ホームブログ > 支店長経済塾

目からウロコの経済学

top

第9回 2019年に向けて

熊本県の景気は、熊本地震からの復興需要を受けて順調に回復中です。今年を復興元年として、ホップ、ステップ、ジャンプで熊本経済の復活につなげたいところです。
ジャンプに当たる2年後の2019年に、熊本地震からの復興にほぼ目処が立つよう、官民合わせて取り組みを強化していく必要があります。その2019年には、ラグビーのワールドカップと女子ハンドボールの世界大会という2つの世界的なスポーツイベントが熊本で開催されます 。

■2つの世界大会の経済効果は絶大

2つの世界大会開催によって。熊本を含めた九州には大きな経済効果が予想されます。1997年に熊本市で行われた男子ハンドボール世界大会では、熊本県に64億4000万円の経済波及効果があったと言われています。また、ラグビーのワールドカップは世界中で 39億人もの方々が、テレビ視聴する非常に人気のあるスポーツです。観戦のため、日本中、世界中からたくさんの方がこの熊本に、詰めかけるでしょう。大会の合間には、観光地にも足を運んでもらえるはずですので、熊本地震からの着実な復興や、熊本の素晴らしさをアピールするまたとない好機となるでしょう。

0531sitenn支店長熊本では.jpg スポーツイベント以外にも、この年に熊本は変貌を遂げます。
まずは、工事が本格化している桜町の再開発が完成する予定です。熊本市中心部の桜町地区にバスターミナルやコンサートホール、商業施設、ホテル、分譲マンションなどが入った複合型大規模施設が開業する予定です。
また、熊本城大天守の復旧も完了することが見込まれます。2019年には、まだ一般客が天守閣の中に入るのは難しいようですが、熊本復興の歩みを示す大きな出来事になることは間違いありません。

0531sitencyou.jpg

■2019年後もスポーツイベントが続く

0531支店長セかい.jpg

ラグビーとハンドボールの世界大会が終わっても、熊本の活気は2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の世界水泳福岡大会までつながっていくと思います。東京オリンピックで、熊本は世界各国の選手が事前合宿などを行う「ホストタウン」に選出されています。また、福岡の世界水泳大会では選手、関係者、観戦者全てを福岡の宿泊施設で収容するのは難しいことが予想され、九州新幹線で繋がる熊本にも宿泊需要がスピルオーバー(地域外波及)するはずです。また、大会前後には、熊本の観光地を訪れる観客が、宿泊のほか熊本で消費することが予想されます。このように、熊本にもかなりの波及効果があるでしょう。

■飛躍に向けた2つの課題

熊本は2019年の大イベントを成功させ、それを活用してさらなる経済の復興につなげていかなければなりません 。そのために、幾つかある中で、取り組むべき2つの課題について、お話しします。

170531支店長交通アクセス.jpg

第一の課題は、交通アクセスの改善です。朝夕を中心に熊本市中心部の渋滞は慢性化しており、熊本空港からのアクセスも時間が読みにくいといった声を聞きます。大きなスポーツイベントが開催されると、道路は一層混雑することが予想されますから、ソフト、ハード両面から整備を進めていくことが必要です。
ハード面では、交通インフラの整備を、熊本空港の再整備と合わせて検討することが大事だと思います。ソフト面では、大会の試合開催日だけでも、車の交通量を減らすことに取り組んではどうでしょう。具体的には、車のナンバーを偶数・奇数に分けて、日によって熊本市内への乗り入れを規制することなども一考に値すると思います。

00531支店長地域振興.jpg

もうひとつ2019年に向けて求められるのは、スポーツを軸とした地域振興策だと思います。
大きな国際大会で一流のアスリートの活躍をじかに目にすることで、県民のスポーツヘの関心は高まることでしょう。しかし、熊本市内のスポーツ施設は、藤崎台県営野球場や水前寺競技場などの老朽化が目立ちます。
水前寺競技場は熊本地震で被災し、現在も完全復旧していません。蒲島知事が掲げる「創造的復興」のシンボルの一つとして、例えば、子どもからお年寄りまで使える施設に作り変えるというのも一案ではないでしょうか。お年寄りのスポーツ愛好者が増えて健康増進につながれば、医療費の減少やお年寄りが元気に動けるまちづくりといった効果が出てくるかもしれません。健康で文化的なコンパクトシティに一歩近づくはずです。
2019年のイベントを一過性のにぎわいに終わらせるのではなく、未来の熊本につなげていきたいものです。
(2017年5月31日に放送した内容を再構成しました)

SIRO3_R.jpg

第8回 景気回復と人手不足    

boj2.jpg熊本県内の経済状況は、昨年の秋口以降、復興需要に支えられて、はっきりと上向いています。主要企業の業況判断DIは、熊本地震の後、2016年6月にかけて落ち込みましたが、9月、12月とV字回復し、次の3月にかけても、更に改善することが見込まれています。これらを全国と比べますと、水準も方向性も異なっており、熊本県の景気回復の力強さが見て取れます。大きな復興需要が潜在的にありますので、少なくとも今後2年程度は、力強い景気回復の動きが続くとみられます

■最大の懸念は人手不足

ただ、景気回復の最大の懸念材料として浮上しているのが、深刻化する人手不足の問題です。特に、人手不足が深刻だと言われているのが建設業界です。

170223takeuti3.jpg被災した住宅の建て替え現場からは「人手不足が恒常化しており、ある工事が一段落すると、すぐさま、違う現場に向かうという状況だ」という声が聞かれます。さばききれない受注残を抱え、業界では、仕事に追われているのが実情です。

熊本県建設業協会も、危機感を持っています。豊後謙藏常務理事は現状を「仕事量は非常に多く、通常では考えられない量の工事が発注されている」と語ります。国土交通省九州地方整備局によると、2017年1~3月の発注見込みは、公共工事だけで約2,500件。建設業協会は、今後、県や市町村の発注が本格化すれば、例年の2倍近くまで増える可能性もあるとみています。

すぐにでも人手が必要な状況ですが、確保は非常に難しくなっています。建設業では熊本地震の前から人手が不足している上に、震災後に雇い入れた労働者も、建設業で働くための技術や技能の習得に時間を要するからです。

このため建設業協会では、中長期的な人材育成を念頭に若者の人材確保を図ろうと、高校生向けの情報発信に力を入れています。豊後常務理事は「これからは若い方を育てていくという時代に入らざるを得ない。建設産業全体で、若年層の確保を、最優先の課題だと考えている」と話します。

「住宅を一日も早く再建したくとも、業者待ちで工事がなかなか進まない」との声をしばしば耳にしますが、解体や建設工事の遅れには、人手不足が影を落としています。何らかの対策を講じていかなければ、生活再建、復旧復興のスピードにも影響することになるでしょう。

boj4.jpg

■建設業以外でも

人手不足は、建設業以外にも拡がっています。住宅を再建するには家を解体しなくてはならず、それには解体で出た災害ごみを運搬する必要があります。もっとも、今回の震災で大量の廃棄物が生じたため、運輸業界ではドライバー不足が深刻になっています。また、復旧工事を進める際には交通誘導などの保安・警備要員が必要となりますが、ここでも人手が足りません。そのほかに、小売、飲食サービスなどの業種でも人手不足が進んでいます。一つには、復興関係の分野では賃金を引き上げて人手を確保する動きがあるため、他の業種から人材が流出しているとされています。

■人材確保の秘策はない

では、復旧復興の足取りを止めないため、どう人手を確保すればいいのでしょうか。残念ながら、「これをすればすぐ解決する」という決め手はありません。小さな対策を着実に積みあげていく総合的な戦略が必要です。

まず第一に、女性、高齢者、外国人の労働力を活用していくことです。女性の労働力の確保には、働いている間に子どもをみてくれる託児所の整備などの子育て対策が不可欠です。高齢者や外国人の労働力を活かすには、労働時間を考慮したり職場の環境を整備したりといった、働きやすい環境作りに向けた現場での工夫が求められます。

県外に流出している若年層の県内就職率を高めることも重要です。若年層が県外に就職するのは、大都市で働くほうが賃金が高いことも一因ですから、県内の賃金相場を底上げしていくことも必要です。さらに高校生、大学生に熊本の企業の魅力をPRする情報発信も大事です。

それでも、県外への流出をすぐに止めることはできないでしょう。しかし、県外に出た若者がみな希望の職について成功しているとは限りませんし、大都市で職に就いてはみたが、やはり熊本に戻りたいと考えている人もいるはずです。被災したことで郷土愛が強まり、熊本の復旧復興に関わりたいと思う方々も、少なくないはずです。ご両親の面倒を見るために帰りたい、という方もいるでしょう。そうした方々が、きちんと地元に戻れるUターン、Iターンの仕組みを築くことも大事です。

boj3.jpg

こうした取り組みは企業だけではできません。行政と企業がしっかり連携して、総合的に取り組むことが求められています。

(2017年2月23日に放送した内容を再構成しました)



第7回 地震でいつもと違う熊本の歳末

161207sitencyou1.jpg熊本地震に揺れた今年の熊本経済。年の瀬もいつもの年とは少し違うようです。番組内で聞いた街の声では、

「最近は食料品、特に野菜が上がっていますね。おせち料理もどうしようかと考えています」

「 地震でマンションにひびが入りましたが、まだ直していません」

という声が多く聞かれました。物価面では、全体としてはさほど上昇していないのですが、主婦の皆さんにとって身近な商品が上がっている感じがあります。今年は全国的に災害が多く、台風がたくさん上陸しましたので、そうした天候不順で野菜の値段が上がっています。さらに、これからは、ガソリンや灯油価格が少しずつ上昇していくような感じがしています。

161207sitencyou2.jpg■今冬のボーナスはやや厳しい

こうした中で今年の県内企業のボーナスは、全体としてみればやや厳しめになると予想しています。冬のボーナスは、今年度上半期(4~9月)の業績を反映させるものですが、今年は熊本地震後に、店舗の休業や工場の一時閉鎖などもあり業績が厳しい企業が多く、そのため、冬のボーナスは昨年冬より少し減る可能性があります。ただ、建設業などの多忙な企業の経営者に聞きますと、「忙しくしている社員に報いたい」という企業もあるようですから、業種によっては、増える企業もあると思います。

161207sitencyou3.jpg今年はボーナスの使い道にも、変化が出ているようです。街の声も、

「いつもは小旅行に出かけるんですけど、今年は止めておこうかなと思って。(地震があって)やっぱり節約しなくちゃというのが頭の中にいつもあります」

「地震で家にひびが入ったり家具が移動してしまったりして、修繕はまだしていないので、今後そういったところにお金が必要と思う」

という声が聞かれました。地方経済総合研究所が、熊本にお住まいの方々の今年のボーナスの使い道を調べたところ、昨年冬と比べて、買い物や国内旅行、海外旅行に使うお金を減らし、逆に住宅の補修・改修費用や子どもの教育費などに使うお金は増やすという傾向が見てとれます。 まずは、地震後の生活再建を進めたいと思っている賢い消費者が多いようです。ただし、「地震後にさまざまな出費がかさんでいる中でも、子どもの教育費は削れない。じゃあ何を減らそうか」と考えたところ、毎年恒例の年末年始の旅行や、買い物を少し減らそうという節約志向が見てとれます。

161207sitencyou4kae.jpg■今後2~3年は好景気

では、来年の熊本の景気はどうなるでしょう。 地震で大きなダメージは受けましたが、地震からの復興に関係した特需(特別な需要)が広範囲に表れてきます。この復興特需のおかげで、足下の景気はすでにV字回復の方向に進んでいます(上図右の円内)。日銀短観の業況判断DI(全体)も地震の後、かなり落ち込んだのですが、予測も含めて急速に回復しています。今後も向こう2~3年程度は、よほどのことがない限り、県内の景気は好調に推移するとみています。

161207sitencyou5.jpgただ、復興の担い手の不足で景気回復のテンポが制約されてしまうことが気がかりです。すみやかに新たな家を建て、被災者の生活再建を進める必要がありますが、人手が足りなければ壊れた家の解体が進まず、したがって、新しい家も建てられないというわけです。

人手不足を顕著に表しているのが有効求人倍率*です。10月の熊本県内の有効求人倍率は1.46倍と過去最高になり、初めて全国平均の数字を上回りました。

*有効求人倍率 働き口、つまり求められている人の数(仕事の数)を仕事をしたがっている人の数で割った値。どれくらいの求人があって、それにどれくらい応募者があるかを表わす。ハローワークでの求人、求職者数を厚生労働省が集計する。有効期限内の求人・求職数をまとめて算出するため「有効」求人倍率という。20の働き口があるのに働きたい人が10人しかいなかった場合、有効求人倍率は2倍となり、働き手を募集しても半分しか確保できない「人手不足」の状態にあることを示す。

■来春は賃上げにも期待

人手不足は景気回復のテンポを遅らせてしまいますが、一方で労働需給が引き締まると基本的には賃金は上がります。この冬のボーナスは下がるかもしれませんが、常識的にいって人手不足を反映して、来年の春闘ではベア(ベースアップ)*が期待できます。加えて景気は良くなってきていますので、来年夏のボーナスは前年を上回る先が増えてくるのではないかと思います。

*ベア(ベースアップ) 一般的に会社で働く人の賃金は、長く勤めるほど上がっていく(定期昇給)が、ベースアップはこれとは別に勤める人全員の基本給を底上げすることを指す。定期昇給だけなら20歳の社員は21歳にならないと給料は増えませんが、ベアが実施されればすべての年代の基本給がアップし、同じ20歳社員でも給料が上がる。

よく「 景気は気から」と言われます。節約志向が過ぎると、せっかくの景気回復の流れが途切れてしまいます。今年は地震とその後の対応でろくに休みも取れず、お疲れの方も多いでしょう。年末年始はゆっくりしつつ、先々の所得上昇を前提に、過度な我慢をせずにお金を賢く使っていただくことが、景気を良くすることにもつながります。

161207sitenncyou.jpg(2016年12月7日に放送した内容を再構成しました)

第6回 観光業回復 カギ握る阿蘇の復旧

熊本地震から半年近くが経過し、熊本県の経済は復興需要にも支えられ、少なくとも経営者の景況感はアルファベットの「V」の字のような回復、いわゆるV字回復の様相を示しています。ただ、主要産業のひとつである観光業は、確かに最悪期は抜け出していますが、水準自体は落ち込んだ状態から抜け出せていません。熊本県の観光業については、前回の経済塾でも触れましたが、改めて現状と今後についてみていきましょう。

00000000.jpg

■効果絶大の「ふっこう割」

まず、4~6月に熊本県内に宿泊した観光客の数はどうなっているのでしょう。国内からの客、海外からの客はともに熊本地震で大きく落ち込んだことが見て取れます。とりわけ、海外からの観光客は、地震に対する警戒感を主因に6割近くも減っています。熊本空港への定期便のうち台湾高雄便は運行を再開していますが、ソウル便、香港便はなお運休していることも影響しています。お客さんの数は観光施設にとっては売り上げに直結しますから、観光業界は苦しい状況だということが分かります。こうした状況を受けて7月から発売されたのが、宿泊料金が大幅な割引になる「九州ふっこう割」です。7月に発売された第1弾(最大7割引)は、予想を上回る人気になりました。9月からは、年末まで使える第2弾(最大5割引)も販売されています。

番組では、観光業界の方々のインタビューが紹介されました。

「地震直後はほほすべて(予約が)キャンセルとなって、2週間はお客さんがゼロという状態が続きました。最近はふっこう割のおかげもあって、7月、8月、9月は連日、満室状態が続いています」(天草市・夢ほたるの大久保剛広報マネージャー)

「 前年と比べると随分とプラスになりました。予約が鳴りやまない状態です」(人吉市・翠嵐楼の有働健志フロント支配人)

「ふっこう割のおかげで(昨年の)7割くらいまで戻ってきたのかなと思います。ふっこう割がなかったら、たぶん今年はどうにもならなかったと思います」(阿蘇市・阿蘇プラザホテルの稲吉淳一社長)

「(年明け以降)ふっこう割がなくなってしまうことに関しては、非常に危機感を感じています」(阿蘇市の蘇山郷の永田祐介社長)

161005nitigin.jpg 確かに、ふっこう割の効果は大きかったと思います。ただ、状況自体はなお厳しいという点に変わりはありません。この点を、日本銀行の短観(短期経済観測調査)の業況判断DIの推移から、確認してみましょう。

*業況判断DI 企業に「業績はいかがですか」と尋ね、「良い」と答えた会社の割合から「悪い」と答えた会社の割合を引いた数字のこと。例えば50社を 調査して、15社が「良い」、20社が「悪い」、15社が「どちらでもない」と答えた場合、「良い」と答えた会社の割合(30%)から「悪い」と答えた会社の割合(40%)を引いたDIは30-40=マイナス10となる。DIはDiffusion Index(拡大指標)の略で、一般にプラスなら景気は拡大、マイナスなら後退を意味する。業種や企業の規模ごとに景気の現状や先行きをつかむ数値として、最も注目を集める経済指標のひとつとされる。

tankan.jpg

■産業全体はV字回復しているが...

日銀短観の業況判断DIはプラスの数字が大きければ、その業界は調子が良いことを示しています。6月と9月のDIの変化幅をみると、熊本県の全産業では6月のマイナス16からプラス8へと24ポイントも改善しており、産業全体ではいわゆる「V字回復」を遂げています。宿泊・飲食業も変化幅はプラスの46ポイントですから、全産業よりも大幅に回復しており、相当良くなっているといえます。

しかし、製造業がプラス29、小売業がプラス42と、9月のDIそのものの水準が大幅なプラスになっているのに対し、宿泊・飲食業は9月のDIの数値自体はまだマイナス34です。熊本県の観光業界には、依然として景気が悪いと思っている人のほうが圧倒的に多いわけです。

ちなみに大分県の宿泊・飲食業は、6月のマイナス50から72ポイント改善して、9月はプラス22と、すでに目立ったプラスに転じています。熊本県が大分県より回復の度合いが遅れているのは、熊本が大分より被害が大きく、余震も多かったという差だけでなく、鉄道や道路などの交通事情、インフラ復旧の遅れが熊本の観光業回復の足を引っ張っているためと考えられます。

00000001.jpg

■阿蘇復活の3つのポイント

私は、熊本県の観光業の回復にとって、多くの観光資源を有する阿蘇地方の早期回復がカギを握ると思います。今後のポイントは、3つあります。

まず大切なのは、正確な情報発信です。とりわけ、「今の熊本は安全・安心」だということをきちんとPRすべきです。ただ、それだけでなく、道路事情や渋滞に関する正確な情報発信も必要です。東京の人と話をすると、「阿蘇はまだ車では行けない」と思っている人もいます。以前より渋滞気味ではありますが、県外の方にはやや誇張されて伝わっている感じも気がかりです。いずれにしても、現状を極力正確に伝えていくことが大事で、この点は阿蘇中岳の爆発的噴火もありましたので、なおさら重要なポイントとなります。

2つ目は鉄道・道路などのインフラの早期復旧です。蒲島知事は冬場もミルクロードの通行止めが発生しないように24時間管理すると表明しましたが、そのうえで阿蘇地域の観光回復にとっては、国道57号線やJR豊肥線の1日も早い完全復旧が必要だと思います。震災後、熊本県全体で多くの復旧工事が進められているため、人手不足が一段と強まっています。優先順位をつけて、経済効果が高いところから手を付けていく必要があります。そうした観点からみると、阿蘇地域は優先順位が高い部類に入ると思います。

3つ目は、ふっこう割のようなテコ入れ策の継続です。今の予定では、ふっこう割は年内いっぱいで終了しますが、冬場の阿蘇はそもそも観光客が減る厳しい季節です。少なくとも、春まではふっこう割のようなテコ入れ策で首都圏や阪神圏からの誘客につなげていく必要があります。阿蘇の良さを実感してもらえれば、必ずリピーターが増え、そのことが地域経済の復旧・復興につながっていくと思います。

161009asokakou.jpg

(2016年10月5日に放送した内容を再構成しました)

第5回 熊本地震後の景気展望

4月14日と16日に2度にわたって熊本県を襲った最大震度7の地震は、県内各地に大きな傷跡を残しました。工場や店舗が被災したことで休業を余儀なくされ、観光地も大きな被害を受けました。熊本経済は地震による落ち込みから立ち直れるのか、回復を実感できるとすればいつ頃なのか、竹内支店長に聞きました。

■主要3産業の業績は急降下

熊本地震で熊本経済は大きなダメージを受けました。地震から3か月たった今でも、景気の状況は厳しいと言わざるを得ないと思います。そのことは、日銀の熊本短観(短期経済観測調査)のうち、景気の現状を示す業況判断DI*の推移に表れています。
*業況判断DIとは 企業に「業績はどうですか」と聞いて、「良い」と答えた会社の割合から「悪い」と答えた会社の割合を引いた数字のこと。例えば50社を調査して、15社が「良い」、20社が「悪い」、15社が「どちらでもない」と答えた場合、「良い」と答えた会社の割合(30%)から「悪い」と答えた会社の割合(40%)を引いたDIは30-40=マイナス10となる。景気の状況を示す指標として最もよく使われる。DIはDiffusion Index(拡大指標)の略で、一般にプラスなら景気は拡大、マイナスなら後退を意味する。
160728keizaijuku1.jpgのサムネイル画像

業況判断DIはマイナスになるほど、その業種が置かれた状況が厳しいことを意味しますが、熊本経済をけん引する製造業、小売業、観光業(観光に関連する宿泊・飲食業)は、地震後に調査した6月短観のDIが地震前の3月より、いずれも大幅に悪化しています。

製造業は工場の操業停止が響いて地震前のプラス2からマイナス18に、小売業も大型店などで休業を余儀なくされた店舗が少なからずあり、プラス20からゼロに落ち込みました。観光業は、ここでは宿泊業と飲食業から構成されており、宿泊業は震災後にキャンセルが相次ぎ、飲食業は店舗休業や自粛などから売り上げが落ち込んだため、全体では震災前の0からマイナス80へと急激に悪化し、大変厳しい状況になっています。6月の熊本短観全体ではマイナス16となり、3月のプラス7から23ポイントも悪化しました。1回の調査での悪化幅としては、2008年9月のリーマン・ショック時をも上回り、1980年の第二次オイルショック時以来のことになります。

160728keizaijuku2.jpg

小売業で県内の百貨店とスーパーの売上高の合計額をみると、4月は前年より大幅に落ち込み、5月も前年の売上高に届きませんでした。6月は前年比でプラスに戻ってきましたが、依然として厳しい状況なことは間違いありません。

■秋以降から徐々に回復

熊本経済はもうしばらく厳しい状況が続くでしょう。しかし、復興需要が出てくるにつれて、景気は回復に向かうと想定されています。

復興需要の端的な例として、家電があります。地震で倒れたりして壊れてしまったテレビや冷蔵庫、電子レンジなどの買い替えで、家電量販店の売上高は、すでに5月に前年比46・7%増と急激に伸びています。

160728keizaijuku3.jpg

ソファやタンスなどの家具についても、家電と同様の買い替え需要が盛り上がっています。さらに、これからは住宅を補修したり、建て替える動きも出てきます。橋や道路を復旧する公共工事も本格化してきます。

地震の被害が大きかった分、こうした動きを全部合わせた需要はかなり大きくなるはずで、こうした復興需要によって、県内の景気は回復に向かうでしょう。工場や大型店の復旧も進んでおり、早ければ秋ごろから景気回復が徐々に実感できるようになるのではないかと思います。

■観光業回復の3つのポイント

厳しい状況にある観光業も、「ふっこう割」という観光振興策が効果を発揮し、おそらく夏休み期間中の観光客は戻ってくるでしょう。ただし、「ふっこう割」が一巡した後の本格回復に向けては、3つのポイントがあると考えています。

第1に、熊本の観光の2枚看板である熊本城と阿蘇地区の再興を急ぐことです。熊本城は立入禁止区域を縮めるなどの復旧工事を進め、阿蘇は道路や鉄道といった交通インフラの復旧が急務といえるでしょう。

第2に、風評被害を防ぐ正しい情報の発信です。あまり被害がなかった人吉、天草などでも観光客が減っています。安全、安心だという情報を正確に発信していく必要があります。

第3に、熊本の多彩な魅力のPRです。これは私も熊本に来て感じていることですが、当地には熊本城と阿蘇だけではなく、天草、人吉、そして山鹿、八代にも大変魅力的な観光資源があります。これをどんどんPRしていって、熊本城と阿蘇が厳しい間に熊本全体の観光産業を底上げしていくことが重要になると思っています。

(2016年7月28日に放送した内容を再構成しました)

160728sitencyou.jpg

エントリー

バックナンバー

2017年6月

  •  

  •  

  •  

  •  

  • 1

  • 2

  • 3

  • 4

  • 5

  • 6

  • 7

  • 8

  • 9

  • 10

  • 11

  • 12

  • 13

  • 14

  • 15

  • 16

  • 17

  • 18

  • 19

  • 20

  • 21

  • 22

  • 23

  • 24

  • 25

  • 26

  • 27

  • 28

  • 29

  • 30

  •