答えた会社の割合(30%)から「悪い」と答えた会社の割合(40%)を引いたDIは30-40=マイナス10となる。DIはDiffusion Index(拡大指標)の略で、一般にプラスなら景気は拡大、マイナスなら後退を意味する。業種や企業の規模ごとに景気の現状や先行きをつかむ数値として、最も注目を集める経済指標のひとつとされる。

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■産業全体はV字回復しているが...

日銀短観の業況判断DIはプラスの数字が大きければ、その業界は調子が良いことを示しています。6月と9月のDIの変化幅をみると、熊本県の全産業では6月のマイナス16からプラス8へと24ポイントも改善しており、産業全体ではいわゆる「V字回復」を遂げています。宿泊・飲食業も変化幅はプラスの46ポイントですから、全産業よりも大幅に回復しており、相当良くなっているといえます。

しかし、製造業がプラス29、小売業がプラス42と、9月のDIそのものの水準が大幅なプラスになっているのに対し、宿泊・飲食業は9月のDIの数値自体はまだマイナス34です。熊本県の観光業界には、依然として景気が悪いと思っている人のほうが圧倒的に多いわけです。

ちなみに大分県の宿泊・飲食業は、6月のマイナス50から72ポイント改善して、9月はプラス22と、すでに目立ったプラスに転じています。熊本県が大分県より回復の度合いが遅れているのは、熊本が大分より被害が大きく、余震も多かったという差だけでなく、鉄道や道路などの交通事情、インフラ復旧の遅れが熊本の観光業回復の足を引っ張っているためと考えられます。

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■阿蘇復活の3つのポイント

私は、熊本県の観光業の回復にとって、多くの観光資源を有する阿蘇地方の早期回復がカギを握ると思います。今後のポイントは、3つあります。

まず大切なのは、正確な情報発信です。とりわけ、「今の熊本は安全・安心」だということをきちんとPRすべきです。ただ、それだけでなく、道路事情や渋滞に関する正確な情報発信も必要です。東京の人と話をすると、「阿蘇はまだ車では行けない」と思っている人もいます。以前より渋滞気味ではありますが、県外の方にはやや誇張されて伝わっている感じも気がかりです。いずれにしても、現状を極力正確に伝えていくことが大事で、この点は阿蘇中岳の爆発的噴火もありましたので、なおさら重要なポイントとなります。

2つ目は鉄道・道路などのインフラの早期復旧です。蒲島知事は冬場もミルクロードの通行止めが発生しないように24時間管理すると表明しましたが、そのうえで阿蘇地域の観光回復にとっては、国道57号線やJR豊肥線の1日も早い完全復旧が必要だと思います。震災後、熊本県全体で多くの復旧工事が進められているため、人手不足が一段と強まっています。優先順位をつけて、経済効果が高いところから手を付けていく必要があります。そうした観点からみると、阿蘇地域は優先順位が高い部類に入ると思います。

3つ目は、ふっこう割のようなテコ入れ策の継続です。今の予定では、ふっこう割は年内いっぱいで終了しますが、冬場の阿蘇はそもそも観光客が減る厳しい季節です。少なくとも、春まではふっこう割のようなテコ入れ策で首都圏や阪神圏からの誘客につなげていく必要があります。阿蘇の良さを実感してもらえれば、必ずリピーターが増え、そのことが地域経済の復旧・復興につながっていくと思います。

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(2016年10月5日に放送した内容を再構成しました)

第5回 熊本地震後の景気展望

4月14日と16日に2度にわたって熊本県を襲った最大震度7の地震は、県内各地に大きな傷跡を残しました。工場や店舗が被災したことで休業を余儀なくされ、観光地も大きな被害を受けました。熊本経済は地震による落ち込みから立ち直れるのか、回復を実感できるとすればいつ頃なのか、竹内支店長に聞きました。

■主要3産業の業績は急降下

熊本地震で熊本経済は大きなダメージを受けました。地震から3か月たった今でも、景気の状況は厳しいと言わざるを得ないと思います。そのことは、日銀の熊本短観(短期経済観測調査)のうち、景気の現状を示す業況判断DI*の推移に表れています。
*業況判断DIとは 企業に「業績はどうですか」と聞いて、「良い」と答えた会社の割合から「悪い」と答えた会社の割合を引いた数字のこと。例えば50社を調査して、15社が「良い」、20社が「悪い」、15社が「どちらでもない」と答えた場合、「良い」と答えた会社の割合(30%)から「悪い」と答えた会社の割合(40%)を引いたDIは30-40=マイナス10となる。景気の状況を示す指標として最もよく使われる。DIはDiffusion Index(拡大指標)の略で、一般にプラスなら景気は拡大、マイナスなら後退を意味する。
160728keizaijuku1.jpgのサムネイル画像

業況判断DIはマイナスになるほど、その業種が置かれた状況が厳しいことを意味しますが、熊本経済をけん引する製造業、小売業、観光業(観光に関連する宿泊・飲食業)は、地震後に調査した6月短観のDIが地震前の3月より、いずれも大幅に悪化しています。

製造業は工場の操業停止が響いて地震前のプラス2からマイナス18に、小売業も大型店などで休業を余儀なくされた店舗が少なからずあり、プラス20からゼロに落ち込みました。観光業は、ここでは宿泊業と飲食業から構成されており、宿泊業は震災後にキャンセルが相次ぎ、飲食業は店舗休業や自粛などから売り上げが落ち込んだため、全体では震災前の0からマイナス80へと急激に悪化し、大変厳しい状況になっています。6月の熊本短観全体ではマイナス16となり、3月のプラス7から23ポイントも悪化しました。1回の調査での悪化幅としては、2008年9月のリーマン・ショック時をも上回り、1980年の第二次オイルショック時以来のことになります。

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小売業で県内の百貨店とスーパーの売上高の合計額をみると、4月は前年より大幅に落ち込み、5月も前年の売上高に届きませんでした。6月は前年比でプラスに戻ってきましたが、依然として厳しい状況なことは間違いありません。

■秋以降から徐々に回復

熊本経済はもうしばらく厳しい状況が続くでしょう。しかし、復興需要が出てくるにつれて、景気は回復に向かうと想定されています。

復興需要の端的な例として、家電があります。地震で倒れたりして壊れてしまったテレビや冷蔵庫、電子レンジなどの買い替えで、家電量販店の売上高は、すでに5月に前年比46・7%増と急激に伸びています。

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ソファやタンスなどの家具についても、家電と同様の買い替え需要が盛り上がっています。さらに、これからは住宅を補修したり、建て替える動きも出てきます。橋や道路を復旧する公共工事も本格化してきます。

地震の被害が大きかった分、こうした動きを全部合わせた需要はかなり大きくなるはずで、こうした復興需要によって、県内の景気は回復に向かうでしょう。工場や大型店の復旧も進んでおり、早ければ秋ごろから景気回復が徐々に実感できるようになるのではないかと思います。

■観光業回復の3つのポイント

厳しい状況にある観光業も、「ふっこう割」という観光振興策が効果を発揮し、おそらく夏休み期間中の観光客は戻ってくるでしょう。ただし、「ふっこう割」が一巡した後の本格回復に向けては、3つのポイントがあると考えています。

第1に、熊本の観光の2枚看板である熊本城と阿蘇地区の再興を急ぐことです。熊本城は立入禁止区域を縮めるなどの復旧工事を進め、阿蘇は道路や鉄道といった交通インフラの復旧が急務といえるでしょう。

第2に、風評被害を防ぐ正しい情報の発信です。あまり被害がなかった人吉、天草などでも観光客が減っています。安全、安心だという情報を正確に発信していく必要があります。

第3に、熊本の多彩な魅力のPRです。これは私も熊本に来て感じていることですが、当地には熊本城と阿蘇だけではなく、天草、人吉、そして山鹿、八代にも大変魅力的な観光資源があります。これをどんどんPRしていって、熊本城と阿蘇が厳しい間に熊本全体の観光産業を底上げしていくことが重要になると思っています。

(2016年7月28日に放送した内容を再構成しました)

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第4回 マイナス金利政策ってなに?

今回は、日本銀行が2月16日から導入した「マイナス金利政策」についてお話しします。金利がマイナスという政策を耳にすると、多くの人は「なんだかよくわからない」「何かマイナスなことが起きるのではないかと心配だ」と感じていると思います。金利ですからプラスが当然で、反応自体は極めて自然なことだと思います。「黒い白くま」とか「丸い三角」といわれたら、「それは何なんだ」と思考がフリーズして(固まって)しまいますよね。

MAINASU_R.jpgマイナス金利の対象になるのは皆さんが金融機関に預けている預金ではなくて、銀行などの金融機関が日本銀行に預けている当座預金の一部です。当座預金とは、銀行同士が資金のやり取りや決済を行うための預金口座です。金融機関は、法律で義務付けられた準備預金だけでなく、日銀への国債の売却代金などのうち貸し出しやその他の運用に振り向けなかった資金を、日銀の当座預金に積み上げて運用しています。

というのも、日銀は「銀行の銀行」として、金融機関から預かったお金に対し、法定準備預金を除いた全額に対し、利息(直前は年0.1%)を払ってきました。ところが、今回のマイナス金利の導入によって、日銀当座預金の一部には利息を支払わず、逆に手数料を取ることになりました。最初のうちは、日銀が預かっている当座預金残高260兆円のうち10兆円程度がマイナス金利の対象になるとみられています。

そうなると、金融機関はこの分のお金を日銀に預けておくよりは、民間企業や個人に対する貸し出しに回した方が得になります。そこで、金融機関は貸し出しを増やすため、ローン金利を下げてお金を借りてくれるお客さんの獲得に動くと予想されます。金融機関からの貸し出しが増えれば、これまでよりも多くのお金が市場に出回って、景気が良くなることが期待できます。

■マイナス金利のメリットとデメリット
すでにメガバンクの固定住宅ローンの金利は、年1%を切る水準まで下がっています。金利引き下げを通じて融資を増やそうという金融機関の動きは、熊本県内でも始まっています。

160225mainasu6_R.jpg熊本県内で新たに建てられた住宅の件数の推移を見ると、2006年度の1万6000戸をピークにいったん落ち込み、ここ数年は再び増加傾向にあります。いずれ住宅を購入することを考えている皆さんにすれば、ローン金利が下がるにつれて、「いつかは購入することを考えると、そのタイミングは今でしょ」ということになります。そうした行動が広がっていくことで、住宅販売や住宅着工が増加することが期待されます。住宅投資は景気への波及効果が大きいことで知られています。というのも、住宅の購入にあわせて家具を新たに買おうとか、場合によっては車も買い替えようという動きにもつながるケースが多いためです。

160225mainasu4_R.jpg金融機関からすでにローンを借りていて、変動金利で契約している方々も、今後ローン金利が引き下げられる可能性があります。その場合、これまでに比べ月々の返済額が減るわけですから、浮いたお金で旅行に行こうとか、外食に出かけようといったことにつながるかも知れません。

一方で、貸し出し金利が下がれば、短期的には金融機関の業績にとってはマイナスになります。年金生活者の皆さんも、年金を預けている金融機関から受け取る預金利息が減少しますので、短期的には暮らしにマイナスの影響が及ぶと予想されます。

事実、すでにかなり低かったメガバンクの預金利息は、日銀のマイナス金利の導入後、さらに下がっています。普通預金に10万円預けた場合、これまでも利息は年0.02%、わずか16円だったわけです。しかしながら、年0.001%に引き下げられたことで、税引き後の手取りの利息が0円になってしまったメガバンクもあるようです。

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160225mainasu3_R.jpgしかし、金融機関の預貯金はあくまでプラスを前提にしていますから、限りなくゼロに近づいていっても、みなさんの預貯金の利息までマイナスになることはますありません。したがって、金融機関に預けると損をするということはまず起きないでしょう。

■狙いはひとえに「デフレ脱却」
日銀がマイナス金利という異例の政策をとったのは、ひとえにデフレから脱却して景気を良くするためです。1~3月期というのは、民間企業が4月以降の経営計画を立てる大変重要な時期です。日銀はこの時期に思い切った政策をとることで、賃金のベースアップや設備投資の増額を考えている企業をサポートしようと考えたわけです。

マイナス金利は短期的には金融機関の収益にマイナスに働きますが、徐々に貸し出しの量が増えていけば、金融機関は収益を確保できるようになります。年金生活者の皆さんも、お子様の給料が上がることなどを通じて、家計全体でみればプラスになっていくことが期待できます。

あえて気がかりな点をあげるとすれば、不動産バブルでしょうか。1980年代後半には、日銀が低金利政策を続けたことで不動産バブルが起きました。熊本では市内を中心に今後も再開発が進んでいきます。そうした中で、異例の金融緩和を受けて不動産融資が拡大すれば、市内の一等地では不動産価格が大幅に上がる恐れもありますので、そこは過熱しすぎないよう注意深く見ていきたいと思っています。

(2016年2月25日に放送した内容を再構成しました)

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第3回 インバウンド需要を増やすには

2016/1/8更新

 「ネンロク!」では、私が気になる場所も訪れました。それは熊本空港の国際線ターミナルです。到着した観光客が最初に目にする空港のターミナルは、家でいえば玄関口です。その第一印象は、熊本の印象を決める重要な要素になります。

■到着時の第一印象が大事

 ターミナルが熊本の第一印象を決める、という観点から国際線ターミナルを観察してみると、まずロビーが狭いことが気になりました。私が訪れた時、ターミナルのロビーは熊本から台湾に帰る観光客でごった返していました。もう少し拡張できればいいですね。
 クリスマスツリーなど季節の飾りや、くまモンなど、すぐさま対応できることはしており、熊本の特徴を出しながら歓迎する努力は垣間見えました。ただ、熊本を印象付ける装飾がもう少しあってもいいかな、とも思いました。

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 全国の空港に先駆けて、免税手続きを一括して行うカウンターも設置され、韓国ウォンや香港ドルなどを円に替える両替機もあります。さらにターミナルの使い勝手を向上させるために、ホテルの空き状況から穴場の店まで、海外からの観光客の相談や要望に何でも応えることができる、熊本を知り尽くしたコンシェルジェ(総合案内人)を配置してはどうでしょう。国際線と国内線のターミナルをどうつなげていくか、も考えていかなければなりません。

 空港の印象は、何度も訪れたいと思ってもらえるかどうか、すなわちリピーターを増やせるかどうか、にも影響します。「おもてなし」の基本を忘れずに、できることからスピーディーにやっていくべきでしょう。

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 熊本空港は昨年暮れに香港との間の定期便も就航し、ソウル便、台湾・高雄便とあわせて国際線が3路線になりました。ソウルまで1時間30分、高雄まで2時間30分、香港まで3時間で結ばれます。国際線の利用者数は、2003年のソウル便の定期便化でぐっと増え、高尾線のチャーター便が就航した昨年度は開港以来、初めて5万人を突破しました。今年度も10月までですでに前年を35%上回っていますので、6万人台後半には届く勢いです。

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 実際に、台湾や香港などから県内に来て宿泊する人は4年前の5倍以上に増えています。円安の追い風もありますが、アジアの中でも所得水準の高い国や地域から、お客さんが来てくれています。シンガポールも所得が高い国ですので、上海便や北京便などとあわせて検討していくこともよいかもしれません。

■跳躍のカギは「リピーター」と「宿泊」

 これらの国の所得はさらに上がってきていますので、きっと「もう一度熊本に行きたい」と考えるリピーターは増えていくはずです。海外からの観光客を着実に増やすには、熊本訪問を一度で終わらせず、もう一度来たいと思ってもらうことが重要です。

 外国人観光客が増えているのは熊本だけではありません。九州を訪れた外国人観光客は、アジアからの中心に初めて200万人を突破しています。熊本にとって、九州の観光客が増えるのはよいことですが、この観光需要をつかまえ得るかは、周辺各県との競争です。

 熊本のホテルや旅館の宿泊者受け入れ能力は2014年度で2.7万人と、福岡(4.9万人)や沖縄(4.0万人)より少ないのが現状です。せっかく熊本を訪れたのに、高速道路ですぐに鹿児島や大分に出てしまう観光客もいます。熊本でもう1泊というお客さんをつかむことが大事です。それには、天草や阿蘇といった県内の主要な観光地を周遊してもらうことが大切です。そのために、どうするか。知恵を出し、努力をしなければ、せっかく増えた観光客が、熊本を素通りし他県にとられてしまうかもしれません。

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 空港の国際線ターミナルでは、到着する外国からの観光客の素敵な笑顔が印象的でした。この笑顔を絶やさずつなげていくことができれば、きっとリピーターの数も増えるでしょう。どうやって宿泊客数を増やすか、今年は昨年のいい流れを大きく伸ばす跳躍が求められており、したがって「跳」ぶ、を「2016年の1字」に選びました。

 日銀熊本支店に着任して6か月がたち、熊本の各地を訪れて、いろいろな方からさまざまな話を聞けるようになりました。このコーナーへの出演をはじめ、支店長として、2016年は情報発信に一層、力を入れていきたいと思います。

(2015年12月26日に放送したスペシャル版の内容を再構成しました)

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